工業用や家庭用の抗菌剤と医薬品としての抗菌薬の違いと抗菌剤に分類される代表的な化学物質の種類

前回の記事で書いたように、抗菌薬という言葉は、通常の場合、細菌による感染症の治療に使用される薬剤のことを意味する言葉として用いられていると考えられるのですが、

それに対して、

こうした医薬品としての抗菌薬と似通った意味を持つ言葉としては、そのほかにも、工業用や家庭用としての抗菌剤の存在も挙げられることになります。

それでは、

こうした抗菌薬や抗菌剤といった言葉は、それが医薬品のことを意味する言葉として用いられる場合と、工業用や家庭用の製品などにおける抗菌作用のことを意味する言葉として用いられる場合とでは、具体的にどのような意味の違いが生じていくことになると考えられることになるのでしょうか?

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工業用や家庭用の抗菌剤に分類される代表的な化学物質の種類

まず、冒頭でも述べたように、

医薬品としての抗菌薬とは、

抗生物質に代表されるように、特定の種類の細菌のみを標的としてその増殖を抑制していくことによって細菌による感染症の治療に使用される薬剤のことを意味する言葉として定義されることになります。

そして、それに対して、

工業用や家庭用としての抗菌剤の場合には、

製造された工業製品や家庭用品の表面やそうした製品が直接接触する人間の皮膚の表面において、細菌の増殖や発育を抑制するための加工が施された抗菌加工や抗菌作用を持つ化学物質のことを指して、こうした抗菌剤といった表現が用いられることになると考えられることになります。

そして、

こうした工業用や家庭用としての抗菌剤に分類される代表的な抗菌剤の種類としては、

銀イオンや銅イオンといった抗菌性の金属イオンに基づく抗菌作用を持った抗菌剤の種類や、酸化チタンのように紫外線を利用した光触媒の作用によって殺菌処理を行う抗菌剤の種類も挙げられるほか、

化学的な方法を用いた抗菌作用を示す抗菌剤に含まれている化学物質の種類としては、

エタノールイソプロパノールといったアルコール類や、
イソプロピルメチルフェノールチモールといったフェノール類
メチルパラベンエチルパラベンプロピルパラベンといったパラベン類
安息香酸塩サリチル酸などのカルボン酸
トリクロサントリクロカルバン

といった非常に多様な種類の化学物質がこうした工業用や家庭用の抗菌剤として用いられていると考えられることになります。

・・・

ちなみに、

上述した工業用や家庭用としての抗菌剤に分類される多様な種類の化学物質のうち、アルコール類フェノール類に分類される化学物質などは、医薬品の分類においては、抗菌薬ではなく消毒薬に分類されることになるのですが、

そういった意味では、

こうした工業用や家庭用としての抗菌剤の区分には、医薬品における消毒薬の分類に近い性質をもった化学物質が多く分類されているとも考えられることになるのです。

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抗菌薬と抗菌剤はどちらがより適切な表記なのか?

そして、最後に、

こうした医薬品や家庭用品などにおける抗菌薬や抗菌剤といった言葉自体の適切な表記のあり方についても少し触れておくと、

抗生物質のことを抗生剤と表現することもあるように、医薬品としての抗菌薬のことを指して抗菌剤という表記が用いられることもあると考えられることになるのですが、

それに対して、

工業的あるいは家庭的な用途において用いられる抗菌剤の場合には、それは人間の体内において直接的に病気を治療するといった働きを示すような「薬」としての働きをもった化学物質ではないので、

通常の場合、

そうした工業製品や家庭用品に用いられている抗菌剤のことを指して、抗菌薬という表記が用いられることはまずあり得ないと考えられることになります。

・・・

次回記事:抗菌グッズや除菌グッズに含まれる化学物質によって抗生物質が効きにくい耐性菌が生まれる危険性が高まる理由とは?

前回記事:消毒薬と殺菌剤と抗菌剤の違いとは?外用薬や内服薬としての用途の違いと消毒薬と殺菌剤に分類される薬剤の代表的な種類

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