タンポポが風媒花ではなく虫媒花に分類される具体的な理由とは?風散布種子としてのタンポポの位置づけと英語の表現
タンポポというと、綿毛に包まれた種が風に乗って運ばれていくというように、風を媒介とすることによってふえていく草花といったイメージが強いため、一見すると風媒花に分類される植物として位置づけてみたいような気もすると考えられることになるのですが、
実際の生物学的な分類においては、タンポポは風媒花ではなく虫媒花に分類される植物の種類として位置づけられることになります。
今回の記事では、
タンポポが風媒花ではなく虫媒花に分類されることになる具体的な理由について、風媒花という言葉の英語における表現や、生物学の分野における風媒花と風散布種子という二つの言葉の具体的な意味の違いといった観点から詳しく考えてみたいと思います。
英語における風媒花の表現と花粉の媒介を意味する言葉としての風媒花の定義
まず、
こうした日本語における風媒花という言葉は、英語においては、
anemophilous flower(アネモフィラス・フラワー)、または、
wind pollinated flower(ウィンド・ポリネーテド・フラワー)といった言葉として表現されることになるのですが、
このうち、
前者のanemophilous flowerという言葉は、この言葉自体の語源となる古代ギリシア語における大本の意味においては、「風を愛する者」といった意味を持つ言葉であると考えられることになります。
そして、それに対して、
後者のwind pollinated flowerという言葉は、
英語においてwind (ウィンド)とは「風」を意味する名詞であり、pollinateという動詞の名詞形にあたるpollination(ポリネーション)は「受粉」や「花粉の媒介」のことを意味する言葉であるというように、
それは、「風を媒介として花粉の受粉が行われる花」のことを意味する言葉として捉えることができると考えられることになります。
つまり、
こうした風媒花という言葉は、その英訳にあたるwind pollinated flower(ウィンド・ポリネーテド・フラワー)といった英語の表現においても直接的に示されているように、
それは、風を媒介とすることによってふえていく花や植物のことを意味する言葉であるとはいっても、より正確には、
綿毛に包まれて飛んでいくような種子の媒介のことを意味するのではなく、雄しべから雌しべへと向けて風に乗って飛んでいく花粉の媒介のことを意味する言葉として定義されることになると考えられることになるのです。
虫媒花および風散布種子としてのタンポポの位置づけ
それでは、改めて、
タンポポと呼ばれる植物は風媒花に分類することができるのか?という問題についてですが、
タンポポの場合、前述したように、綿毛の付いた構造をしている種子は風に乗って飛んでいくことになるのですが、
そうした種子ができる前の段階における花粉の受粉については、チョウやハチなどといった昆虫たちによって行われていくことになるため、
冒頭でも述べたように、タンポポは生物学的な分類のあり方においては風媒花ではなく虫媒花に分類されることになると考えられることになります。
ちなみに、
こうした風の力を利用した花粉の媒介のあり方のことを意味する風媒花(ふうばいか)という言葉に対して、風の力を利用した種子の媒介のあり方のことを意味する言葉としては、風散布種子(かぜさんぷしゅし)という言葉も存在するのですが、
こうした風散布と呼ばれる風の力を利用した種子の散布のあり方においては、
タンポポの綿毛などに代表されるような羽根や袋状の形状をした付属物などがついた小さくて軽い種子が空気中に大量に飛散していくことによって、種子の散布が行われていくことになると考えられることになります。
そして、
こうした風散布種子に分類される代表的な植物の種類としては、タンポポのほかにも、ススキやヤナギ、ケヤキやカエデなどといった様々な植物の種類の名が挙げられることになるのですが、
つまり、そういった意味では、
こうしたタンポポと呼ばれる植物は、花粉の受粉形態においては虫媒花に、種子の散布形態においては風散布種子に分類される植物として位置づけるのが、生物学的な意味における最も正確な分類のあり方であると考えられることになるのです。
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次回記事:花粉症の原因となる代表的な植物の種類とは?風媒花に分類される木本植物と草本植物の代表的な種類
前回記事:虫媒花の英語における表現と蟲愛づる姫君との関係、古代ギリシア語を語源とする「虫を愛する者」としての虫媒花のイメージ
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