悪魔を意味するサタンと土星を意味するサターンの関係とは?ローマ神話のサトゥルヌスとギリシア神話のクロノスと神々の戦争
ユダヤ教やキリスト教においては、全能なる神の権威に対して挑戦を挑み、人間を誘惑して堕落させようと試みる悪魔の存在がサタン(Satan)という名で呼ばれるのに対して、
太陽系において太陽から近い順に並べた場合の6番目の惑星にあたる土星は英語ではサターン(Saturn)と呼ばれることになりますが、
こうした日本語の発音ではサタンとサターンと呼ばれることになる二つの言葉は、それぞれ英語の発音においてはセイトゥン(Satan)とサターン(Saturn)と発音されることになるように、
こうした二つの言葉は、互いに綴りも発音も語源もまったく異なる別々の言葉であると考えられることになります。
そして、
前者の悪魔を意味するサタン(Satan)という言葉は、もともとは旧約聖書の原語にあたるヘブライ語において敵対者や告発者といった意味を表す言葉であったのに対して、
後者の土星を意味するサターン(Saturn)という言葉は、もともとはローマ神話における古代の農耕神として位置づけられていたサトゥルヌス(Saturnus)という神の名に由来する言葉であると考えられることになるのですが、
そうした聖書やローマ神話あるいはギリシア神話などにおける神々や悪魔についての記述について詳しく読み解いていくと、
こうした日本語の発音ではサタンとサターンと呼ばれることになる悪魔と古代の神との間には、互いによく似通った共通点のようなものを見いだしていくことができると考えられることになります。
旧約聖書における神に戦いを挑む堕天使としてのサタンの位置づけ
冒頭でも述べたように、
ユダヤ教やキリスト教においては、サタン(Satan)と呼ばれる悪魔の存在は、神の権威に対して挑戦を挑み、人間を誘惑して堕落させようと試みる神に対して戦いを挑む敵対者として位置づけられていると考えられることになるのですが、
そうしたユダヤ教やキリスト教の共通の聖典にあたる旧約聖書においては、こうしたサタンと呼ばれる悪魔の存在は、
かつては、セラフィム(熾天使)やケルビム(智天使)などと呼ばれる天使たちと共に、天界において神の前に集う天使の一員として位置づけられながら、
神に対して嘘をつき、人間を悪の道へと導いていく試みに手を染めていくことによって神の怒りに触れて、天界から地上へと落されてしまうことになった堕天使としても位置づけられていくことになります。
ローマ神話のサトゥルヌスとギリシア神話のクロノスの関係とティターン神族とオリュンポスの神々の間で開かれた神々の大戦争
そして、それに対して、
英語において土星を意味するサターン(Saturn)という言葉の直接的な語源となったローマ神話におけるサトゥルヌス(Saturnus)という名の古代の農耕神は、
ギリシア神話において同じく古代の農耕神にして女神ガイアと並んで大地を司る神としても位置づけられているクロノス(Kronos)と呼ばれる神とも同一視されていたと考えられることになります。
そして、
こうしたローマ神話におけるサトゥルヌスと同一視されているクロノスは、ギリシア神話においては、主神ゼウスの父にあたる存在としても位置づけられているのですが、
ギリシア神話においては、こうしたクロノスと呼ばれる神はティターン神族(タイタン神族)と呼ばれる古代の巨神たちを率いて、新しき時代の神々であるゼウスを筆頭とするオリュンポスの神々に対して戦いを挑んでいくことになり、
そうしたティタノマキアとも呼ばれる天界と宇宙全体を揺るがす神々の大戦争の末に、ゼウスに敗れて王権を簒奪されたクロノスは、天界から地上へと落されて、その大いなる力を封じ込めるためにタルタロスと呼ばれる地の底の牢獄へと幽閉されてしまうことになるのです。
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以上のように、
ユダヤ教やキリスト教において神に対して戦いを挑む敵対者として位置づけられているサタン(Satan)の存在と、
英語において土星を意味するサターン(Saturn)という言葉の直接的な語源となったローマ神話におけるサトゥルヌスやギリシア神話におけるクロノスといった古代の神々の間には、
前者のユダヤ教やキリスト教における悪魔にあたるサタンが、唯一神ヤハウェに対して戦いを挑むことによってその罰として堕天使として天界から地上へと落されることになり、その後の世界の終末の最後の審判の時において滅ぼされてしまうことになる存在として位置づけられているのに対して、
後者のサトゥルヌスやクロノスと呼ばれる古代の神々は、ティターン神族と呼ばれる巨神族の復活のために主神ゼウスに対して戦いを挑んでいく道を選んでいったものの、そうした神々の戦いに敗れて、天界から地上へと落されて地の底のタルタロスに幽閉されてしまうことになったと伝えられているというように、
両者の間には、その存在の位置づけのあり方に、互いによく似通った共通点を見いだしていくことができると考えられることになるのです。
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次回記事:土星の最大の衛星タイタンの名前の由来とは?ギリシア神話におけるティターン神族と呼ばれる巨神族と土星の四衛星との関係
前回記事:旧約聖書と新約聖書におけるサタンや悪魔の捉え方の違いとは?実体的な存在としてサタンから比喩や象徴としてのサタンの概念へ、サタン(悪魔)とは何か?⑧
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