おひつじ座の星の名前と由来とは?星座の描画の二つのパターンと古代メソポタミアにおける農具と牧羊
黄道十二星座の一つとして位置づけられている牡羊座(おひつじざ)は、黄道十二宮における白羊宮(はくようきゅう)の領域とも結びつけられることによって、
二十四節気のうちの春分から穀雨の頃までの時期にあたる 3月21日から4月19日までの30日間の期間を司る星座としても位置づけられることになるのですが、
天文学において、こうしたおひつじ座を構成する主要な星としては、具体的にどのような星の名前が挙げられることになると考えられることになるのでしょうか?
おひつじ座を構成する主要な五つの星の名前と具体的な由来
そうすると、まず、
こうした日本語ではおひつじ座、英語ではAries(エアリーズ)と呼ばれる星座は、現代の天文学においては、全部で119個ほどの恒星によって構成されている星座として位置づけられることになるのですが、
こうしたおひつじ座を構成している様々な星々のうち、地球から見たとき比較的明るくて大きい星として観測されることになる主要な星の名前を挙げていくとすると、
ハマルとシュラタンとメサルティム、そして、バラニーとボテインという全部で五つの星の名前を挙げていくことができると考えられることになります。
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こうしたおひつじ座を構成する主要な五つの恒星のうち、はじめに挙げた
ハマル(Hamal)とは、アラビア語において「羊」を意味するal-ḥamal (アルハマル)という単語に由来する名前を持つ星であり、おひつじ座では唯一の二等星の明るさをもつ最も明るい恒星として位置づけられることになります。
そして、その次に挙げた
シュラタン(Hamal)とは、アラビア語における28の星宿※の第1宿として位置づけられるal-sharaṯān(アル・シャラタン)に由来する名前を持つ星であり、
こうしたアラビア語におけるal-sharaṯān(アル・シャラタン)という言葉は、もともとは「二つの印」「二つの兆し」といった意味をもつ言葉であったとも考えられるように、かつては、後述するメサルティムと呼ばれる恒星と共に二つで一組となる星々として位置づけられていたと考えられることになります。
※星宿(せいしゅく)あるいは月宿(げっしゅく)と呼ばれる言葉は、天球上の太陽の通り道である黄道に対して、天球上の月の通り道に当たる白道を28あるいは27の領域へと分割した月の運行に基づく天球の区分のあり方として定義されることになります。
そして、その次に挙げた
メサルティム(Mesarthim)とは、ヘブライ語において「従者」を意味する meshārethīm(メシャレティム)に由来する名前を持つ星、
バラニー(Bharani)とは、ヒンドゥー教における27の星宿の第2宿として位置づけられる Bharani(バラニー)に由来する名前を持つ星、
ボテイン(Botein)とは、アラビア語において「小さなお腹」という意味を表す単語に由来する名前を持つ星としてそれぞれ位置づけられていると考えられることになるのです。
おひつじ座の二つのパターンと古代メソポタミアにおける農具と牧羊
そして、
こうしたおひつじ座を構成している主要な星々を線でつなげて星座の形を描く場合には、
上記の図において示したように、ハマルとシュラタンとメサルティムという三つの星にボテインと呼ばれる星をつなげて鉤型の形状をした星座として描かれる場合のほかに、
そうしたハマルとシュラタンとメサルティムという三つの星にボテインよりも上方に位置するバラニーと呼ばれる星の方をつなげて直線に近い形をした星座として描かれる場合もあると考えられることになります。
そして、
古代メソポタミアにおいては、こうした鉤型の形状をした星座の姿から農具を使う農夫の姿が連想されていくことになり、
その後、そうした農具や農耕といったイメージが、シュメール神話などにおいて登場する牧羊の神ドゥムジやタンムーズと結びつけられていくことによって、
現在におけるおひつじ座の原型となるイメージが形づくられていくことになっていったと考えられることになるのです。
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