クレタ文明とミノア文明の違いとは?古代ギリシア神話におけるミノス王とクノッソス宮殿の伝説とエヴァンズによる文明の命名

古代ギリシアにおける最古の文明にあたるエーゲ文明を代表する三つの文明としては、トロイア文明ミノア文明ミケーネ文明の名が挙げられることになりますが、

このうち、二番目に挙げたエーゲ海の南部に位置するクレタ島を中心に栄えた地中海文明であるミノア文明については、クレタ文明という呼び名が用いられることも多くあると考えられることになります。

それでは、こうしたエーゲ文明を代表する地中海文明に対して、クレタ文明ミノア文明という二つの呼び名が用いられることになったのには、具体的にどのような理由があると考えられることになるのでしょうか?

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古代ギリシア神話におけるミノス王とクノッソス宮殿の伝説

そうすると、まず、

こうしたエーゲ文明を代表する地中海文明における二つの呼び名のうち、前者のクレタ文明という呼び名は、この文明の中心地となったクレタ島という地名に由来する呼び名であるのに対して、

後者のミノア文明という呼び名は、ギリシア神話において、クレタの都であったクノッソスを築き、この地を支配していたとされる伝説の王であるミノス王の名に由来する呼び名であると考えられることになります。

ギリシア神話の物語においてミノス王は、フェニキアの王女であったエウロパと、白い牡牛へと姿を変えたゼウスとの間に生まれた息子にあたり、

その後、ミノス王は、クレタの王位継承の証として海の神ポセイドンから生贄として捧げる聖なる牡牛を授けられることになるのですが、

ポセイドンから送られた美しい牡牛の姿を目にして、この牡牛を神への犠牲として捧げるのが惜しくなったミノス王は、ポセイドンとの約束を破って、牡牛を自分のもとにとどめたまま、代わりに別の牡牛をポセイドンへの生贄として捧げることにします。

そして、その後、

ミノス王に欺かれたことを知って激怒したポセイドンは、ミノス王のもとにあるこの美しい牡牛凶暴な獣へと変えたうえで、その姿にミノス王の妃であったパシパエが強い恋心を抱くように仕向けることにしたため、

クレタの王妃パシパエポセイドンの牡牛との間に、頭は牛の姿をしていて首から下は人間の姿をした牛頭人身の怪物であるミノタウロスが生まれることになります。

そして、ギリシア神話においては、

ミノス王はこうした神を欺くという自らの罪に対する罰として生まれることになったミノタウロスの怪物を閉じ込めていくために、名工ダイダロスに命じてラビュリントスとも呼ばれるクレタの迷宮を築かせたと語り伝えられていて、

古代ギリシア人たちは、この地に築かれていたクノッソス宮殿のことを、こうしたギリシア神話におけるクレタの伝説の王であるミノス王が築いたとされるクレタの迷宮の姿として語り伝えていくことになっていったと考えられることになるのです。

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クレタ文明とミノア文明という二つの呼び名が用いられる理由

そして、その後、

クレタの都にあたるクノッソスにかつて築かれていたクノッソス宮殿と呼ばれる王宮の遺跡は、1900イギリスの考古学者であったアーサー・エヴァンズによって発掘されることになり、

こうしたエヴァンズによるクノッソス宮殿の発掘によって、かつてこの地に古代ギリシアエーゲ海文明の一角を占める高度な地中海文明が栄えていたことが明らかにされることになります。

そして、

こうしたエーゲ海における古代文明の発見者となったエヴァンズは、自らが発掘したこの宮殿のことをギリシア神話においてこの迷宮を築かせた人物として伝えられているミノス王の名にちなんで、

The Palace of Minos(ザ・パレス・オブ・ミノス)すなわち「ミノスの宮殿」と呼び、

さらに、自らが発見したクレタ島を中心に栄えていた古代文明についても、こうしたギリシア神話におけるクレタの伝説の王であるミノス王の名にちなんで、

Minoan civilization(ミノアン・シビリゼーション)すなわち「ミノア文明」と名づけたため、

こうしたこの文明の最初の発見者にあたるエヴァンズによる命名のあり方にしたがって、ミノア文明という名称がクレタ島を中心に栄えていたエーゲ海の古代文明における正式な呼び名として用いられていくことになっていったと考えられることになるのです。

しかし、その一方で、

こうしたミノア文明以外の残りの二つのエーゲ文明の呼び名については、どちらもトロイアミケーネというそれぞれの文明の中心地となった地名や都市名にあたる呼び名がつけられているように、

考古学や歴史学の分野においては、文明の名称としては、その文明が栄えることになった地名や地域名に由来する呼び名が用いられる方が一般的であるとも考えられるため、

文明の発見者にあたるエヴァンズによって命名された「ミノア文明」という呼び名のほかに、この文明の中心地にあたるクレタ島という地名に由来する「クレタ文明」という呼び名も広く用いられていくことになっていったと考えられることになるのです。

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次回記事:クレタ文明とミケーネ文明とトロイア文明の違いとは?エーゲ海を代表する三つの文明の位置関係と具体的な特徴の違い

前回記事:トロイアとイリアスの違いとは?古代ギリシア神話におけるトロース王とイーロス王の父と子の物語

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