火葬壇でのヘラクレスの死と雷鳴と共に天空へと運び上げられ神となるヘラクレス、古代ギリシア神話の英雄ヘラクレスの物語⑯

前回書いたように、カリュドンの地から追放されたヘラクレスと共に、東方のトラキスの地へと赴いていくことになった彼の妻であったデイアネイラは、

カリュドンの近くを流れていたエウエノス川を渡る際に、半人半馬の姿をしたケンタウロスネッソスの背中に乗って川を渡っていくことになります。

そして、川の中ほどまで来た時に、彼女の美しさに強く心を惹かれてデイアネイラに襲いかかったネッソスは、ヘラクレスが放つ渾身の一矢心臓を射抜かれて絶命することになるのですが、

彼は息を引き取ろうとする間際に、彼女に怖い思いをさせてしまったことへの償いとして、ヘラクレスのことを永遠に彼女のことを愛するように仕向けることができる不思議な力を持つ媚薬であると称して自分の血彼女に分け与えることになります。

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英雄ヘラクレスのオイカリアへの進軍へと捕虜となる王女イオレー

英雄ヘラクレスのオイカリアへの進軍とトラキスの火葬壇での死

そして、その後、

自分たちのことをこころよく迎え入れてくれたトラキスの地を治めるケユクス王のもとへとたどり着いたヘラクレスは、隣国を武力によって制圧してこの地で自らの軍の態勢を整えたのち、さらに北方の地へと目を向け、

かつて、彼に自分の一人娘であったイオレーを妻として与えると誓っておきながら、のちにその約束を違えてヘラクレスを追放してしまうことになったエウリュトス王への復讐を成し遂げるために、次の進軍の目標をエウリュトスが支配するオイカリアの地へと定めることになります。

そして、

ペロポネソス半島の中央部に居住するアルカディア人や、トラキスの地のメーリス人、エピクネーミスの地のロクリス人といったギリシア各地から多くの兵を募ったヘラクレスは、こうしたギリシア全土の諸部族からなる大軍を率いてオイカリアの地へと進軍していくことになり、

オイカリアの城壁の内へと攻め入ったヘラクレスは、この地でエウリュトス王とその息子たちを見つけ出して皆殺しにすると、見せしめとしてこの地で略奪の限りを尽くしていくことになります。

そして、その際、

ヘラクレスは、かつて自分の許嫁とされていた王女イオレーのことを見つけて、彼女のことを捕虜として引き連れていくことになるのですが、

このことをヘラクレスが留守にしていたトラキスの地において伝え聞くことになったデイアネイラは、かつてヘラクレスの弓に倒れて命を落とすことになったケンタウロスのネッソスから渡された血の媚薬のことを思い出すと、

自分の夫であるヘラクレスが、かつての許嫁であったイオレーへと再び心を寄せて自分のもとから離れっていってしまうことを恐れて、こうしたネッソスの媚薬を塗り込んだ儀式用の衣服ヘラクレスのもとへと送ることになるのです。

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火葬壇でのヘラクレスの死と天空へと運び上げられ神となるヘラクレス

そして、

オイカリアの地で戦いの勝利を記念して、ゼウスへの犠牲を捧げるための祭壇を築いたヘラクレスは、デイアネイラから送られたネッソスの血が塗り込まれた衣服を着て儀式の場へと赴いていくことになるのですが、

かつてネッソスの心臓を射抜いた時にヘラクレスが放った矢には、その毒液に触れた者には終わることのない死の苦しみをもたらすというヒュドラの猛毒が塗られていて、その毒がネッソスの血の内にも流れ込んでいたため、

ヘラクレスは、そうしたネッソスの血に含まれていたヒュドラの猛毒によって皮膚を焼かれることにより、決してやむことにない地獄の苦しみを味わい続けていくことになります。

そして、

自分が取り返しのつかないことをしでかしてしまったことを知ったデイアネイラは、このことに深く心を痛めて、ヘラクレスがトラキスの地へと帰りつく前に、首をくくって死んでしまうことになり、

その後、

トラキスの地へと帰りついたヘラクレスは、自分の後継ぎであったヒュロスに、かつての自分の婚約者であった王女イオレーを妻とするように命じたうえで、

自らの死の苦しみを終わらせるために、この地に火葬壇を築くと、炎が燃え盛るその祭壇の前へと進み出て、火葬壇の火炎の中で息絶えるという壮絶な死を遂げることになります。

そして、こうしてヘラクレスの体が火炎の中で焼き尽くされていくさなか、

天空の裂け目から雲が現れて彼のもとへと舞い降りてくると、その雲はヘラクレスの魂を雷鳴と共に天空へと運び上げていくことになったとも伝えられていて、

その後、

天上の世界において、自らの父でもった天空と雷の神であるゼウスから神々が持つ不死の力を与えられることになったヘラクレスは、

彼の人生に長くつきまとって彼のことを苦しめ続けてきた女神ヘラとも和解して、彼女の娘であった女神ヘーベー天界での妻として彼のそばに寄り添っていくことによって神の座へと昇っていくことになったとも語り伝えられていくことになるのです。

・・・

次回記事:ヘラクレイダイとは何か?ギリシア神話における具体的な位置づけと古代ギリシア語における語源的な意味

前回記事:デイアネイラを襲うケンタウロスの心臓を射抜くヘラクレスの矢とネッソスの媚薬、古代ギリシア神話の英雄ヘラクレスの物語⑮

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