ビフィズス菌と乳酸菌の違いとは?生物学的な分類や利用できる栄養素の違いなどに基づく四つの主要な特徴と性質の違い
前回の記事で書いたように、乳酸菌と呼ばれる糖類を養分として分解することによって乳酸をつくる働きをする細菌のグループに分類される代表的な細菌の種類としては、
エンテロコッカスやラクトコッカス、ペディオコッカス、リューコノストック、ストレプトコッカス、アエロコッカスといった球形の形状をした乳酸菌の種族にあたる乳酸球菌に分類される細菌の種類と、
ラクトバチルスやビフィドバクテリウムといった棒状の形状をした乳酸菌の種族にあたる乳酸桿菌に分類される細菌の種類の名が挙げられることになるのですが、
このうち、乳酸桿菌に分類される細菌の種類として最後に挙げたビフィドバクテリウムと呼ばれる細菌は、別名ではビフィズス菌とも呼ばれているように、
ビフィズス菌と呼ばれる細菌の種類は、広い意味においては、こうした乳酸桿菌、すなわち、棒状の形状をした乳酸菌の一種として分類されることになると考えられることになります。
しかし、その一方で、
こうしたビフィズス菌と呼ばれる細菌は、日常的な文脈においては、「乳酸菌」と「ビフィズス菌」という別々な細菌の種類として語られることも多い細菌でもあると考えられることになるのですが、
それでは、こうしたビフィズス菌と呼ばれる細菌とそれ以外の一般的な乳酸菌とのあいだには、具体的にどのような特徴の違いを見いだしていくことができると考えられることになるのでしょうか?
放線菌に分類されるビフィズス菌とラクトバチルス目に分類される一般的な乳酸菌の特徴の違い
まず、
こうしたビフィズス菌と呼ばれる細菌とそれ以外の一般的な乳酸菌との細菌としての具体的な特徴の違いとしては、第一に、冒頭でも挙げた
エンテロコッカス属やラクトコッカス属、ペディオコッカス属、リューコノストック属、ストレプトコッカス属、アエロコッカス属、さらには、ラクトバチルス属といったビフィズス菌以外の代表的な乳酸菌の種族はすべて、
生物学や細菌学におけるより上位の区分においては、
ラクトバチルス目と呼ばれる乳酸を生成する球形や棒状といった比較的単純な構造をした細菌のグループに分類される細菌の種族として位置づけられることになります。
それに対して、
ビフィズス菌が分類されることになるビフィドバクテリウム目と呼ばれる細菌のグループは、こうしたラクトバチルス目が含まれる細菌のグループとは全く別の放線菌と呼ばれる別の細菌のグループへと位置づけられていて、
放線菌(ほうせんきん)とは、一言でいうと、細菌が増殖していく際に、カビやキノコのように糸状の菌糸を生成して放射状に伸ばしていくという特徴を持った細菌とカビの中間的な性質を持つ細菌のグループとして位置づけられることになります。
そして、
こうしたビフィズス菌と呼ばれる細菌は、前述したラクトバチルス目に分類されるその他の一般的な乳酸菌とは違い、細菌の増殖の際に、球状や棒状といった単純な形態ではなく、V字型やY字型などへと細胞が枝分かれした複雑な形状を形成していくことになるといった点においても、
こうしたビフィズス菌と一般的な乳酸菌の両者の具体的な特徴の違いを見いだしていくことができると考えられることになるのです。
ビフィズス菌と一般的な乳酸菌の栄養源の違いと腸内細菌叢との関係
そして、さらに、その他にも、
ラクトバチルス目に分類される一般的な乳酸菌の場合は、ブドウ糖や果糖あるいはその両者が結合したショ糖を主成分とする砂糖などといった人間が食べる一般的な食品に含まれている糖類を主な栄養源として増殖していくのに対して、
ビフィズス菌の場合は、そうしたブドウ糖や果糖などといった一般的な糖類はあまり栄養源として利用せずに、乳糖やオリゴ糖などといった糖類を主な栄養源として増殖していくといった点にも、
こうした両者の細菌の具体的な性質の違いを見いだしていくことができると考えられることになります。
そして、
そうした利用されやすい栄養源となる糖類の違いから、
子供や大人の人間の腸内においては、ラクトバチルスやラクトコッカス、エンテロコッカスなどといった、ラクトバチルス目に分類される一般的な乳酸菌が腸内細菌として増えていくことになると考えられることになるのに対して、
乳幼児のなかでも、特に、母乳を与えられている乳幼児の腸内においては、母乳の主成分にあたる乳糖やオリゴ糖が栄養源となることによって、前述したラクトバチルスやエンテロコッカスなどの一般的な乳酸菌ではなく、ビフィズス菌が腸内細菌の大部分を占めるような形で体内の腸内細菌叢が形成されていくことになると考えられることになるのです。
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以上のように、
ビフィズス菌と一般的な乳酸菌の具体的な特徴の違いとしては、一言でまとめると、
①一般的な乳酸菌はすべてラクトバチルス目と呼ばれる細菌のグループに分類されるのに対して、ビフィズス菌は放線菌と呼ばれる細菌とカビの中間的な性質を持つ細菌のグループに分類される。
②一般的な乳酸菌は球形や棒状といった比較的単純な形状をしているのに対して、ビフィズス菌は増殖の際にV字型やY字型などへと細胞が枝分かれした複雑な形状を形成していくことになる。
③一般的な乳酸菌はブドウ糖や果糖などといった一般的な食品に含まれている糖類を主な栄養源とするのに対して、ビフィズス菌は乳糖やオリゴ糖といった主に母乳に多く含まれている糖類を主な栄養源としている。
④子供や大人の人間の腸内においてはラクトバチルスやラクトコッカス、エンテロコッカスといった一般的な乳酸菌が腸内細菌として増えていくのに対して、母乳を飲んでいる乳幼児の腸内においてはビフィズス菌が腸内細菌として増えていくことになる。
といった全部で四つの主要な特徴の違いを挙げていくことができると考えられることになるのです。
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次回記事:ヨーグルトに含まれている代表的な乳酸菌の種類とは?市販のヨーグルト製品に含まれている具体的な乳酸菌の種類
前回記事:乳酸菌に分類される代表的な八つの細菌の種族とは?発酵食品への利用や腸内細菌としての働きを持つ細菌の種類の具体的な特徴
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