西洋哲学史における知性・理性・感性の序列関係の変化、アリストテレスとカントの哲学における知性と理性の関係の逆転現象

前回の記事で書いたように、知性理性と呼ばれる二つの概念は、古代ギリシアから中世と近代ヨーロッパへと続く哲学史の流れのなかで、

それぞれの概念が表す具体的な意味内容が大きく変化していった概念であると考えられることになるのですが、

こうした西洋哲学史における知性理性そしてさらにそこに感性と呼ばれるもう一つの概念を加えた人間の心における認識能力のあり方を意味する三つの概念における具体的な定義や意味内容の変化のあり方は、

こうした三つの概念同士の序列関係の変化という観点からも捉えられていくことができると考えられることになります。

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アリストテレス哲学における知性>理性>感性の序列関係

まず、古代ギリシア哲学において、

知性理性感性という人間の心における三つの認識能力の枠組みのあり方についての明確な定義が定められるようになったのは、紀元前4世紀のアテナイの哲学者であるアリストテレスの哲学体系の内においてであったと考えられることになります。

そして、

そうしたアリストテレス哲学における認識論の議論においては、人間における知のあり方は、

身体における知覚や感覚を通じて得られる感性的な認識のあり方の上位に位置づけあれる知的な認識のあり方として、演繹的推論を中心とする論理的思考を通じて得られる理性的な認識のあり方が位置づけられていくことになるのですが、

それに対して、

そうした論理的推論を通じて得られる理性的な認識のさらに上には、論理的な推論の過程を経ずに認識の対象となる事物の本質を直接把握していく能動知性と呼ばれるような特殊な知性のあり方を含む神の存在における認識のあり方へも通じる知性的な認識のあり方が位置づけられていくことになります。

つまり、

こうしたアリストテレスの哲学体系の内では、知性理性感性という人間の心における三つの認識能力の関係は、

身体感覚に基づく認識能力である感性の上に、論理的な推論能力である理性が位置づけられ、さらにその上には、神的な認識へと通じる知性の存在が位置づけられていくことになるという

知性>理性>感性という序列関係において捉えられていると考えられることになるのです。

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カントの認識論哲学における理性>知性(悟性)>感性の序列関係

そして、

こうした古代ギリシアのアリストテレスの哲学体系における人間の認識能力の位置づけのあり方に対して、

近代哲学の祖としても位置づけられる18世紀のドイツの哲学者であるカントの認識論哲学の体系の内においては、

まずは、

アリストテレス哲学やその後のスコラ哲学などにおける神的な認識へと通じる事物の本質を直観的に把握していく能動知性知的直観と呼ばれるような認識のあり方は、

少なくとも人間の意識における現実的な認識においては不可能な認識のあり方として否定されたうえで、

そうした人間的な認識能力へと限定された「知性」の働きのあり方は、改めて、「悟性」と呼ばれる概念としても捉え直されていくことになります。

そして、

こうしたカント哲学における一連の認識論の議論においては、人間の意識における客観的な認識のあり方は、

感性における直観を通じて与えられた認識の素材となる多様な表象のあり方が、悟性において様々な概念のあり方へと総合されていったうえで、

さらに、そうした感性と悟性において捉えられた多様な表象のあり方が理性における論理的な推論を通して一つの認識のあり方へと統一されていくという

感性における直観と、悟性における総合、そして、理性における統一という三つの心の働きのあり方における三段階の認識作用によって形成されていくことになると説明されていくことになるのですが、

つまり、そういった意味では、

こうしたカントの認識論哲学の体系の内では、知性理性感性という人間の心における三つの認識能力の関係は、

感性における直観に基づいて、悟性における概念の総合がもたらされ、さらにそれが理性における統一を経ることによって客観的な認識が成立するといように、

理性>知性(悟性)>感性という序列関係において捉えられていると考えられることになるのです。

・・・

以上のように、

西洋哲学史における哲学思想の展開のなかでは、知性と理性と感性と呼ばれる人間の心における認識能力のあり方を意味する三つの概念の序列関係のあり方は、

古代ギリシアのアリストテレス哲学の段階においては、

知性>理性>感性という序列関係において捉えられていたのに対して、

近代ヨーロッパにおけるカントの認識論哲学においては、

理性>知性(悟性)>感性という序列関係において捉えられていく形へと大きく変化していったと考えられることになります。

つまり、そういった意味では、

こうした古代から近代へと至るまでの哲学思想の展開において生じていったと考えられる、人間の心における知性・理性・感性という三つの認識能力の間の関係性の具体的な変化のあり方としては、

知性と理性との関係が逆転していく形でそれぞれの概念の捉え方が変わっていったという点に、その主要な序列関係の変化のあり方を見いだしていくことができると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:知性概念の神の認識の内への上昇と人間の認識の内への没落の歴史、近代哲学における知性概念の没落と自然科学の萌芽

前回記事:知性と理性の違いとは?古代ギリシア哲学とカントの認識論哲学における知性と理性の具体的な意味の違い

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