バウムクーヘンとバームクーヘンはどちらが正しい発音なのか?ドイツ語の正式な発音におけるauという二重母音の発音規則
中心にドーナツ状の穴があって断面が樹木の年輪のような同心円状の模様になっているのが特徴的なドイツの焼き菓子は、
日本語では、バウムクーヘンあるいはバームクーヘンなどと表記されることになりますが、
こうしたバウムクーヘンとバームクーヘンという二つの表記のあり方は、ドイツ語における正式な発音のあり方と照らし合わせた場合、どちらの方がより正しい発音のあり方を反映していると考えられることになるのでしょうか?
Baumkuchenの正式な発音とドイツ語における二重母音の発音規則
そうすると、まず、
そもそも、こうした日本語ではバウムクーヘンあるいはバームクーヘンと表記されているドイツの焼き菓子のことを意味する言葉は、ドイツ語においてはBaumkuchenと表記されることになり、
こうしたBaumkuchenと言う単語は、ドイツ語において「木」や「樹木」のことを意味するBaum(バオム)という名詞と、
「ケーキ」や「焼き菓子」のことを意味するKuchen(クーヘン)という名詞が結合することによってできた複合名詞にあたる言葉として位置づけられることになります。
ちなみに、
ドイツ語の単語における発音規則においては、単語のなかでaとuという二つの母音がこの順番で並んでいる時には、基本的には二重母音と呼ばれる特別な発音で読まれることになっていて、
例えば、
ドイツ語において「女性」や「妻」のことを意味する名詞であるFrauは、「フラウ」ではんく「フラオ」と発音されることになり、
「目」のことを意味する名詞であるAugeは、「アウゲ」ではなく「アオゲ」、
「~の上に」を意味する前置詞であるaufは、「アウフ」でなかう「アオフ」と発音されることになるように、
auという二つの母音で「アウ」ではなく「アオ」と発音されることになるのです。
日本語のカタカナ表記におけるアウフヘーベンとバウムクーヘン
以上のように、
こうしたドイツ語におけるauという二重母音の発音規則に基づくと、ドイツの有名な焼き菓子のことを意味するBaumkuchenという言葉は、
ドイツ語における正式な発音のあり方としては、バウムクーヘンでもバームクーヘンでもなく、「バオムクーヘン」と発音するのが、厳密な意味においては、最も正しい発音表記のあり方であると考えられることになります。
しかし、その一方で、
日本語におけるドイツ語の単語の一般的な慣用表記のあり方においては、
例えば、
ドイツの哲学者であるヘーゲルの弁証法哲学における二つの対立概念の高次における統一の意味する哲学用語であるaufhebenという単語は、
ドイツ語における正式な発音のあり方にあたる「アオフヘーベン」ではなく、「アウフヘーベン」という表記で日本語の辞書には載っているように、
こうしたauというドイツ語の二重母音に対応する日本語のカタカナ表記のあり方には、実際には、「アオ」ではなく「アウ」という表記のあり方が歴史的に長く用いられてきたと考えられることになります。
そして、そういった意味では、
こうしたドイツの有名な焼き菓子のことを意味するBaumkuchenという言葉は、日本語におけるカタカナ言葉としての正式な表記のあり方においては、
ドイツ語における正式な発音のあり方に最も近いと考えられる「バオムクーヘン」ではなく、「バウムクーヘン」と表記するのが慣用的には最も正しい表記のあり方であると考えられることになるのです。
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