プネウマ(息)と東洋思想の気の概念

前回までに書いたように、

アナクシメネス生命論的宇宙観
に基づくと、

人間を含むすべての生物、そして、
宇宙の全体が、

気息pneumaプネウマ)である

空気aerアーエールの循環

によって成り立っていることになりますが、

こうした、

人間や生物のプネウマ)、そして、それがもたらす
生きた空気の循環を

生命の原理として捉える考え方は、

アナクシメネスなどの、
古代ギリシア自然哲学の思考だけではなく、

世の東西を越えて、世界全体に広く見られる
根本的な世界理解の原理でもあります。

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旧約聖書の創世記におけるプネウマ(息)

例えば、

旧約聖書創世記では、
人間の誕生は以下のように描かれています。

主なる神は、

アダマの塵で、
アダムを形づくり

その鼻に
命の息吹き入れられた

人はこうして生きる者となった。

(旧約聖書、創世記2章)

つまり、

人間の肉体は、それだけでは、
土の塊で形づくらた泥人形のような
ただの物質にすぎないが、

そこに、

命の息である
プネウマが吹きこまれることによって、はじめて、

生命として動き出し、
生きることができるようになるということです。

そして、

神の息によって、
生命として誕生した後には、

自分で息を吐き、
再び大気から息を吸い込むという

自らの呼吸による
プネウマ(息)の循環によって、

その命を維持していくことになります。

このように、

旧約聖書の世界観においても、

プネウマ)は、

命を生み出し、それを維持する、
生命の原理として捉えられていると考えられます。

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東洋思想の気の概念とプネウマ

そして、

プネウマ(息)

人間を含む生物、さらには、宇宙全体の
生命力の源となっている、

という考え方は、

東洋思想や東洋医学における

気の概念

にも通じる思考であると考えられます。

気という概念については、

道教儒教東洋医学、さらには、
太極拳などの武術気功など、

様々な分野で様々な解釈がなされていて、
はっきりとした統一見解のようなものもないので、

気とは、何であるか?

ということについて
正確に定義することは難しいのですが、

それらに共通する基本的な概念をまとめると、

気とは、

体内の経絡(けいらく)と呼ばれる循環経路を
有形の血と共に循環する

言わば、

無形の生命エネルギーである、

とは言えるように思います。

つまり、

人間が、を吸っては、吐くという
呼吸を行う時、

肺を介して、酸素と二酸化炭素の出し入れが行われるという
物質としての空気の交換が行われているだけではなく、

そこでは、

物質としての空気が入ってくるのと同時に、
無形の生命エネルギーである

気のエネルギー
体内に取り入れられていて、

人間を含む生物の体内では、

言わば、

生命体を構成する
一つ一つの細胞が自ら呼吸するかのように、

全身の細胞において、
気のエネルギーの循環が行われている、

ということです。

そして、

不摂生な生活や、肉体の酷使、
精神的ストレスなどによって、

呼吸に象徴される
体内の気の循環が滞っていくと、

体調などの身体の状態の悪化を招き、
最終的には、病気へとつながっていくことになってしまう、

ということになるのです。

以上のような、

呼吸による息の循環
すなわち、プネウマの循環に代表される、

無形のエネルギーとしての
気のエネルギー循環

という考え方は、

人間や生物の体内だけではなく、

さらに、

身体の外の空間、
大地、そして、宇宙全体へと広がっていきます。

例えば、

中国の
風水(ふうすい)においては、

都市住居お墓などを建てる位置や、
その内部構造の配置などを決めるときに、

地勢(土地の高低や、付近の山や川、海などの配置)と方位、さらに
地脈(地層の筋や地下水の流れ)などを見て判断しますが、

この時に、

これらの地勢や地脈といった
有形の地理的条件と共に、

無形のエネルギーである龍脈といった
大地を流れる気の流れも読み解くことによって、

どのような位置が適切であるかを判断することになります。

このように、

無形のエネルギーである
気の循環は、

人間や生物の体内を巡る
生命の原理であるだけではなく、

大地を貫き、宇宙全体に流れる
無形のエネルギーの循環であって、

宇宙全体が、そうした
無形の生命エネルギーである
、すなわち、プネウマ(息)によって満たされている

と考えられるのです。

・・・

以上のように、

プネウマの循環が、
生物と宇宙全体を貫く生命原理である、という考え方は、

古代ギリシア
アナクシメネスの自然哲学だけではなく、

旧約聖書の世界観、そして、
東洋思想の気の概念にも通底する、根本的な世界理解の原理であり、

このような世界観のもとに立つと、

生物の体内も、世界を包む大気も、

、すなわち、プネウマ)の
生命エネルギーによって満たされていて、

プネウマ(息)という生命エネルギーの循環によって、
宇宙全体が成り立っていると考えられるのです。

・・・

アナクシメネスの哲学の概要

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