アスペルギルス症とムーコル症(接合菌症)の原因となるカビの種類と疾患の具体的な特徴とは?カビが原因の真菌症の種類②
前回書いたように、カビによって引き起こされる真菌症のなかでも、最も有名なものとしては、白癬菌によって引き起こされる水虫などの真菌症の種類が挙げられることになりますが、
こうしたカビによって引き起こされる真菌症のなかで、水虫に次いで比較的有名なものとしては、アスペルギルス症や、ムーコル症(接合菌症)といった真菌症の種類が挙げられることになります。
それでは、アスペルギルス症やムーコル症の原因となるカビには具体的にどのような特徴があり、それぞれの病原体となる真菌からはどのような症状を引き起こす疾患が引き起こされることになるのでしょうか?
アスペルギルス症の原因となるカビの種類と疾患の具体的な特徴
まず、
冒頭で挙げた二つの真菌症の疾患のうちの前者にあたるアスペルギルス症は、
アスペルギルス(Aspergillus)と呼ばれる子嚢菌類に分類されるカビの一種によって引き起こされる真菌症であり、
アスペルギルスは、日本では一般的には、酒や醤油の醸造などに利用される麹(こうじ)の素となるコウジカビ(麹黴)という名で有名なカビの種類に分類されることになります。
アスペルギルス、あるいは、コウジカビは、こうした酒や醤油、味噌、漬物、鰹節といった発酵食品の製造に利用されているだけではなく、もともと、落ち葉や土の中、空気中といった自然界の様々な場所に広く分布している常在性の真菌であり、
人間の免疫力が十分に機能している状態では、通常の場合、人体に悪影響を及ぼすことはないのですが、
白血病や末期がんの患者、あるいは、抗がん剤や免疫抑制剤の使用や、ステロイド剤や抗生物質の長期使用などによって免疫力が著しく低下している場合などには、
人間の肺や気管支、副鼻腔といった呼吸器系統の内部などへ入り込んだ胞子が人体の内部で増殖していってしまうことがあると考えられることになります。
そして、
そうしたケースでは、こうしたアスペルギルスと呼ばれるカビの一種が、アスペルギルス症(カビ性肺炎)と呼ばれる肺炎や副鼻腔炎といった一連の呼吸器系の症状を中心とする真菌症の発症を引き起こしてしまうことになり、
さらには、血管を介して病原体となった真菌の感染が全身へと広がってしまうことによって、敗血症などのより重篤な症状を引き起こしてしまうケースもあると考えられることになるのです。
ムーコル症(接合菌症)の原因となるカビの種類と疾患の具体的な特徴
それに対して、
冒頭で挙げたもう一つの真菌症の疾患であるムーコル症(接合菌症)の方は、
ムーコル(Mucor)と呼ばれる接合菌類に分類されるカビの一種によって引き起こされる真菌症であり、
ムーコルは、日本では一般的には、ケカビ(毛黴)という名で知られているカビの種類に分類されることになります。
前述したコウジカビと同様に、ケカビも、湿った土壌や、食品の中などに広く分布する常在性の真菌の一種であり、
通常の場合、人体に悪影響を及ぼすことはほとんどないのですが、免疫力が低下しているケースでは人体の内部で増殖を始めてしまうことがあり、
そうした場合には、アスペルギルス症と同様に呼吸器の内部で感染を広げて肺炎や副鼻腔炎などを引き起こすケースがあるほか、副鼻腔内から眼窩や口蓋を経て脳へと感染を広げてしまうことによって脳炎や髄膜炎などを併発してしまうケースなど、
感染が広がっていく人体の部位の違いなどに応じて、多様な病態を引き起こす原因となってしまうと考えられることになるのです。
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以上のように、
白癬菌によって引き起こされる水虫に次ぐ代表的な真菌症の種類としては、アスペルギルス症やムーコル症(接合菌症)といった真菌症の名前が挙げられることになるのですが、
こうした二つの疾患の原因となるカビの種類は、コウジカビ(アスペルギルス)とケカビ(ムーコル)というどちらも土壌中や空気中、食品の中といった自然界の様々な場所に広く分布する極めて一般的な常在菌の一種であると考えられることになります。
そして、
そうした自然界に常在し、発酵食品の製造といった人間の生活にも広く利用されているコウジカビやケカビといった一般的な菌類であっても、
ひとたび人間の免疫力が著しく低下し、人体の内部で増殖することが可能となってしまうと、肺炎や副鼻腔炎、さらには、脳炎や敗血症といった重篤な症状を引き起こしてしまう非常に危険な病原体へと一瞬にして変貌してしまうことになると考えられることになるのです。
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次回記事:ヒストプラスマ症とスポロトリコーシスの原因となるカビの種類と疾患の具体的な特徴とは?カビが原因の真菌症の種類③
前回記事:カビによって引き起こされる真菌症の代表的な種類とは?①白癬菌が原因となる真菌症の種類とそれぞれの疾患の具体的な特徴
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