ギガントマキアにおけるオリュンポスの神々とガイアが生んだ十二体のギガースたちの戦いと半神半人の英雄ヘラクレス
前回の記事で書いたように、ギリシア神話のなかで語られている太古の時代における天界と宇宙の支配権をめぐる神々同士の戦いにおいては、
天空を司る神であったウラノスから王位を簒奪して天界の王位の座に君臨していたクロノスを筆頭とするティターン神族と呼ばれる巨神族に対して、
ゼウスを盟主とするオリュンポスの神々が戦いを挑んだティタノマキアと呼ばれる神々の戦いにおいて、オリュンポスの神々の側の勝利することによって、オリュンポスの神々の盟主であったゼウスが新たに天界の王位の座につくことになります。
しかし、
天界と宇宙の支配権をめぐる神々の戦いは、こうしたティタノマキアと呼ばれる天地を揺るがす一回の大きな戦争によって、そのすべてに決着がつけられたわけではなく、
その後、
こうしたオリュンポスの神々による天界と地上の世界の支配に不満を抱いていた古代の神々によって、ギガントマキアと呼ばれる新たな神々の戦いが引き起こされていくことになります。
ギガントマキアにおけるオリュンポスの神々とギガースと呼ばれる巨人たちとの戦い
ギリシア神話の物語においては、
ティタノマキアと呼ばれる神々の戦いに勝利したゼウスを盟主とするオリュンポスの神々は、戦いに敗れたクロノスを筆頭とするティターン神族たちが再び力を取り戻してオリュンポスの神々による天界と地上の世界の支配を脅かすことがないように、彼らを、地底の牢獄であるタルタロスに幽閉してしまうことになるのですが、
こうしたティターン神族と呼ばれる古代の神々を生んだ大地の女神ガイアは、自分の息子と娘たちであったティターンに対するこうした仕打ちに強く憤り、オリュンポスの神々に対して復讐を誓うことになります。
ガイアのもとには、天空を司る神であったウラノスがかつて自分の息子であるクロノスによって体を切り裂かれた時に負った傷から滴り落ちた血をガイア自身が受けることによって生み出された
古代ギリシア語で「巨人」のことを意味するギガース(Gigas)と呼ばれる巨人族たちが仕えていたのですが、
大地の女神ガイアは、ゼウスを盟主とするオリュンポスの神々による天界と地上の世界の支配に終止符を打つために、こうした自分の息子たちであるギガースと呼ばれる巨人たちをオリュンポスの神々のもとへと差し向けていくことによって、
こうしたゼウスを盟主とするオリュンポスの神々と、大地の女神ガイアが率いるギガースと呼ばれる巨人たちとの間で、巨人であるギガース(Gigas)との戦い(マキア、makhia)、すなわち、ギガントマキア(Gigantomakhia)と呼ばれる神々の戦いが繰り広げられていくことになるのです。
ガイアが生んだ十二体のギガースたちと英雄ヘラクレスとの戦い
そして、
こうした大地を司る女神であるガイアのもとからは、
自分が生まれた土地で戦う限り神々と同じ不死なる力を与えられたアルキュオネウスと、巨人たちのなかでも最も荒々しい無敵の力を誇るポルピュリオンとよばれる二体の最強の巨人たちを筆頭に、
エピアルース、エウリュトス、クリュティオス、ミマース、エンケラドス、パラス、ポリュボテス、ヒッポリュトス、グラティオン、アグリオス、トオンと呼ばれる
全部で十二体のギガースたちが、ゼウスを筆頭とするオリュンポス十二神たちのもとへと差し向けられていき、彼らに対して戦いを挑んでいくことになるのですが、
そうした巨人たちとの戦いを受けて立ったオリュンポスの神々は、神々をも凌駕する力を持った巨人たちを、神々が持つ力によってだけでは打ち倒すことができずに、苦戦を強いられていくことになります。
そして、この時、
神々の間では、「巨人たちは神々の力によっては滅ぼされないが人間の力が合わさる時に滅ぼされることになるだろう」という予言の言葉が示されていたのですが、
その予言の言葉を聞いたオリュンポスの神々の盟主であったゼウスは、神である自分自身とミュケナイの王女であったアルクメネとの間に生まれた怪力を持つ半神半人の英雄であるヘラクレスを呼び寄せて、彼と共に巨人たちと戦うことによって、戦況の打開を図っていくことになります。
そして、
二体の最強の巨人のうちの一体であるアルキュオネウスと呼ばれる巨人は、英雄ヘラクレスが放った矢によって急所を射抜かれたのち、この巨人が持つ不死の力を持つ巨人の弱点に気づいた知恵の女神アテナの助言を受けたヘラクレスが、
傷ついた体を回復させようとしているアルキュオネウスを、自らが持つ怪力を用いて、この巨人を彼の生まれ故郷であったパレネの地の外へと引きずり出してしまうことによって、その命を絶たれてしまうことになります。
また、
もう一体の最強の巨人であったポルピュリオンも、ゼウスの妻であった女神ヘラの美しさに心を惑わされて、彼女に襲いかかろうとした隙をついて、夫であるゼウスが放った雷撃によって打ち倒されたところを、
ヘラクレスが矢によって射抜いてとどめを刺すことによって、その命を絶たれてしまうことになるのです。
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そして、以上のように、
ゼウスを盟主とするオリュンポスの神々と、大地の女神ガイアが率いるギガースと呼ばれる巨人たちとの間で戦われたギガントマキアと呼ばれる神々の戦いにおいては、
ゼウスが率いるオリュンポスの神々は、ギリシア神話における半神半人の英雄であるヘラクレスに象徴されている人間の力を借りることによって、
巨人たちが持つ強大な力を打ち破って、天界と地上の世界における支配権を守り切ることに成功することになったと考えられることになるのです。
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