ピロリ菌の具体的な特徴とハイルマニ菌などのその他のヘリコバクター属に分類される細菌の種類、らせん菌に分類される代表的な細菌の種類とは?②
前回の記事では、らせん菌と呼ばれる細菌のグループに分類される代表的な細菌の種類のなかでも、一般的な細菌性の急性胃腸炎の原因菌となるカンピロバクターと呼ばれるらせん菌の具体的な特徴について詳しく考察してきましたが、
こうしたらせん菌と呼ばれる細菌のグループに分類される細菌のうち、感染性の胃腸炎の原因となる細菌の種類としては、その他にも、
ヘリコバクターや、ナグビブリオ、コレラ菌といったらせん菌に分類される細菌の種類の名が挙げられることになります。
そこで、今回の記事では、そのうちのはじめに挙げたヘリコバクター属に分類されるらせん菌の種類の具体的な特徴について詳しく考察していきたいと思います。
ピロリ菌の具体的な特徴と胃の内部における持続感染の仕組み
まず、
ヘリコバクター(Helicobacter)とは、幅0.3~0.5マイクロメートル、長さ2~7マイクロメートルほどの大きさをした菌体の両端に数本から数十本程度の鞭毛を持つことによって活発に動き回ることができるグラム陰性の微好気性らせん菌に分類される細菌の種族であり、
こうしたヘリコバクター属に分類される代表的な細菌の種類としては、ピロリ菌やハイルマニ菌といった細菌の種類の名が挙げられることになります。
そして、このうち、はじめに挙げた
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ、Helicobacter pylori)とは、幅0.5マイクロメートル、長さ2.5~5マイクロメートルほどの大きさをした菌体の両端に合わせて8~16本程度の鞭毛を持つグラム陰性の微好気性らせん菌に分類される細菌であり、
人間を中心とする哺乳類の胃の内部以外では増殖することができず、長く生存し続けることもできないため、
主に、幼児期などにおける離乳食の口移しや、汚染された食品の摂取などを通じた経口感染によって、人体に感染することになると考えられることになります。
そして、
こうしたピロリ菌と呼ばれる細菌は、人間の胃の内部において、ウレアーゼと呼ばれる酵素を分泌して、局所的に胃酸を中和することによって胃の内部において増殖していくことができると考えられ、
一度感染すると、一定期間にわたる抗生物質の多剤併用療法などといったピロリ菌の除菌のための特定の治療法を用いない限り、
多くの場合は、そのまま宿主となる人間の生涯にわたって持続的に感染し続けていくことになります。
そして、
そうしたピロリ菌の持続感染においては、通常の場合は自覚症状がほとんどないまま経過していくことになるため、胃の内部における常在菌の一種として位置づけられることもあるのですが、
その一方で、
ピロリ菌の感染者においては、長期間にわたって感染者の慢性胃炎のリスクが高まることも知られているため、
胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍といった炎症性の疾患や、さらには、胃癌などの疾患が引き起こされる危険性を高める可能性がある細菌の種類としても位置づけられることになるのです。
ヘリコバクター・ハイルマニの具体的な特徴と人獣共通感染症の原因菌としての位置づけ
また、
こうしたヘリコバクター属に分類される細菌としては、ピロリ菌だけではなく、人間を含む様々な動物の胃の内部に寄生する様々な細菌の種類が分類されることになり、
そのなかでも、ピロリ菌以外で比較的有名な細菌の種類としては、ヘリコバクター・ハイルマニあるいは単にハイルマニ菌と呼ばれる細菌の種類の名が挙げられることになります。
ヘリコバクター・ハイルマニ(Helicobacter heilmannii)とは、幅0.6~0.7マイクロメートル、長さ3~6.5マイクロメートルほどの大きさをした菌体の両端に合わせて20本程度の鞭毛を持つグラム陰性の微好気性らせん菌に分類される細菌の種族であり、
前述したピロリ菌などと同様に、人間に感染した場合、慢性胃炎や胃潰瘍、胃癌などの原因菌となる可能性がある細菌の種類として位置づけられることになります。
そして、
こうしたヘリコバクター・ハイルマニと呼ばれる細菌は、イヌやネコあるいはウサギなどといった人間以外の動物の胃の内部においても広く生息している人獣共通感染症の原因菌としても位置づけられていて、
ペットの犬や猫などの動物との接触などを介して感染した場合には、ピロリ菌の感染がなくても胃癌などの発症の原因となるケースもあると考えられているため、
そうしたペットなどの動物からの不用意な感染を避けるために、ペットに対するキスやお風呂に一緒に入るといった口や粘膜などが直接触れ合う行為を避けたうえで、排泄物の処理の際には、手袋の着用や入念な手洗いなどによって衛生面に十分に気を付けるというように、
動物との接触が多い人は、特に注意を払うべき細菌の種類としても位置づけられることになると考えられることになるのです。
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次回記事:コレラ菌の具体的な特徴と経口補水液や輸液療法を用いたコレラの治療法の確立、らせん菌に分類される代表的な細菌の種類とは?③
前回記事:らせん菌に分類される代表的な細菌の種類とは?①カンピロバクターの具体的な特徴と細菌性の急性胃腸炎の原因菌としての位置づけ
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