英雄ペルセウスによる王女アンドロメダの救出と王弟ピーネウスの陰謀、古代ギリシア神話の英雄ペルセウスの物語⑤
アテネから与えられた青銅の盾と、ヘルメスから与えられた金剛の鎌を駆使することによって、ゴルゴンの女王メドゥーサを退治するという偉業を成し遂げた英雄ペルセウスは、
その後、メドゥーサの首をキビシスの袋に入れて傍らに抱えたまま、メドゥーサの血から生まれた有翼の白馬であるペガサスに乗って、
西のアトランティック海を越え、リビアやエチオピアといった現在のアフリカにあたる国々を訪れていくことになります。
エチオピアの王妃カシオペアの高慢と海の神ポセイドンの怒りと罰
ギリシア神話における記述によれば、当時のエチオピアは、ケーペウスという名の王によって統治されていたとされているのですが、
エチオピア王ケーペウスの妻であったカシオペアは、姿かたちはとても美しい女性であったものの、気位が高く非常に高慢な女でもあり、
カシオペアは、そうした自らの美貌を誇るあまり、海のニンフ(妖精)たちとも美を争って、彼女たちに向かって、自分の美しさはすべてのニンフよりも美しく、海の女神にさえ劣るところがないとまで言い放つことになります。
そして、
この言葉を聞いた海のニンフたちは、怒りのあまり海の神ポセイドンにこのことを言いつけ、人の身でありながら神を恐れぬまでに増長したカシオペアの高慢さに憤慨したポセイドンは、
王妃カシオペアとその夫ケーペウスが治めるエチオピアへの罰として、津波のように高くそびえ立つ大きな高潮と獰猛な海の怪物たちをエチオピアの地へと送り込むことになるのです。
海の怪物への生贄として捧げられたエチオピアの王女アンドロメダ
そして、その後、
こうした巨大な海の波と怪物たちの襲撃によって一気に滅亡の危機へと追い込まれてしまうことになったエチオピアの人々は、この地の人々が信じる神であったアムモーンに神託の言葉を求めることになるのですが、
アンモーンは、彼らに対して、王妃カシオペアとケーペウス王が自らの罪を贖うために、自分の最愛の娘であるアンドロメダを生贄として海に捧げるならば、エチオピアは災いから救われることになるだろうという予言の言葉を授けることになります。
そして、
こうしたアンモーンの予言の言葉を聞いたエチオピアの人々によって強いられる形で、ケーペウス王は、自分の娘であるアンドロメダを怪物たちへの生贄として、海の大岩へと縛り付けることになるのですが、
この時、エチオピアの上空をペガサスに乗って駆けていた英雄ペルセウスのもとへと、生贄に捧げられた王女アンドロメダの悲痛な叫びが届くと、彼女の痛ましくも美しい姿を目にしたペルセウスは、ひと目で恋に落ちてしまうことになり、
ペルセウスは、ケーペウス王に対して、アンドロメダを自分の妻とすることを条件に、自らの命をかけて彼女を海の中から救い出すことを固く誓うことになるのです。
王弟ピーネウスの陰謀と英雄ペルセウスと王女アンドロメダの結婚
そして、その後、
ペルセウスは、メドゥーサを倒した時に使った金剛の鎌を縦横無尽にふるって奮戦し、アンドロメダを食い殺そうとして押し寄せる海の怪物たちをすべて切り殺して、彼女を荒れ狂う海の中から救い出すことに成功することになるのですが、
この時、ケーペウス王の弟であり、かねてよりアンドロメダの最初の婚約者となることを認められていたピーネウスは、
異国の地から来た男であるペルセウスに、美しい姪のアンドロメダを与えるのが惜しくなって、彼のことを亡き者にしてしまおうと陰謀をめぐらしていくことになります。
しかし、
こうした王弟ピーネウスの陰謀をいち早く察知したペルセウスは、彼らのことを待ち伏せて、キビシスの袋の中に封じ込めていたメドゥーサの首を取り出すと、その眼が持つ石化の魔力によって、ピーネウスと共謀者たちをすべて石へと変えてしまい、
その後、
英雄ペルセウスと王女アンドロメダは、国と王女を救ってくれた英雄を讃えるケーペウス王とエチオピア人たちによる祝福の声のなか、めでたく婚礼の祝宴を迎えることになるのです。
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