ニュージーランドを象徴する色が黒と白である理由とは?マオリ神話における神秘的な暗闇とシルバー・ファーンの銀白色の葉
ニュージーランドの国旗は、青地を背景に左上にはイギリスとのつながりを象徴するユニオンフラッグと呼ばれるイギリスの国旗が配置され、右側には国土が南半球にあることを象徴する南十字星が四つの赤い星の姿で描かれている青を基調とするデザインとなっていますが、
その一方で、
オールブラックス(All Blacks)と呼ばれるラグビーのニュージーランド代表チームの黒一色のユニフォームなどに象徴されるように、
ニュージーランドという国家を象徴する色、すなわち、ナショナルカラーとしては、国旗に使用されている青や白や赤といった色よりも、黒や白といった色が用いられる場合の方が多いと考えられることになります。
それでは、このように、
ニュージーランドを象徴する色として黒と白という国旗に含まれていない色が用いられていることは具体的にどのような理由があると考えられることになるのでしょうか?
マオリ神話における不定形で潜在的な力としての神秘的な暗闇の領域
そうると、まず、
ニュージーランドを象徴する色として黒と白という対称的な色が用いられている由来としては、もともとこの地に住んでいた先住民にあたるマオリ族の神話にまでその大本の起源をたどっていくことができると考えられることになります。
マオリ族の神話においては、多くの場合、
世界の創造と神と人々の起源を解き明かしていく宇宙の創成期の物語のなかで、はじめに存在していたとされる暗黒や虚空とも呼ばれる長く続く暗闇の世界の内から白い光の世界が現れていくことによって現在の世界が形づくられることになっていったと語られていくことになります。
しかし、その一方で、
こうしたマオリ神話において語られている暗黒や暗闇と呼ばれる世界の存在は、必ずしも、善に対する悪といった負の領域のことを意味しているわけではなく、
それは、
世界のすべての存在がその内から生まれることになった潜在的な力をもつ根源的な存在としても位置づけられていくことになります。
そして、マオリ神話においては、
そうした潜在的な領域としての暗闇の世界の対極に存在する白い光の世界は、自然界における調和とバランスが取れている現実における物理的な世界として捉えられていくことになるのですが、
そういった意味では、
こうした黒によって象徴されるマオリ神話における暗闇の領域は、
すべてのものが物理的な存在として形づくられていく前の不定形で潜在的な力として捉えられていくことになるある種の精神的な存在あるいは霊的な存在が漂っている領域としても位置づけられることになると考えられることになるのです。
ニュージーランドの国樹にあたるシダ植物の銀白色の葉
また、その一方で、
そうしたマオリ神話における不定形で潜在的な力が存在する暗闇の領域のことを象徴する色にあたる黒に対して、
ニュージーランドを象徴するもう一つの色にあたる白は、ニュージーランドの国樹にシルバー・ファーン(Silver Fern)と呼ばれるシダ植物の葉の色あたる銀色の代用として用いられている色としても位置づけられていくことになります。
こうしたシルバー・ファーンあるいは銀シダと呼ばれるシダ植物は、その名の通り、葉の裏側が銀白色をしていて、
そうした神秘的な色彩を放つシルバー・ファーンの銀白色の葉は、古くからマオリの人々の信仰の対象ともされていたと考えられることになるのです。
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以上のように、
ニュージーランドを象徴する色として黒と白というニュージーランドの国旗には含まれていない色が用いられている具体的な理由については、
黒については、ニュージーランドの先住民にあたるマオリ族の神話において不定形で潜在的な力が存在するとされる神秘的な暗闇の領域のイメージに基づいて、
白については、そうしたマオリ神話において調和とバランスのとれた現実の世界として位置づけられている白い光の世界のイメージ、そして、ニュージーランドの国樹にあたるシルバー・ファーンの銀白色の葉のイメージに基づいて、
こうした黒と白という二つの色がニュージーランドという国家を象徴する色、すなわち、ニュージーランドのナショナルカラーとして位置づけられていくことになっていったと考えられることになるのです。
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