キリストが死んだ聖金曜日が英語でグッド・フライデーと呼ばれる理由とは?聖書を意味するグッド・ブックとの関係
前回の記事で書いたように、キリスト教における復活祭の日曜日の二日前の日にあたる聖金曜日は、イエス・キリストが十字架にかけられて死んだ日であるとされていて、
キリスト教においては、こうした聖金曜日と呼ばれる日は、キリストの十字架の死を嘆き悲しんで深い哀悼の意を示す悲しみに満ちた聖なる日として位置づけられていると考えられることになるのですが、
その一方で、
こうした聖金曜日と呼ばれる日は、英語の表現においては、一般的には、Good Friday(グッド・フライデー)、すなわち、日本語に直訳すると「良い金曜日」と訳されてしまうような言葉として表現されることになります。
そこで今回の記事では、こうした日本語では聖金曜日と呼ばれるキリスト教におけるイエスの十字架の死を記念した聖なる日について、そのほかのフランスやドイツやスペインといった英語圏以外のヨーロッパの国々では具体的にどのような表現が用いられているのか?
そして、こうしたイエスの十字架の死という本来は悲しむべき出来事が起こった日でもある聖金曜日に対して、英語の表現においては、まるで良いことが起こった日であるかのようなGood Friday(グッド・フライデー)という表現が用いられているのには具体的にどのような理由があるのか?といったことについて、順番に詳しく考察していきたいと思います。
フランス語とスペイン語とドイツ語における聖金曜日の表現
そうすると、まず、
こうした日本語においては聖金曜日、英語ではGood Friday(グッド・フライデー)と呼ばれるイエスの十字架の死を記念する日は、
フランス語ではVendredi saint(ヴァンドルディ・サン)、
スペイン語ではViernes Santo(ヴィエルネス・サント)、
ドイツ語ではKarfreitag(カール・フライターク)
とそれぞれ表現されることになるのですが、
このうち、フランス語におけるsaint(サン)と、スペイン語におけるsanto(サント)という単語は、どちらも「聖なる」「神聖な」といった意味を表す単語であるのに対して、
ドイツ語におけるKar(カール)という単語の部分は、もともと古いドイツ語の表現において「悲嘆」や「哀悼」といった意味を表す言葉であり、現代のドイツ語ではKlage(クラーゲ)といった単語として表現される言葉であったと考えられることになります。
つまり、
こうしたフランス語とスペイン語とドイツ語における表現においては、イエスの十字架の死を記念する日は、
フランス語とスペイン語では、日本語の場合と同じように、「聖なる金曜日」といった意味で、こうしたVendredi saint(ヴァンドルディ・サン)あるいはViernes Santo(ヴィエルネス・サント)といった表現が用いられていると考えられることになるのに対して、
ドイツ語では、そうしたキリストの死を悼んで深く嘆き悲しむといった意味が込められた「悲しみの金曜日」あるいは「哀悼の金曜日」といった意味でこうしたKarfreitag(カール・フライターク)という表現が用いられていると考えられることになるのです。
聖書のことを意味するGood book(グッド・ブック)と聖なる金曜日のことを意味するGood Friday(グッド・フライデー)
それでは、それに対して、
なぜ英語の表現においては、こうしたGood Friday(グッド・フライデー)という一見するとキリストの十字架の死が人々にとって喜ばしい良い出来事であったかのようにも解釈されかねない表現が用いられているのか?ということについてですが、
それについては、
俗説としては、こうしたGood Friday(グッド・フライデー)という言葉が、イエス・キリストに別れを告げる日であるという意味、
すなわち、Goodbay Friday(グッバイ・フライデー)の短縮形にあたる言葉として用いられているという説や、
ある意味では、この日はイエス・キリストが十字架の死をとげることによって神になった日であるとも捉えることができると考えられることから、
God Friday(ゴッド・フライデー)、すなわち、「神の金曜日」といった意味を表す言葉が変化していくことによって生まれた表現であるといった説も挙げられることになるのですが、
こうしたGood Friday(グッド・フライデー)という表現の語源学的な意味における正式な由来としては、
そもそも、こうしたGood Friday(グッド・フライデー)という表現のなかで用いられているgood(グッド)という単語自体が、前述したフランス語やスペイン語におけるsaint(サン)やsanto(サント)といった単語と同様に、
古い英語の表現においては、「聖なる」「神聖な」といった意味を表す単語としても用いられていたという点が挙げられることになると考えられることになります。
例えば、現在の英語の表現においても、
キリスト教の聖典であり、イエス・キリストが語ったとされている聖なる言葉や、聖金曜日の由来となったイエスの十字架の死についての記述もなされている書物、
すなわち、聖書と呼ばれる書物は、Bibel(バイブル)やHoly book(ホーリー・ブック)といった表現のほかに、Good book(グッド・ブック)という表現によって呼び表されることもあるように、
英語においてイエス・キリストが十字架にかけられて死んだ日のことを意味するGood Friday(グッド・フライデー)という言葉も、
そこで用いられているGood(グッド)という単語は、「良い」や「好ましい」といった意味ではなく、
聖書のことを意味するGood book(グッド・ブック)といった表現にも見られるように、「聖なる」「神聖な」といった意味、
すなわち、「聖なる金曜日」「神聖なる金曜日」といった意味でこうしたGood Friday(グッド・フライデー)という表現が用いられていると解釈していくことができると考えられることになるのです。
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次回記事:聖週間と受難週とは何か?キリスト教のイエスのエルサレム入城から十字架の死そして復活日の前日までの七日間の具体的な意味
前回記事:聖金曜日と聖土曜日の由来とは?ルカによる福音書におけるイエスが十字架の死から復活までの記述とユダヤ教の安息日との関係
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