英雄ヘラクレスの誕生とミケーネの王女アルクメネとアムピトリュオンの婚約、古代ギリシア神話の英雄ヘラクレスの物語①
ギリシア神話に登場するペルセウスやアキレウス、オデュッセウスやアイネイアースといった様々な英雄たちのなかでも、
ネメアの獅子やクレタの牡牛、アマゾンの女王や地獄の番犬ケルベロスとの戦いなどとして知られている十二の功業や、ギガントマキアと呼ばれる神々の戦いにおいても参戦し、
その死後に神の座へとついて、古代ギリシアやローマの人々からも広く信仰されていくことになったギリシア神話における最も有名な英雄としては、ヘラクレスの名が挙げられることになります。
ミケーネの王女アルクメネとアムピトリュオンの婚約
のちにヘラクレスの母となるアルクメネは、ギリシアの古代文明にあたるミケーネ文明の伝説上の始祖としても位置づけられている英雄ペルセウスの血をひく王女であったと伝えられているのですが、
アルクメネの父であったミケーネの王エレクトリュオンは、ある時、彼と遠い血縁関係にあった、ポセイドンの血をひくプテレラオスが率いるタポスの人々との間で領土をめぐる争いとなり、
そうした隣国との戦争の最中、アルクメネの十人の兄弟たちは、まだ年少であったリキュムニオスをのぞいてすべて殺されてしまい、
その後、息子たちの死の復讐のために戦地に赴こうとしていた父エレクトリュオンも不慮の事故で死んでしまうことになります。
そして、その後、
ミケーネの王女アルクメネは、ミケーネの北東に位置するテーバイの地へと逃れたのち、この地において兄弟の死の仇を討つことを誓ってくれたアムピトリュオンと結婚の約束をすることになり、
アムピトリュオンは、テーバイの王クレオンを味方としてタポスの軍勢を破り、プテレラオスを死に至らしめることによって、この戦争に勝利をおさめることになるのです。
神の子ヘラクレスと人の子イピクレスの双子の母となったアルクメネ
ところで、
王女アルクメネに対して思いを寄せていたのはアムピトリュオンだけではなく、ギリシア神話の主神にあたるゼウスも強い愛情を抱いていて、彼女に対して何度も言い寄っていくことになるのですが、
アムピトリュオンとの結婚の約束を守ろうとするアルクメネは、そうしたゼウスからの誘惑には決してなびくことがなく、自らの貞操を固く守り続けていくことになります。
すると、
アムピトリュオンが戦争への勝利をおさめて王女アルクメネが待つテーバイの地へと帰還する旅の途上にある時、
かねてからアルクメネに対して思いを寄せていたゼウスは、アムピトリュオンが戦争から戻らぬ隙になんとか彼女のことを自分のものにしようとして、
彼がアルクメネの待つテーバイの地へと帰還する前日の夜に、一夜を三倍の長さへと引き伸ばしたうえで、自らの姿を彼女の夫となるアムピトリュオンの姿へと変えて、アルクメネのもとを訪れることになり、
この時に、ミケーネの王女アルクメネとゼウスとの間に生まれることになった子がのちにギリシア神話における最大の英雄となるヘラクレスであったと考えられることになります。
そして、その後、
アルクメネは、ゼウスとの間に生まれることになったヘラクレスと共に、自分の本当の夫であるアムピトリュオンとの間の子であるイピクレスも身ごもることによって、
神の子であるヘラクレスと、人の子であるイピクレスの双子の母として二人を生み育てていくことになったと考えられることになるのです。
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