万物の始原における水の循環と生命の循環

タレスは、

自然現象の観察や生物観察

さらには、

古代バビロニア神話や、

旧約聖書の創世記において描かれている
世界が誕生する姿などからも着想を得ることによって、

万物の始原は水である。

という思想にたどり着いたと考えられますが、

この思想について、
正確には タレス自身は、どのように語っていて、

それは、具体的には、
どのような世界観だったと考えられるのでしょうか?

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「水だ。」

一般に、

万物の始原は水である。

という形で提示されるタレスの哲学について、

彼自身の言葉としては、
どのような形で語られているのか?

ということについては、

以前にも引用した、
以下のアリストテレスの記述の中で語られています。

最初に哲学に携わった人びとのうち、
大部分の者は、

質料(素材)としての原理だけを、
万物の始原と考えた。…

哲学の始祖であるタレスは、
水がそれであると言っている。

(アリストテレス『形而上学』第一巻、第三章)

この文章の中で、

質料としての原理だけを、万物の始原と考えた

という部分と、

がそれであると言っている

という部分は、

アリストテレスによって補足された言葉と考えられので、

タレス自身の発言として、信頼できる資料において
記録されているのは、

水だ。

というたった一言だけ、

ということになります。

どうして、このように、タレスの哲学についての
文献資料が決定的に乏しいのかというと、

それは、

単にタレスの著作が後世まで残らなかった、
ということではなく、

そもそも、

彼自身が、まとまった形では、
一篇の著作も書き残さなかった

ということによります。

そういう点では、

哲学の創始者であるタレスは、

ソクラテスプラトンアリストテレスと続く、
古代ギリシア最高の哲学者最初の一人でありながら、

書物という固定化された死んだ知識によっては、
哲学の真理に至ることはできず、

問答法などによる議論を通じた生きた対話によってのみ、
哲学的真理の探求が可能となると考え、

自分自身は何一つとして書き残さなかった
ソクラテスに似ているところがあるように思います。

それはともかく、

このような事情から、
タレスの思想について、客観的に分かることは、

水だ。

という言葉だけなので、

この言葉によって、タレスが、
具体的にどのような世界観をイメージしていたのか?

ということについては、
正確には分からないわけですが、

さすがに、

「水だ。」だけでは、

味もそっけもなければ、
具体的に何を言いたいのかもわからないので、

少し、タレスの気持ちになって、

「水だ。」の世界観が具体的にどのようなものであるのか、

この言葉から、
想像を膨らませてみることにしましょう。

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水の循環と生命の循環

古代バビロニア神話にもあるように、

水と海は生命と、すべての存在のふるさとで、

海や川の中で生活する生き物たちは、
の中で生まれ、再びへと還っていきます。

さらに、

は、として大地に降り注いで、
大地に作物の恵みをもたらし、

地上の植物動物とを育て養っていきます。

そして、

として大地に降り注いだは、
やがてへと流れ込み、

支流同士が、流れていくうちに互いに合わさって、
大河をつくり、

さらに、へと流れ込みます。

そして、へと流れ込んで一体となった水は、
その一部が静かに蒸発して、となり、

再びとして大地に降り注ぐ
時を待つ、

というように、

この世界のすべての存在は、
から、、そして、から、再びへとつながる、

恒常的な水の循環のなかに組み込まれています。

つまり、

このような水の循環の中で、

世界のすべての存在は、水から生まれ、再び水へと還っていく

ということです。

そして、この壮大な水の循環の中で、

先ほど述べたように、

海や川の生き物たちは、
水の中で生まれ、水の中へと還っていきますし、

陸の生き物たちも、

水を与えられることで活力を与えられて、
生命が維持され、

反対に

水気を失うことによって、
老いを迎え、

完全に水を失うと、
干からびて死を迎えて、

大地へと還っていきます。

そして、

その大地は、

恵みの雨によって、新たな水を与えられることによって、
活力を与えられ、

大地の中で朽ちていく、古い命の屍の中から、
新しい生命を再び生み出していくのです。

このように、

大地、そしての間の
水の循環は、

そのまま、

海と陸に生きる、
あらゆる生命の循環でもあるのです。

・・・

タレス

水だ。

という、
あまりにシンプルで端的な一言の中には、

以上のような、
地球規模の壮大なスケールでの

水と生命の循環

の図式のすべてが含まれている、
と読み解くこともできるように思います。

・・・

タレスの哲学の概要

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