宇宙に中心が存在しない理由とは?②宇宙背景放射の等方性に基づく観測可能な現在の宇宙の内部における中心の非存在の証明

前回の記事では、ビッグバン理論に基づく膨張宇宙論においては、宇宙誕生の源となったビックバンの開始地点としての宇宙の中心は、現在の宇宙全体と一致することになるという観点から、

観測可能な宇宙空間の内部においては、どこか特定の地点宇宙の中心として位置づけることはできないということを説明してきました。

そして、

こうした現代物理学に基づく宇宙論において、宇宙に中心が存在しないとされる理由については、

地球上からの観測において、宇宙のあらゆる方向から一様に等方的に観測することができる宇宙背景放射と呼ばれるマイクロ波の存在を例に挙げることによって、

現在の観測可能な宇宙空間の内部においては、宇宙の中心や端といった特別な位置や方向といったものはどこにも存在しないということを説明するより精緻な議論を展開していくことが可能となると考えられることになります。

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ビックバン後の初期の宇宙におけるインフレーションと宇宙背景放射の関係

宇宙背景放射あるいはより正確には宇宙マイクロ波背景放射(cosmic microwave background、CMB)とは、

地球上からの観測において、宇宙の全方位から観測される絶対温度約3度の黒体放射に相当する電磁エネルギーのことを意味する言葉であり、

こうした宇宙空間を全方位において満たしている宇宙背景放射は、かつてビックバンが起こった後の初期の宇宙において放出された光子の名残が観測されているものであるということが分かっています。

現代の宇宙論においては、

ビックバン後の初期の宇宙においては、宇宙のインフレーション(コズミック・インフレーション、cosmic inflationと呼ばれる宇宙空間の指数関数的な急膨張が起こったと考えられていて、

こうした初期の宇宙におけるインフレーションとその後の現在の宇宙にまで続く宇宙空間の膨張によって、地球からは直接観察できないような極めて遠方に位置する宇宙空間からは、

現在になっても、そうしたビックバン後の初期の宇宙から発せられた光子が遅れて地球上へと到達し続けていると考えられることになるのです。

宇宙背景放射の源にある幻の宇宙の中心を追い求める宇宙の旅の行く末

そして、逆に言えば、

このように、現在の地球においてもかつてのビックバン後の初期の宇宙の名残でもある宇宙背景放射が実際に観測されているということは、

現在の宇宙においてもそうしたビックバンの開始地点であるような特定の地点としての宇宙の中心が実際に存在するという立場に立つ場合、

そうした宇宙の起源となったビックバン後の宇宙の名残でもある宇宙背景放射がやってくる方角というのは、すなわち、

宇宙誕生の大爆発であるビックバンが生じた宇宙の中心が存在する方向であるとも考えられることになり、

そうした宇宙背景放射がやってくる方角のもとをたどっていけば、いずれはそうしたビックバンの開始地点としての宇宙の中心へと行き着くことになるとも考えられることになります。

実際に、

遠方にある宇宙の姿を際限なくどこまでも観測していくことができるとするならば、そうした宇宙背景放射がやってくる方角の行き着く先には、ビックバン直後の宇宙の姿を観測することはできるかもしれないとは考えられるのですが、

そうして観測される原初の宇宙の姿は、その宇宙の領域が地球からあまりに遠くにかけ離れた場所に位置するために、実際にはその宇宙の100億年以上も前の大昔の姿が遅れて観測されているのに過ぎないと考えられることになります。

したがって、

仮に、ハイパースペース航法のような超光速航行の技術を持った未来人が、宇宙背景放射の源にあるビックバンの起源となる宇宙の中心の場所を目指したとしても

そうしてやってき地球からの観測においてビックバンが起こった起源となる宇宙の中心となるはずの場所には、我々が住んでいる世界とまったく同じような何の変哲もない現在の宇宙の姿が目の前に広がることになると考えられることになります。

そして、その時には、

そうした超光速航行の際に過ぎ去ってしまった自分たちの出発点であった地球が位置する方向からも宇宙背景放射が観測されることになり、

今度はそうして観測される宇宙背景放射の源にある宇宙の中心はむしろ自分たちが後に残してきた地球が位置する方角であったのかと思い直して、新たな旅の支度をするよう迫られていくことになると考えられることになるのです。

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宇宙背景放射の等方性に基づく観測可能な現在の宇宙の内部における宇宙の中心の非存在の証明

以上のように、

地球上における宇宙背景放射の観測からは、そうした宇宙背景放射がやってくる源にビックバンの開始地点としての宇宙の中心があるという考えが導かれることになるとも考えられることになるのですが、

そうした宇宙背景放射の源にあるはずの幻の宇宙の中心を目指して宇宙旅行を繰り返しても、目指していたはずの宇宙の中心はその場所に行き着くと常に蜃気楼のように消え去ってしまい

光速を超えて宇宙を旅するような未来人の超科学技術をもってしても、永遠に宇宙の中心へと実際に到達することはできないと考えられことになります。

つまり、そういった意味では、

このように地球上からの観測において、宇宙背景放射と呼ばれるビックバン後の初期の宇宙に由来する電磁エネルギーが宇宙の全方位から等方的に観測されるという物理学的な事実からは、

そうした宇宙背景放射の源にあるはずのビックバンの開始地点としての宇宙の中心が位置する方向も、宇宙におけるすべての方向と一致してしまうということが意味されることになると考えられ、

別な言い方をするならば、

そうした宇宙の内部においては、宇宙におけるすべての方向に位置するすべての地点が別のある場所からは宇宙の中心として観測されることになるという意味において、

やはり、前回述べた結論と同じように、

観測可能な現在の宇宙の内部においては、宇宙に中心と呼びうるような特別な地点は存在しないと結論づけることができると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:宇宙に中心が存在しない理由とは?③すべての地点は宇宙の端であると同時に宇宙の中心でもある

前回記事:宇宙に中心が存在しない理由とは?①ビックバンの開始地点としての宇宙の中心の定義と特定の場所としての宇宙の中心の不在

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