英雄テーセウスの誕生と海の神ポセイドンとアテナイの王という二人の父親の存在、ギリシア神話の英雄テーセウスの物語①
ギリシア神話に登場する半神半人の英雄としては、ネメアの獅子やクレタの牡牛、アマゾンの女王ヒッポリュテや地獄の番犬ケルベロスとの戦いなどの十二の功業で有名なヘラクレスや、
見たものすべてを石に変える恐ろしい魔力を持つゴルゴンの女王であったメデューサ退治などで有名なペルセウス、
さらには、トロイア戦争における不死身の英雄であったアキレウスや、古代ローマの伝説上の建国の祖ともなったアイネイアースといった英雄たちが有名ですが、
そうした人間と神々の両方の血を引くギリシア神話の英雄としては、その他にも、
現在のギリシャの首都アテネにあたるアテナイの伝説的な建国の王としても位置づけられているテーセウスの名も挙げられることになります。
アテナイの王アイゲウスが授かったデルポイの謎めいた神託の言葉
テーセウスが生まれる前の時代のアテナイの地は、アイゲウス、パラス、ニーソス、リュコスという名の四人の兄弟たちによって治められていたのですが、
こうした四人の兄弟たちのなかでも最も強い力を持つアテナイの王であったアイゲウスのもとには跡継ぎとなる子供がいまだ生まれていなかったため、
彼は、やがて自らが持つアテナイの王位の座が、彼の兄弟たちによって脅かされることを強く恐れていくようになります。
そして、その後、
アテナイの王であったアイゲウスは、跡継ぎとなる自分の子供を手に入れるための方法を神々に問うために、デルポイのアポロン神殿へと赴いていくことになるのですが、
そうしてたどり着くことになったデルポイの地において、アイゲウスは、
人間の中では大いに優れたる者よ。酒袋の口を解いてはならない。アテナイの頂へとたどり着くまでは。さもなければ汝は悲しみのために死ぬことになるだろう。
というピューティアと呼ばれるデルポイの巫女たちが語る謎めいた神託の言葉を授けられることになるのです。
ポセイドンとアイゲウスという二人の父親を持つ英雄テーセウスの誕生
そして、その後、
こうした謎めいた言葉のうちに、自らの悲劇的な死を予感させる不吉な神託の言葉を聞いたアイゲウスは、
この神託の言葉の意味をはかりかねたまま、失意のうちにアテナイへの帰路へとついていくことになります。
そして、
そうしたアテナイへと帰っていく道の途中でアイゲウスは、ペロポネソス半島の北東部に位置する海辺の町であったトロイゼーンを訪れることになり、
この地を治める王であったピッテウスから客として招かれて、彼から歓待を受けることになります。
そうして、
そうしたトロイゼーンの王であったピッテウスからの歓待のさなか、アイゲウスは自分が聞いた謎めいた神託のことを彼に話してしまうことになるのですが、
その言葉を聞いて、この神託が、
アイゲウスが酒袋を解いた時、すなわち、酒を飲んでいる時に、彼と共にいる女性が身ごもって彼の跡継ぎとなるアテナイの王となる子供が生まれるということを意味している解釈したピッテウスは、
アイゲウスが持つアテナイの王位を狙って、自分の娘であったアイトラーを呼び寄せて、酒に酔って眠ってしまったアイゲウスのもとを訪れるように計らうことにします。
しかし、前述した神託の言葉とは違って、
アイゲウスは、アテナイの地へとたどり着く前に酒を飲んでしまったため、神託において示されていた予言の言葉も半分だけが成就することになったと考えられ、
トロイゼーン王女であったアイトラーがアイゲウスと共にいたのと同じ夜には、彼女のもとを海の神ポセイドンも訪れることになり、
その後、彼女は身ごもって男の子を生み、その子はテーセウスと名づけられることになります。
つまり、そういった意味では、
こうしてトロイゼーン王女アイトラーを母として生まれることになったテーセウスは、アテナイの王であるアイゲウスと、海の神であるポセイドンという二人の父親を持つ英雄として生まれることになったと考えられることになるのです。
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