スペイン風邪の死亡率が海上の方が陸上よりも高かった理由とは?第一次世界大戦中のアメリカ軍の資料に基づく致死率の比較

人類の歴史上における最大規模のパンデミックとしては、1918年~1919年の2年間にわたってヨーロッパとアジアを中心とする世界中で大流行を引き起こし、

当時の世界全体の人口の4分の1にあたるおよそ5億人の感染者5000万人の死者を出したとも推定されているスペイン風邪が有名ですが、

こうしたスペイン風邪における感染拡大死亡率の傾向としては、興味深いものとして、陸上の場合よりも海上の場合の方がウイルス感染者の死亡率が高かったという記録が残されています。

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第一次世界大戦中のアメリカ軍の資料に基づくスペイン風邪の陸上と海上での致死率の比較

こうしたスペイン風邪の流行における陸上と海上での感染者の致死率の比較についての記録が残されているのは、第一次世界大戦中アメリカにおける特に海軍関連軍事資料においてであり、

そうした第一次世界大戦中アメリカの資料に基づくと、

イギリスフランスなどと同じ連合国の側から第一次世界大戦に参戦し、そもそもこうしたスペイン風邪とよばれる感染症の最初の流行地となったアメリカにおいては全体として50万人の死者が発生したと推計されています。

そして、

こうした第一次世界大戦中軍隊の内部におけるスペイン風邪の流行においては、特に、戦地へと移動していく際の行軍中野営地などでの感染拡大が深刻となっていたと考えられているのですが、

例えば、

第一次世界大戦に参戦したアメリカ兵スペイン風邪の致死率については、

ヨーロッパへと到着して実際に戦闘に参加してからの陸上での致死率よりも、ヨーロッパへと向かう途上の海上での致死率の方が2倍ほど高かったとされる統計データも残されているのです。

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海上の船内において感染率と死亡率が高くなった理由とイギリス海軍や港湾施設における感染拡大の状況

そして、このように、

スペイン風邪の流行が陸上の場合よりも海上において深刻となり、死亡率も高くなる傾向が見られた具体的な理由としては、

ヨーロッパへと向かう長い船旅のなかで、海の上の船内という狭い閉鎖的な空間の内に長期間にわたって閉じ込められることになった兵士たちの間では、

スペイン風邪の病原体にあたる飛沫感染接触感染を主な感染経路とする変異型のインフルエンザウイルスが非常に効率よく感染を拡大していくことができたという点が挙げられることになります。

そして、

いったん輸送船の中でウイルス感染が拡大していってしまうと、必要な物資の補給をすぐに行うこともできない狭い船内においては十分な治療を行うことが陸上の場合よりもさらに難しかったと考えられるため、

高い感染率の船内においてスペイン風邪のウイルスが蔓延していくなか、十分な治療を受けることができずに命を落としていく兵士の数が増えていくことによって、必然的に死亡率も高くなってしまうことになったと考えられることになります。

また、

こうしたスペイン風邪の流行における海軍や民間の船舶あるいは船が来航する港湾施設などにおける感染拡大の傾向については、アメリカ軍関連の資料以外にもいくつかの記録が残されていて、

例えば、

スペイン風邪の流行が始まった当初の時期にあたる19185にはイギリス海軍においてたった2週間の間に1万人以上の患者が発生したという記録が残されているほか、

フィリピンの首都にあたるマニラの港では、港湾施設で働く労働者の3分の2以上スペイン風邪に感染して病気で倒れてしまったために船から積み荷を降ろすことができなくなり一時的に港湾機能が停止してしまったという記録も残されています。

以上のように、

こうした1918年~1919年の2年間にわたるスペイン風邪世界的な大流行においては、陸上における都市や戦地などにおける感染の拡大だけではなく、

海上における輸送船などの海軍の艦船民間の船舶あるいは港湾施設などにおける感染の拡大も深刻であったと考えられることになるのです。

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