古代ローマ暦の1年が1月ではなく3月からはじまる理由とは?ロムルスの父にして三主神の一柱にもあたる軍神マルスとの関係
紀元前46年にカエサルによって現代の暦法へも通じる太陽暦に基づく新たなローマの暦法のあり方であるユリウス暦が定められる100年ほどの前の時代、
紀元前700年から紀元前150年ごろの古代ローマ暦においては、現在の1月にあたる時期ではなく、現在の3月にあたる時期から新しい一年がはじまっていました。
それでは、
こうした古代のローマの暦において、1年が現在の1月ではなく現在の3月からはじまるようになっていたことには、具体的にどのような理由があったと考えられることになるのでしょうか?
ローマの伝説上の建国者であるロムルスの父にしてローマの三主神の一柱としても位置づけられる軍神マルス
紀元前150年ごろまでの古代ローマ暦において、一年のはじめの月として位置づけられていた現在の3月にあたる暦の期間は、
古代ローマにおいては、マルティウス(Martius)、すなわち、ローマ神話における軍神マルスが司る月として位置づけられていました。
そして、
マルスは、古代ローマにおいては、一般的に、軍事と農耕を司る神でとして位置づけられていたと考えられることになるのですが、
古代ローマの建国神話においては、ローマを建国した伝説上の王として位置づけられているロムルスは、そうした軍事と農耕を司る神である軍神マルスを父として、狼の乳によって育てられた人物として描かれていくことになります。
また、
ローマ神話においては、こうしたマルスと呼ばれる神は、ローマ神話の主神にあたるユピテルと、ローマの伝説上の建国者であるロムルスが神格化されたクイリヌスと呼ばれる神の名と並んで、
国家としての古代ローマを守護する三主神のうちの一柱としても位置づけられていたと考えられることになるのです。
古代ローマ暦の1年が1月ではなく3月からはじまっていた理由と軍事と農耕を司る神にあたるマルスとの関係
そして、
現在の3月にあたる時期は、厳しい寒さと雪と氷によって閉ざされた冬の季節が終わりを告げ、気候が温暖になりはじめていくことによって、
農耕の面においては春の種まきの季節を迎え、軍事の面においても行軍の進路を塞いでいた山々の雪と氷がとけて軍隊を自由に動かせるようになる時期を迎えることになるというように、
農耕と軍事の両面において新たな始動がはじまっていく時期であったと考えられることになるため、
ローマ神話において軍事と農耕を司る神として位置づけられていたマルスは、そうした現在の3月にあたる暦の期間を司る神としても位置づけられるようになっていったと考えられることになります。
つまり、そういった意味では、
紀元前150年ごろまでの古代ローマ暦においては、
そうした農耕と軍事という国家としてのローマを支えていた車の両輪にあたるような二つの事業が同時に始動していく時期であると共に、
古代ローマの伝説上の建国者であるロムルスの父にしてローマを守護する三主神の一柱としても位置づけられる軍神マルスが司る月にあたるマルティウス(Martius)すなわち現在の3月にあたる暦の期間が、
国家としてのローマにおける新たな一年のはじまりを飾るのにふさわしい最初の月として位置づけられていくことになったと考えられることになるのです。
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