アウトブレイクとパンデミックの違いとは?英語とギリシア語の語源に基づく具体的な意味の違いと感染症の流行の展開の流れ
ウイルスや細菌などの病原体によって引き起こされる感染症が人から人へと次々に感染を拡大していき世の中に広く流行していく状況のことを意味する言葉としては、
パンデミックやアウトブレイクといった言葉が有名ですが、こうした二つの言葉には、具体的にどのような意味の違いがあると考えられるのでしょうか?
英語とギリシア語の語源に基づくアウトブレイクとパンデミックの具体的な意味の違い
そうすると、まず、
こうしたパンデミックとアウトブレイクという二つの言葉の大本の語源に基づく意味の違いについてまとめると、
英語におけるパンデミック(pandemic)という言葉は、
もともと、古代ギリシア語において、「すべての」「あらゆる」といった意味を表す限定詞にあたるpan(パン)と、「人々」「地域」「国家」といった意味を表す名詞であるdemos(デーモス)が結びついてできた言葉であり、
ウイルスや細菌などの病原体が世界中の多くの国々や地域へと感染を拡大していくことによって世界全体に感染症の普遍的な流行が広がっている状態のことを意味する疫学用語として定義されることになり、
日本語においては世界的流行や汎発流行などと訳されることになります。
そして、それに対して、
アウトブレイク(outbreak)という言葉は、
英語において「~の外へ」といった意味を表す副詞であるout-(アウト)と、「壊す」「打ち破る」といった意味を表す動詞であるbreak(ブレイク)が結びついてできた言葉であり、
一般的な意味としては、突然の天候の変化や害虫などの自然発生、戦争や暴動などの勃発や、怒りなどの感情の爆発のことを意味することになるほか、
疫学用語としては、特定の地域や集団における感染症の突発的な発生や増加のことを意味する言葉として定義されることになり、
日本語においては、集団発生や感染爆発などと訳されることになります。
つまり、一言いうと、
パンデミックやアウトブレイクという二つの疫学用語は、
アウトブレイクは、特定の地域や集団における
局地的で短期的な感染症の爆発的な流行のことを意味するのに対して、
パンデミックは、世界中の多くの国々や地域における
全域的で長期間におよぶ感染症の普遍的な流行のことを意味するという点に、
具体的な意味な違いがあると考えられることになるのです。
アウトブレイクからパンデミックへと至る感染症の流行の展開
ちなみに、
感染症の流行の規模や地域的および期間的な状況を意味する言葉としては、その他にも、エピデミックという疫学用語が用いられることもありますが、
こうした英語におけるエピデミック(epidemic)という言葉は、一つまたは複数の国や地域において局地的な感染症の流行が広がっている状況のことを意味することになります。
そして、
こうしたアウトブレイクとエピデミックとパンデミックという三つの疫学用語を用いて、感染症の世界的な大流行にあたるパンデミックが引き起こされるまでの一連の流れを説明していくとすると、
まずは、局地的で短期的な感染爆発にあたるアウトブレイクの連鎖によって、局地的な感染症の流行であるエピデミックが引き起こされていくことになり、
その後、世界各地において発生したエピデミックが互いにつながっていき、世界中のあらゆる国々や地域へと感染拡大が進展していくことによって、
世界全体における感染症の普遍的な流行のことを意味するパンデミックが引き起こされてしまうことになると考えられることになるのです。
・・・
次回記事:ウイルス検査における観察者効果に基づく無制限の検査拡大のリスクとウイルスとの戦いにおける光と闇の本質的な認識
前回記事:新型コロナウイルスの流行はいつ終息するのか?スペイン風邪や新型インフルなどの過去の事例と気温と湿度の条件に基づく推定
「ウイルス」のカテゴリーへ
「英語」のカテゴリーへ
「ギリシア語」のカテゴリーへ
「語源・言葉の意味」のカテゴリーへ