日本国内におけるBSE問題の発覚から収束までの歴史、イギリスでの世界初のBSEの発生からアメリカ産牛肉の輸入再開まで
前回の記事で書いたように、人間の脳組織における神経細胞を構成するタンパク質が病原性プリオンとの接触によって徐々に異常プリオンへと連鎖的に置き換えられていってしまうことによって引き起こされる中枢神経疾患であるクロイツフェルト・ヤコブ病のなかでも、
変異型クロイツフェルト・ヤコブ病と呼ばれるタイプの中枢神経疾患は、狂牛病(BSE)を罹患している牛に由来する異常プリオンに汚染された食品などを食べることによって引き起こされることになると考えられることになります。
そして、
こうした狂牛病(BSE)の感染拡大と人間の病気である変異型クロイツフェルト・ヤコブ病への影響が大きな社会問題となった2000年代初頭に発生したBSE問題においては、
具体的には以下のような形で、そうしたBSE問題の発覚とそうした一連の騒動の収束といった事態が進行していくことになったと考えられることになります。
イギリスにおける世界初のBSEの発生確認と日本国内におけるその後のBSE問題の展開
まず、
こうした狂牛病(BSE)すなわちウシ海綿状脳症と呼ばれる疾患の存在が世界ではじめて確認されたのは、1986年のイギリスにおいてであり、
その後、
1993年に、同じイギリスにおいて世界ではじめて変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の患者の発生が確認され、
その後の調査によって、この病気が狂牛病に感染した牛に由来する異常プリオンの経口摂取によって引き起こされているという疑いが強まったため、
これを皮切りとして、
イギリスを中心とする世界各地において、家畜となる牛への狂牛病の感染拡大と、牛肉などの食品を通じた人間に対する変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の罹患を懸念する動きが広がっていくことになります。
そして、その後、
日本においても、2001年に千葉県で日本初のBSE症例となる狂牛病の発生が確認され、さらに、2003年にアメリカにおいても初のBSE症例が確認されることによって、
同じ2003年に、日本や中国や韓国といった国々において、イギリスやアメリカやカナダといったBSE発生国からの牛肉の輸入が禁止されることになります。
そして、さらにその後、
2005年に、イギリスに滞在経験があったため、日本国内ではなく狂牛病の感染拡大の中心地であったイギリスにおいて感染した可能性が高いものの、
日本国内において初となる変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の患者の発生が確認されることとなり、
こうした1986年のイギリスに端を発したBSE問題は一連の騒動のピークを迎えることになっていったと考えられることになるのです。
アメリカ産牛肉の輸入再開と日本国内におけるBSE問題の完全収束
そして、その後、
狂牛病(BSE)の感染拡大の主要な原因となっていった牛を肥育するための飼料に含まれていた肉骨粉の使用が禁止され、
BSEや変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の原因となる異常プリオンが蓄積される特定危険部位にあたる脳や脊髄や脊柱、眼球や扁桃や腸といった部位を食肉処理がなされる際に確実な除去するといった
狂牛病(BSE)の感染拡大を予防する処置が世界各地で広く実行されていくようになると、
それに伴って、新たな狂牛病の発生件数が大きく減少していくといった変化が現れていくことになります。
そして、そうしたなか、
2006年には、日本においてもアメリカ産牛肉の輸入が完全に再開され、
さらに、その後、
2013年には、日本自身も世界の動物衛生問題を管轄する国際獣疫事務局(OIE)の総会において「BSEリスクを無視できる国」、すなわち、BSEによる感染拡大の問題が完全に収まった清浄国としての認定を受けることによって、
こうした2001年の千葉県における日本初のBSE症例の発生と、2003年のBSE発生国からの牛肉の輸入禁止などに端を発する
日本国内におけるBSE問題についての一連の騒動がその収束を迎えることになったと考えられることになるのです
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次回記事:狂牛病の原因が肉骨粉にあるとされる具体的な理由とは?共食いによる生物濃縮としての狂牛病の感染拡大
前回記事:狂牛病とクロイツフェルト・ヤコブ病の関係とは?牛由来の異常プリオンによって人間の中枢神経疾患が発症する仕組みとは?
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