オカルトとは何か?ラテン語の語源とスコラ哲学との関係、啓蒙の光をもたらす秘密の知識としてのオカルトの肯定的な意味

オカルト(occultとは、人間の理性によっては解き明かすことができない超自然的な現象神秘的現象のことを意味する言葉であり、

主に、魔術錬金術、ある種の神秘主義秘密結社における秘教的な思想などのことを指してこうした言葉が用いられるほか、

現代においては、実証的で合理的な科学的な知識の領域には含まれない迷信や疑似科学のことを指すようなどちらかというと悪いイメージで用いられることの方が多い言葉であるとも考えられることになるのですが、

こうしたオカルトと呼ばれる言葉の意味について、そのラテン語における語源となる意味や中世のスコラ哲学の時代におけるそうした言葉の用いられ方にまでさかのぼって考えていくと、

そこには、現代におけるオカルトの意味とは少し意味合いの異なったより肯定的な意味としてのオカルトの存在を見いだしていくことができるとも考えられることになります。

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ラテン語における「人々の目から隠された秘密の知識」としてのオカルトの意味

もともと、英語におけるoccult(オカルト)という言葉は、

ラテン語において「隠す」「土をかけて埋める」「知られないようにする」といった意味を表す動詞であるocculere(オクレーレ)

あるいは、その形容詞形にあたる「隠された」「秘密の」といった意味を表すoccultus(オクルトゥス)という単語に由来する言葉であり、

こうしたオカルトという言葉は、そうした言葉自体の本来の意味としては、「隠されたもの」「秘密にされたもの」

より具体的に言えば、

「人々の目に触れることがないように隠された秘密の知識」のことを意味する言葉であったと考えられることになります。

そして、その後、

こうしたオカルトという言葉は、目に見えない事柄に関する知識や主張、あるいは、人間の理性においては理解することができない知識といった意味として捉えられていくことによって、

それは、正統な教義常識的な考えのあり方からは外れた異端の思想や、誤った考えのあり方などを意味する負のイメージの強い言葉としても用いられていくことになっていったと考えられることになるのです。

中世ヨーロッパにおけるスコラ哲学と異端思想としてのオカルトとの関係

そして、

こうしたオカルトという言葉が広く用いられるようになっていった中世からルネサンスの時代のヨーロッパにおいては、

そうした異端思想としてのオカルトの対極にあたる常識的で正統な正しい思想のあり方とは、一言でいうと、

中世におけるヨーロッパの教会や修道院に付属する大学において積み重ねられていった神学研究の集大成であるスコラ哲学に基づくキリスト教的な教義と世界観こそがそうしたオカルトではない正しい思想のあり方であったと考えられることになるのですが、

中世の時代が終わり、学問や芸術の分野における革新運動が進められていくルネサンスの時代が訪れると、それまでの中世のヨーロッパにおいて正統とされてきたスコラ哲学に基づく学問や思想のあり方は、新たな近代的で科学的な学問の興隆によって次第にその存続自体が脅かされていくようになっていきます。

そして、こうした大きな時代の流れの変化のなか、例えば、

現代においては古典力学や近代物理学の祖などとしても称されているアイザック・ニュートン が、こうした17世紀のヨーロッパにおいて、新たに万有引力の法則を提唱したとき、

人間の目には見えない引力や重力の存在を主張するニュートンの新しい科学的な考え方は、

はじめのうちは、当時のヨーロッパにおける正統派の学問であったスコラ哲学の学者たちの側から強く批判されていくことになり、

そうした激しい非難のなかで、ニュートンの万有引力の理論は、正統派の思想ではない「オカルト的な性質」についての知識として排斥されていくことになります。

そして、そのほかにも、

こうしたスコラ哲学の立場からは、二つの磁石の間で働く磁力の存在などについても、それは錬金術師や魔術師たちが人々の心を惑わそうとするために用いる怪しげな奇術や幻術の一種にすぎないオカルト的な性質として、やはり、その存在自体が否定されていくことになっていったのです。

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誤った常識を打ち破り新たな啓蒙の光をもたらす秘密の知識としてのオカルトの存在

以上のように、

こうしたオカルトという言葉は、もともとのラテン語の語源に基づく意味においては、「人々の目に触れることがないように隠された秘密の知識」のことを意味する言葉であったと考えられ、

それが、時代を経ていくにつれて、人間の理性や常識的な考えのあり方に反する異端の思想や誤った考えのあり方などを意味する負のイメージの強い言葉として用いられるようになっていったと考えられることになります。

しかし、その一方で、

そうした非合理的な異端の思想であるオカルト的な考えとして排斥される側の思想や考え方の位置づけ自体は、時代が進んでいくにつれて徐々に変化し、反転していくことになっていったとも考えられ、

中世やルネサンスの時代においては、現在では主流的な思想であるニュートンに代表されるような科学的な思想の方が、当時のヨーロッパにおける支配的な思想であったスコラ哲学の考え方に反するオカルト的な思想として排斥される傾向にあったと考えることになります。

つまり、そういった意味では、こうしたオカルトという言葉は、

一般的な常識や正統派の考え方に反する非合理で誤った思想や考え方のことを意味するという否定的な意味としてだけではなく、

その反対に、この言葉は、

それまで人々が抱いてきた誤った常識を打ち破り、そこに新たな啓蒙の光をもたらす、それまで隠されてきた秘密の知識のことを解き明かしていくという肯定的な意味において捉えることもできると考えられることになるのです。

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次回記事:中世ヨーロッパのオカルト思想を代表する四人の人物の名前とは?①フィチーノの哲学とピコ・デラ・ミランドラの人文主義

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