ミケーネ文明の伝説上の始祖となった英雄ペルセウス、古代ギリシア神話の英雄ペルセウスの物語⑥
ゴルゴンの女王メドゥーサを退治するという偉業を成し遂げたのち、遠い異国のエチオピアの地において、海の怪物への生贄として捧げられた王女アンドロメダを救出して彼女と結婚した英雄ペルセウスは、
その後、自らの母であったダナエーが待つエーゲ海の南に浮かぶ小さな島であったセリーポス島へと帰る旅路を急いでいくことになります。
ペルセウスのセリーポス島への帰還と母ダナエーの救出
セリーポス島へと帰りついたペルセウスが、かつて母と共に暮らしていた家へと戻ってみると、すでにそこには母の姿はなく、
ペルセウスは、自らの母であったダナエーと、この島で自分と母のことをかくまってくれていた優しい漁師であったディクテュスの姿をたずね求めて島中を探し回っていくことになります。
セリーポスの王であったポリュデクテスは、かねてから、もともとはアルゴスの王女であり、ゼウスにも見そめられた美しい女性であったダナエーに強い恋慕の情を抱いていて、
息子であるペルセウスがいない隙に、ダナエーのことを無理やり自分のものにしてしまおうとしていたのですが、
そのことに気づいたダナエーと、彼女のことを守ろうとするディクテュスは、二人で王のもとから逃げ出していくことになり、
ちょうど二人がポリュデクテス王と配下の兵士たちによって島の神を祀る祭壇へと追い詰められたその時に、ペルセウスがその姿を見つけることになります。
そして、
ペルセウスは、二人のことを捕まえようとするポリュデクテス王と兵士たちの前に現れると、傍らに隠し持っていたキビシスの袋の中からメドゥーサの首を取り出して、その眼が持つ石化の魔力によって彼らのことを石へと変えてしまい、
自らの母であるダナエーとディクテュスの二人を救い出すことに成功することになるのです。
ミケーネ文明の伝説上の始祖となった英雄ペルセウス
そしてその後、ペルセウスは、
石と化してしまったポリュデクテス王の代わりに、母のことを守ってくれていたディクテュスのことをセリーポスの王に据えると、母であるダナエーと妻であるアンドロメダとを伴って、自らの生まれ故郷であるアルゴスの地へと帰還することになります。
アルゴスのアクリシオス王は、かつて、
「自分の娘から生まれた男の子によって殺されることになるだろう」というデルポイの神託の予言の言葉を恐れて、自分の娘であるダナエーとペルセウスの母子を追放していたのですが、
いまや、そうした自分の孫にあたるペルセウスがアルゴスへと帰還したことによって、予言が成就することを恐れたアクリシオス王は、すぐにアルゴスを捨て去って北のテッサリアの地へと逃げ出していくことになります。
そして、この時、
ちょうどテッサリアでは、この地を治めていたテウタミデス王が亡くなった父を祀るための盛大な競技の祭典を開いていて、
そうした競技の祭典に招かれたペルセウスが、五種競技(ペンタスロン)の円盤投げの種目に参加している際に力強く円盤を投げると、彼が放った円盤は遠くまで飛んでき、この地に逃げ延びていたアクリシオス王の足を打ち砕くとたちどころに彼のことを殺してしまうことになります。
そして、その後、
ペルセウスは、亡き祖父であったアクリシオス王に代わってアルゴスの王位を継承することになるのですが、
図らずも自分の手で死なせてしまった祖父の土地をそのまま自らのものとすることを潔しとしなかったペルセウスは、
隣国のティリンスの王であったメガペンテースのところへと赴いて領土の交換を行い、自分が継承したアルゴスの代わり、ティリンスとミケーネの地を得ることによってこの地を大いに栄えさせていくことによって、
ギリシア最古の文明とされるエーゲ文明のなかで、クレタ文明に次いで、ペロポネソス半島を中心とするギリシアの地において栄えたとされる古代文明にあたるミケーネ文明の伝説上の始祖としても位置づけられることになっていったと考えられることになるのです。
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