フリーメーソンとは何か?魚ではなく人間をとる漁師、石ではなく人間の魂を磨く石工、近現代における代表的なオカルト思想②

前回書いたように、「隠された真理や知識を明らかにする」という言葉自体の本来の意味におけるオカルティズムの流れをくむ近現代におけるオカルト思想の代表的な例としては、

中世ヨーロッパにおける錬金術や、キリスト教のグノーシス主義、ユダヤ教におけるカバラ思想などの宗教的な神秘主義を思想的な背景とすることによって17世紀のドイツを中心として広がっていった薔薇十字団と呼ばれる秘密結社の名を挙げることができると考えられることになるのですが、

そうしたドイツにおける薔薇十字団よりも、さらに、大規模で国際的な秘密結社の例としては、18世紀のイギリスを中心として広がっていったフリーメーソンと呼ばれる秘密結社あるいは世界主義的な友愛団体の名を挙げることができると考えられることになります。

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フリーメーソンの起源と神秘主義・啓蒙主義的な秘密結社への展開

フリーメーソンとは、現在においても世界中に約600万人もの会員を持っているとされる世界最古にして最大の国際的秘密結社にあたる団体であり、

その団体としての主要な理念は、会員同士の相互的な友愛自らの精神の向上、社会的な慈善事業と博愛を通じた国際親善と世界平和の実現を目的とする世界主義的で人道主義的な友愛の精神の内に求められることになると考えられることになります。

こうした日本語の表記におけるフリーメーソンという言葉は、英語における正式な表記のあり方に従うと、フリーメイソンリー(Freemasonryとした方がより正しい表記と発音のあり方となると考えられることになるのですが、

こうしたフリーメーソンあるいはフリーメイソンリーの活動の大本の起源は、中世のヨーロッパにおいて教会や城塞などの建築を担っていた建築家や、そうした教会やお城の中に収める石像などの彫刻を担っていた石工(いしく)たちの同業組合にあると考えられることになります。

そして、

そうした石工を中心とする中世の職人たちの同業組合が、組合に所属する会員たちが集会を営むための場所として、ロッジと呼ばれる集会所を保有するようになっていき、

そうしたロッジにおいて、会員同士の精神的な結合をさらに高めてくために、古代思想に基づく象徴的な儀式などが営まれるようになっていくことによって、神秘主義や啓蒙主義的な傾向を強めていったのが、現代へとつながるフリーメーソンと呼ばれる秘密結社のはじまりであったと考えられることになるのです。

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魚ではなく人間をとる漁師と、石ではなく人間の魂を磨く石工

そして、その後、

こうした啓蒙主義的な思想運動としてのフリーメーソンのうちには、

キリスト教はもちろん、ユダヤ教における神秘主義思想であるカバラや、神の存在を人間の理性によって解き明かそうとする理神論の思想、さらには、前回取り上げた薔薇十字団における思想運動なども取り入れられていくことになり、

こうしたフリーメーソンの思想においては、その秘密結社の基本理念である友愛の精神に基づいて、こうした多様な分野からの思想が幅広く取り入れていくことによって、

思想・宗教・結社の自由といった人間の自由と尊厳に重きを置きながら、自らの精神の向上世界全体の進歩と平和を目指して導いていくという思想傾向が形成されていくことになっていったと考えられることになります。

フリーメーソンもその思想から多大な影響を受けているキリスト教の聖典である聖書においては、

それまで湖で魚をとる漁師として働いていたシモンアンデレの二人の前で、彼らを自らの弟子とするために、

「わたしについて来なさい。人間をとる漁師にしよう」(マルコによる福音書1章17節)と語るイエスの言葉が書かれていますが、

そういった意味では、こうしたフリーメーソンにおける石工の同業組合から国際的な秘密結社への展開のあり方は、

それまで石を削り磨いて彫刻を創り上げる石工として働いてきた職人たちが、石ではなく人間の魂を磨き上げていく石工として生きていく新たな使命を見いだしていくことによって生じていった思想運動として捉えていくことができると考えられるかもしれません。

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次回記事:フリーメーソンと薔薇十字団の関係とは?テンプル騎士団と薔薇十字団のフリーメーソンの上位階級における位置づけ

前回記事:薔薇十字団とは何か?中世ヨーロッパにおける錬金術とサンジェルマン伯爵との関係、近現代における代表的なオカルト思想

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