黄道帯が獣帯とも呼ばれる理由とは?十二星座のモチーフとなった動物たちと黄道帯との関係
前回の記事で書いたように、天文学の分野において、黄道帯(こうどうたい)あるいはゾディアック(zodiac)と呼ばれている領域は、
天球上における太陽の年周軌道にあたる黄道から南北に約8度ずつ、幅にして約16度にわたる天球上における帯状の領域として位置づけられることになるのですが、
こうした天球上における太陽の通り道にあたる黄道を中心とする黄道帯と呼ばれる帯状の領域は、日本語における別名においては獣帯(じゅうたい)という言葉によっても呼び表されることになります。
それでは、このように、
天文学の分野における黄道帯のことを指して、獣帯という「動物の帯」のことを意味する言葉が用いられることがあるということについては、具体的にどのような理由から説明していくことができると考えられることになるのでしょうか?
「小さな動物たち」がつくる「円」や「輪」としてのゾディアック
そうすると、まず、冒頭でも述べたように、
日本語では黄道帯と呼ばれている天球上における帯状の領域は、英語ではゾディアック(zodiac)と呼ばれることになるのですが、
こうした英語におけるゾディアック(zodiac)という言葉は、もともと、
古代ギリシア語において「小さな動物」のことを意味するゾイディオン(ζῴδιον)という言葉と、「円」や「輪」のことを意味するキュクロス(κύκλος)という二つの単語が結びつくことによってできた言葉であると考えられることになります。
つまり、そういった意味では、
こうした日本語における黄道帯のことを意味する英語ではゾディアック(zodiac)という言葉自体が、その大本の語源となる意味においては、
「小さい動物たち」がつくる「円」や「輪」のことを意味する概念であったと考えられることになるのです。
十二星座のモチーフとなった動物たちと獣帯との関係
そして、
こうした黄道帯と呼ばれる天球上における帯状の領域のうちに位置づけられている星々の集まり、すなわち、そうした黄道帯のうちに位置する代表的な星座の種類としては、
おひつじ座、おうし座、ふたご座、かに座、しし座、おとめ座、てんびん座、さそり座、いて座、やぎ座、みずがめ座、うお座といった
星占いなどで有名な黄道十二星座と呼ばれる星座たちの名が挙げられることになると考えられることになります。
そして、
こうした黄道帯に位置する代表的な12個の星座たちのモチーフとなったと考えられるギリシア神話の物語をひも解いていくと、
おひつじ座、おうし座、かに座、しし座、さそり座、やぎ座、うお座という7つの星座は、黄金の羊、白い牡牛、大蟹、巨大な獅子、毒針を持つ蠍、魚の尾をした山羊、尾を結ばれた二匹の魚といった動物が題材となった星座となっていると考えられることになるのに対して、
ふたご座はカストルとポルックスの双子の兄弟、おとめ座は麦の穂を持つ女神ペルセポネといった英雄や神々の姿が題材となった星座、
てんびん座は正義の女神ディケーとも同一視される純潔の女神アストライアが掲げる二枚の皿がつるされた天秤の姿、みずがめ座はトロイアの王子ガニメデが捧げ持つ口が下向きになった水瓶の姿といった神話的な事物が題材となっていると考えられ、
最後に残った
いて座の場合は、矢をつがえた弓を引くケンタウロス族の賢者ケイロンという半人半馬の姿をした神話上の種族が題材となった星座となっていると考えられることになります。
そして、
こうした半人半馬の種族にあたるケンタウロスの姿が描かれているいて座を動物と人間の姿が半分ずつ題材となった星座として捉えることができるとすると、
こうした十二星座と呼ばれる12個の星座のうちの7.5個の星座、すなわち、全体の60パーセントを超える星座が動物の姿が題材となった星座として位置づけられることになると考えられることになるのです。
以上のように、
天文学の分野における黄道帯のことを指して、日本語では獣帯と呼ばれる「動物の帯」のことを意味する言葉が用いられることがある具体的な理由としては、
こうした黄道帯と呼ばれる太陽の通り道にあたる黄道を中心とする天球上における帯状の領域のうちには、動物が題材となった星座が数多く位置していて、
一言でいうと、
天球上において動物の星座が数多く存在している帯状の領域という意味で、こうした「動物の帯」あるいは「小さな動物たち」がつくる「円」や「輪」のことを意味する獣帯やゾディアックという言葉が用いられるようになっていったと考えられることになるのです。
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次回記事:黄道十二宮とは何か?①黄道帯における十二宮の具体的な配置と春分点との関係
前回記事:黄道帯(ゾディアック)の天球上における具体的な位置とは?黄道座標に基づく天文学的に正確な意味における黄道帯の位置づけ
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