宇宙原理と人間原理の違いとは?観測者としての人間を原理とする宇宙観と一様的かつ等方的な宇宙の構造を原理とする宇宙観

前回の記事でも書いたように、現代物理学における宇宙論を基礎づけている重要な原理の一つとしては、宇宙原理と呼ばれる基本原理の存在が挙げられることになるのですが、

そうした宇宙原理に基づく宇宙観に対して、それと対称的な関係にある宇宙観を提示していくことになる原理のあり方としては人間原理と呼ばれる基本原理の存在も挙げられることになります。

そこで、今回の記事では、

こうした現代物理学の宇宙論における二つの対極的な宇宙の捉え方である宇宙原理人間原理と呼ばれる二つの基本原理のあり方の具体的な意味の違いについて詳しく考えていきたいと思います。

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宇宙原理における一様的かつ等方的な宇宙の構造を原理とする宇宙観

まず、

冒頭で述べた二つの宇宙の捉え方に関する基本原理のうちの前者である宇宙原理cosmological principle、コスモロジカル・プリンシプル)とは、

20世紀のイギリスの数学者にして天体物理学者でもあったエドワード・アーサー・ミルンEdward Arthur Milne、1896年~1950年)による相対性理論と宇宙論の研究などを通じて1920年代頃までに確立されていった概念であり、

こうした宇宙原理と呼ばれる原理は、一言でいうと、

大局的な観点において宇宙は一様的かつ等方的な存在であり、観測可能な宇宙空間の内部においては特別な場所特別な存在といったものはどこにも存在しないと捉える考え方として定義されることになります。

つまり、

こうした宇宙原理と呼ばれる基本原理においては、現実の宇宙の構造において、

宇宙のどの場所においてもだいたい同じような密度で物質とエネルギーが均質的に分布しているという一様性と、

宇宙の内のどちらの方向を向いても同じような宇宙の姿が観測されるという等方性が成立しているとされることによって、

この宇宙の内には宇宙の中心や端といった特別な位置や方向あるいはそうした特定の地点だけに限られた特別な存在といったものはどこにも存在しないとする客観的な観点に立った宇宙観が提示されていると考えられることになるのです。

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人間原理における観測者としての人間を原理とする宇宙観

それに対して、

こうした二つの宇宙の捉え方に関する基本原理のうちの後者として挙げた人間原理anthropic principle、アンスロピック・プリンシプル)とは、

ブラックホールの特性を解明する研究などの業績で有名な現代のオーストラリアの理論物理学者であるブランドン・カーターBrandon Carter、1942年~)によって、1973年にはじめて提唱された概念であり、

こうした人間原理と呼ばれる原理は、一言でいうと、

人間という存在を一つの原理として位置づけることによって、そうした人間や地球といった宇宙における特別な存在の側から宇宙の誕生やその構造のあり方を解き明かそうとする考え方として定義されることになります。

つまり、

こうした人間原理と呼ばれる宇宙に関する基本原理においては、

人間が現に観測者としてこの宇宙のうちに存在している以上、そうした観測者としての人間の存在を無視して宇宙全体の構造を正確に捉えることは不可能であり、

現実の宇宙の構造のあり方は、そうした人間の存在を生み出すような条件を満たす形に限定されることになるといった議論が示されていくことによって、

観測者としての人間という宇宙における特別な存在者の側から宇宙全体の構造についての探求が進められていくという

ある意味では主観的な観点に立った宇宙観が提示されていると考えられることになるのです。

・・・

以上のように、

こうした宇宙原理人間原理と呼ばれる宇宙に関する二つの基本原理のあり方の

具体的な意味の違いとしては、

宇宙原理においては、大局的な観点において宇宙は一様的かつ等方的な存在であり、観測可能な宇宙空間の内部においては特別な場所特別な存在といったものはどこにも存在しないとされたうえで、

 そうした一様的かつ等方的な宇宙の構造の側から人間や地球といった存在を含む宇宙におけるあらゆる存在のあり方が説明されていくことになるのに対して、

人間原理においては、人間という存在を一つの原理として位置づけることによって、現実の宇宙の構造のあり方は、そうした人間の存在を生み出すような適切な条件を満たす形に限定される必要があるといった考え方が示されたうえで、

そうした観測者としての人間や地球といった特別な存在の側からそのほかのあらゆる存在を含む宇宙全体の構造のあり方が探求されていくことになる

というような宇宙の探求のあり方の方向性の違いといった点に、両者の概念の間の主要な相違点を見いだしていくことができると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:宇宙論における弱い人間原理とは何か?ディラックの宇宙論における大数仮説とロバート・ディッケの宇宙の年齢の議論との関係

前回記事:宇宙の果ては存在するのか?③主観的な宇宙の果てに対応する主観的な宇宙の中心の位置づけ

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