感染の成立にはどれくらいのウイルス粒子の数が必要なのか?インフルエンザウイルスやノロウイルスの感染に必要なウイルス量
ウイルスの感染と発病は、飛沫感染や経口感染といった様々な感染ルートを通って人間の体内に侵入したウイルスが宿主となる細胞の内部で増殖していくことによって成立することになりますが、
こうした病原体としてのウイルスの感染は、人間の体内にウイルスの粒子が一個でも入ってしまったらすぐに感染が成立するというものでもなく、
病原体となるウイルスの種類によって、人間に感染を引き起こすために必要なウイルス粒子の数やウイルス量には大きな違いがあると考えられることになります。
ウイルスが体内に侵入しても感染が成立しないケースがあるのはなぜなのか?
それでは、そもそも、
ウイルスの粒子が体内へと侵入しても、感染が成立しないケースでは、ウイルスが侵入した人間の体内において具体的にどのような出来事が起きていると考えられることになるのでしょうか?
例えば、
人間の喉や鼻の粘膜に感染する呼吸器系のウイルスであるインフルエンザウイルスの場合、
人間の体内に侵入したインフルエンザウイルスのウイルス粒子は、だいたい8時間ごとに100倍ほどの数に増えていくことになると考えられることになります。
そして、
そのようにしてウイルスが人間の体内で増殖を進めていく間に、体内を巡回しているマクロファージなどの免疫細胞にウイルスの宿主となっている感染細胞をすべて捕食されてしまうことになれば、
たとえ微量のウイルスが体内に侵入してきたとしても人間という個体レベルでの感染が成立しないうちに未然に病原体が排除されてしまうことになると考えられることになるのです。
インフルエンザウイルスとノロウイルスにおける感染に必要なウイルスの数の違い
それでは、
具体的にどのようなケースにおいてウイルスの感染が成立し、逆にどのようなケースでは感染が成立しないことになるのか?というと、
それは、一言でいうと、
体内に侵入してきたウイルスの初期兵力とウイルスの増殖力とのかけ算に対する人間の免疫力とのバランスで決まることになると考えられることになります。
例えば、
通常の免疫力がある健康な状態の人間の場合、ウイルスの初期兵力にあたる体内に侵入したウイルス量が一定の基準よりも少なかった場合には、
人間の体内で十分な数にまで増殖していく前に、マクロファージなどの免疫細胞によってすべてのウイルスが食い尽くされてしまうことになって感染は成立しないと考えられることになりますし、
その反対に、
体内に侵入したウイルス量が一定の基準よりも多かった場合には、マクロファージなどの免疫細胞による捕食能力を上回るスピードでウイルスが増殖していってしまうことによって、
抗原抗体反応などを用いたより広範囲で全身的な免疫システムを稼働してウイルスとの全面戦争に挑んでいくことが必要となるため、
人間の体内でウイルスが継続的に増殖していく状態にあたる個体レベルでの感染が成立することになり、体内のウイルス量がさらに増加していくにしたがって、発熱や炎症といった様々な免疫反応が活性化していくことによって発病へと至ることになると考えられることになるのです。
そして、
こうした感染が成立するために必要なウイルスの量は、ウイルスの種類に応じて大きな違いがあると考えられ、
例えば、
インフルエンザウイルスなどの呼吸器系のウイルスの場合には、だいたい最低でも100個~1000個くらいのウイルス粒子が鼻腔内などに侵入することが感染の成立のためには必要であると考えられているのに対して、
ノロウイルスなどのより増殖力の強いウイルスの場合には、その10分の1ほどのわずか10個~100個くらいのウイルス粒子が口などを通じて体内へと侵入してしまっただけで感染が成立してしまうことになると考えられることになるのです。
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次回記事:ウイルスの語源とは?ラテン語において「毒液」のことを意味する言葉と「感染性の体液」としてのウイルスの感染経路
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