マスクの着用と手洗いを両方同時に行うことがインフルエンザやコロナウイルスの予防対策に重要である理由

日常生活において一般人がマスクを着用することによるインフルエンザウイルスコロナウイルスなどの呼吸系のウイルス感染症に対する予防効果については、

一定の効果が望めるとする説と、効果はほとんどないとする説の両方の説が主張されていて、専門家の間でも意見が大きく分かれるところではあるのですが、

こうした日常的なマスクの着用は、マスクの単独使用ではなく、マスクの着用と手指衛生両方同時に行うことによってはじめて有効な効果を発揮することを示す一つのエビデンスとなる実証実験の例が挙げられることになります。

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フランスと日本での実証実験に基づくマスクの単独使用による感染症の予防効果の否定

「日常的なマスク着用による感染予防効果について」と題されたサーベイ論文においては、

アメリカフランス日本香港などで行われた数多くの実証実験を通じて、

日常的なマスク着用インフルエンザなどの呼吸器系ウイルス感染症予防効果に与える影響について様々な観点からの考察がなされています。

出典:Y’s Square:感染対策学術情報:感染対策情報レター2018年:「日常的なマスク着用による感染予防効果について」:
https://www.yoshida-pharm.com/2018/letter128/

そして、このサーベイ論文においては、

前半部分に書かれているフランスでの家庭内感染を対象とした実証実験と、日本で行われた医療従事者を対象として行われた実証実験のどちらのケースにおいても、

「マスク着用による感染予防効果は認められなかった」あるいは「統計的な有意差は見られなかった」といった否定的な結果が並んでいて、

論文の結論部分においても、「マスク単独での明確なエビデンスはないのが現状」という記述が示されています。

こうした記述からは、一見すると、

日常的なマスクの着用はおろか、医療従事者におけるマスクの着用ですら感染症に対する予防効果を疑問視するような見解が示されているとも解釈することができると考えられることになるのですが、

その一方で、この論文では、

そうした日常的な場面を含むマスクの着用ある特定の条件下においては感染症予防に十分な効果を示すことを示唆する実証実験の例についても取り上げられているのです。

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マスクの着用と手洗いを両方同時に行うことがインフルエンザやコロナウイルスの予防対策に重要である理由

アメリカの学生香港の家庭を対象とした二つの実証実験においては、

単独でマスクの着用を行ったグループだけではなく、マスクの着用と同時手指衛生すなわち十分な手洗いを励行したグループについても比較実証実験が行われていて、

こうした二つの実証実験のどちらのケースにおいても、

前述したフランスや日本で行われた実証実験の場合と同じように、マスクの着用のみを単独で行ったグループについては感染症の予防への有意な成果は見られなかったものの、

マスクの着用と手指衛生を同時に行ったグループでは、インフルエンザの発症率有意な低下が確認されていて、

どちらの実証実験においても、インフルエンザの予防対策には、マスク着用と手指衛生両方の実施が効果的であるという結論が示されています。

もっとも、これだけでは、

マスクの着用とは関係なく、マスクの着用とセットで行われた手指衛生すなわち手洗いの方だけが感染症の予防に有効だったのではないか?という疑問も示すことができると考えられるのですが、

上記の二つの実証実験のうちの香港のケースでは、マスクの着用をせず手指衛生だけを行ったグループとの比較もなされていて、

そうしたマスクの着用なしに手指衛生だけを行ったグループでは、インフルエンザの家庭内感染を多少は減らす傾向は見られたものの統計的に有意な差を示すまでには至らず、

家庭内におけるインフルエンザの感染確率有意な低下が確認されたのは最初の患者の発症から36時間以内サージカルマスク着用と手指衛生両方を同時に行ったグループだけであったという結論が示されているのです。

つまり、特に、

家庭内職場他者との会話や交流などといった人間同士の密接な接触がある日常生活の場面においては、

マスクの着用手指衛生のどちらの要素が欠けても感染症予防への効果は限定的なものとなってしまうと考えられるということであり、

インフルエンザウイルスコロナウイルスなどによる呼吸器系の感染症への予防対策万全なものにするためには、やはり、

正しい使用法によるマスクの着用十分な手洗いの両方を着実に行っていくことが重要となると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:N95マスクとサージカルマスクのウイルス感染症の予防効果に差はあるのか?カナダで行われた実証実験に基づく結論

前回記事:不織布マスクのフィルターが網目よりも小さいウイルスを捕獲できる仕組みとは?不規則な繊維の多層構造と静電気力による説明

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