テーバイの台頭とレウクトラの戦いの大敗によるスパルタの覇権の終焉:第二回アッティカ海上同盟とボイオティアの統一

前回書いたように、ペロポネソス戦争の終結後に戦勝国であるスパルタがギリシア世界の覇権を一手に握ることになると、

それに対してアテナイアルゴスそしてテーバイコリントといったギリシアの諸都市が同盟を結んで対抗していくことによってコリント戦争が引き起こされることになります。

そして、こうしたコリント戦争における戦況は、ペルシアの支援を受けて艦隊の再建を果たしたアテナイの海軍スパルタの海軍を破ることによって、一時はスパルタの不利へと傾いていくことになるのですが、

その後、スパルタの使節であったアンタルキダスの画策とそれを採用したペルシアの大王の意向によって締結された大王の和約によってコリント戦争が終結することになると、ギリシア世界では再びスパルタの勢力が強まっていくことになります。

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大王の和約によるスパルタの覇権の維持と同盟諸都市の分離

2020.6.21①、レウクトラの戦いとテーバイとスパルタのギリシア世界の覇権をめぐる争い

紀元前386年に結ばれることになった大王の和約あるいはアンタルキダスの和約と呼ばれる条約によってコリント戦争が終結することになると、

ペルシアの大王であるアルタクセルクセス2世と共にこの和約の締結を主導することになったスパルタは、和約において定められることになったギリシアにおける都市国家の独立と自治を守ることを名目としてアテナイテーバイといったスパルタに敵対する同盟諸都市の分離を図っていくことになります。

そして、こうしたペルシアとスパルタによって主導された同盟諸都市の離間政策により、ギリシア世界においては、しばらくのあいだスパルタの覇権が続いていくことになるのです。

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海軍大国としてのアテナイの復活とテーバイの台頭

しかしその一方で、こうした10年間におよぶコリント戦争の期間には、ペルシアからの支援や同盟諸都市との共闘を経ていくなかでスパルタ以外のギリシア諸都市も勢力を大きく増大させていくことになり、

ペロポネソス戦争での敗戦によって一時は壊滅的な状態にまで衰退していくことになったアテナイは、こうしたコリント戦争を経ていくなかで国力を大きく回復させていくことになります。

そしてその後、アテナイは、コリント戦争が終結してから8年後にあたる紀元前377年第二回アッティカ海上同盟と呼ばれる経済的および軍事的な同盟をエーゲ海周辺の有力諸都市と結んでいくことになるのですが、

この同盟関係においては、ギリシア諸都市の独立と自治が尊重されることによって、かつてのデロス同盟の時のようにアテナイへの権力の一局的な集中や同盟加盟都市からの貢納金の取り立てによる支配体制の強化が行われることはなかったものの、

アテナイは、こうした第二回アッティカ海上同盟と呼ばれる第一回の同盟にあたるデロス同盟に続く二回目の海上同盟を結ぶことによってギリシア世界における海軍大国としての復活を果たすことになります。

また、その一方で、アテナイが位置するアッティカ半島の北西に位置する都市国家であったテーバイでは、

貴族として生まれながらピュタゴラスの哲学にも精通した民主派の政治家にして将軍でもあったエパミノンダスペロピダスの主導によって、スパルタの影響下において政治を運営していた寡頭派が駆逐されたのち、

ギリシア中部にあたるボイオティア地方の統一を進めていくことによって、大きく勢力を拡大していくことになるのです。

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レウクトラの戦いの大敗によるスパルタの覇権の終焉

そして、こうしたテーバイによるボイオティアの諸都市の統一の動きを都市国家同士の独立と自治を尊重することが定められた大王の和約に反する違反行為とみなしたスパルタはテーバイの征討へと乗り出していくことになり、

紀元前379年、スパルタの王であったクレオンブロトス1世が率いるスパルタの軍勢がテーバイの遠征へと向けて出陣することになります。

そしてその後、こうしたスパルタとテーバイの両軍による抗争が数年にわたって続いていくことになるのですが、そうしたなか、ついに、

紀元前371年に起きたレウクトラの戦いにおいて、クレオンブロトス1世が率いるスパルタを盟主とするペロポネソス同盟軍と、テーバイを盟主とするボイオティア同盟軍がギリシアの覇権をめぐって激突することになります。

そして、レウクトラの戦いにおいては、テーバイの名将エパミノンダスが考案したとされている斜線陣と呼ばれる新たな戦術を用いて、

自軍の左側に主戦力を配置したうえで右側に位置する軍団ほど戦場への突撃を遅らせる一種の時間差攻撃による斜線状の陣形を構築することによって、

ギリシアにおける無敵の陸軍としての呼び声の高かったスパルタの重装歩兵の軍団をテーバイ軍が撃破することによってスパルタ軍の側が大敗を喫することになります。

そして、こうしたレウクトラの戦いにおけるスパルタの大敗によって、ギリシア世界におけるスパルタの覇権は終焉を迎えることになり、スパルタに代わって今度はテーバイがギリシア世界における新たな覇者としてしばらくのあいだ君臨していくことになるのです。

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