ヘラクレイダイとは何か?ギリシア神話における具体的な位置づけと古代ギリシア語における語源的な意味
ギリシア神話の英雄ヘラクレスの物語においては、その最後の場面において、
地上の世界において火葬壇の火炎の中で息絶えるという壮絶な死を遂げることになったヘラクレスが、雷鳴と共に天空へと運び上げられていくことで神の座へと昇っていく場面が描かれていくことになりますが、
しばしば、こうしたギリシア神話におけるヘラクレスの死の場面の後には、それに続いてヘラクレイダイと呼ばれるヘラクレスの後裔たちについての物語が語られていくことになります。
それでは、そもそも、こうした古代ギリシア語におけるヘラクレイダイという言葉は、その言葉自体の語源的な意味においては、具体的にどのような意味を持った言葉であると考えられることになるのでしょうか?
古代ギリシア語におけるヘラクレイダイの語源的な意味
そうすると、まず、
こうしたヘラクレイダイという言葉は、古代ギリシア語における語源的な意味においては、
Ἡρακλῆς(ヘラクレス)という名詞に、「~の息子」や「~の子孫」といった意味を表す-ίδης(イダス)という接尾辞が結びつけられてできた
Ἡρακλείδης(ヘラクレイデス)という言葉の複数形にあたるἩρακλεῖδαι(ヘラクレイダイ)という言葉にあたると解釈されることになります。
つまり、そういった意味では、
こうした古代ギリシア語におけるヘラクレイダイ(Ἡρακλεῖδαι)という言葉は、その言葉自体の大本の語源的な意味においては、
「ヘラクレスの息子たち」あるいは「ヘラクレスの子孫たち」といった意味を表す言葉であったと考えられることになるため、
こうした古代ギリシア語の語源的な意味に基づく広義の意味においては、
ギリシア神話において登場する英雄ヘラクレスの子供たち、さらには、その子孫にあたるすべての人々が、こうしたヘラクレイダイと呼ばれる人々にあたると解釈していくこともできると考えられることになるのです。
ギリシア神話におけるヘラクレイダイの位置づけと英雄ヘラクレスが残した数多くの子孫たち
そして、
こうしたギリシア神話の登場人物にあたる英雄ヘラクレスには、
彼の正妻となったデイアネイラとの間に生まれたヘラクレスの後継ぎにあたるヒュロスを筆頭とする全部で四人の息子と一人の娘のほかにも、
テーバイの隣国であったテスピアイを支配する王であったテスピオスの五十人の娘との間に生まれた五十人の庶子たちや、
リュディアの女王であったオムパレーのもとに彼が仕えていたときに二人の間に生まれた息子であるともされているアゲラーオス、
アルカディアのテゲアの地にあった女神アテナを祀る神殿の女神官であったアウゲーとの間に生まれたテーレポスなどといった数多くの子孫たちが生まれていくことになります。
しかし、その一方で、
英雄ヘラクレスについて語られているギリシア神話のその後の物語のなかにおいては、主に、そうしたヘラクレスが残した数多くの子孫たちのなかでも、
彼の正妻であったデイアネイラとの間に生まれた長男ヒュロスを筆頭とするクテーシッポス、グレーノス、オネイテースという名の全部で四人の息子たちと、
その曾孫の世代にあたるテーメノス、アリストデーモス、クレスポンテースといった後継者たちのペロポネソス半島への帰還の物語が語られていくことになるため、
こうしたギリシア神話の物語においては、
ヘラクレスが残した数多くの子孫たちのなかでも、特に、こうした彼の正妻であったデイアネイラとの間に生まれた長男ヒュロスを筆頭とする嫡流の子供たちを祖とする家系のことを指して、
こうした「ヘラクレスの息子たち」あるいは「ヘラクレスの子孫たち」といった意味を表すヘラクレイダイという言葉が用いられていくことになっていったと考えられることになるのです。
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