フロイトの心理学における三つの性格類型とは?口唇期的性格・肛門期的性格・エディプス期的性格の具体的な特徴
前回書いたように、フロイトの心理学においては、人間におけるあらゆる生命活動と心的活動の原動力となる根源的な心的なエネルギーであるリビドーの発達のあり方は、
口唇期・肛門期・エディプス期・潜伏期・性器期と呼ばれる五つの発達段階へと区分されていくことになります。
そして、リビドーのあり方を基礎づけている基本的な性質は、こうした五つの発達段階のうちのはじめの三つの段階である口唇期と肛門期とエディプス期の間にすべて獲得されていくことになると考えられることになるのですが、
フロイトの心理学においては、こうしたリビドーの基礎的な性質が獲得されていくリビドーの三つの発達段階の区分に対応していく形で、人間の性格のあり方は大きく分けて、
口唇期的性格、肛門期的性格、エディプス期的性格と呼ばれる三つの性格類型へと分類されていくことになります。
口唇期的性格とは何か?社交的な楽天家と抑うつ的で猜疑心の強い性格
まず、
こうしたフロイトの心理学における三つの性格類型のうちのはじめに挙げた口唇期的性格(oral stage personality)とは、
その名の通り、幼少期において獲得されるリビドーの発達段階のうちの最初の段階である口唇期におけるリビドーの性質が強く体現された性格類型となっていて、
口唇期におけるリビドーの中心である口やくちびるが主体となる欲求に対する思い入れが強いことから、おしゃべりや食いしん坊、甘いもの好き、さらには、愛煙家や酒飲みといった性質も口唇期的性格を示す特徴の一つとして分類されることになります。
また、
こうした口唇期的性格においては、そうした口唇期に対する強いこだわりや執着が、その段階における欲求の充足が十分に満足のいく快いものであったために生じているのか、
それともその段階における欲求の充足が不満足で不快なものであったためその代償として執着が生じているのか、という違いに応じて、さらに二通りのパターンへと分類されていくことになり、
前者のように、そうした口唇期における欲求の肯定的な側面が強く現れる場合には、社交性が高く周りの人々とすぐに打ち解けることができる一方で、
何か問題が起こった場合でもきっと最後には運が向くか周りの人が手助けしてくれてうまくいくはずと考える楽天主義や周囲の人々に対する依存心の強い性格の持ち主となる傾向が強くなるのに対して、
後者のように、口唇期における欲求の否定的な側面が強く現れる場合には、他者に対する根本的な不信から、抑うつ的で猜疑心の強い性格の持ち主となる傾向が強くなるというように、
同じ口唇期的性格のうちにおいても、相反的な性格傾向が生じていくことになると考えられることになるのです。
肛門期的性格とは何か?几帳面な完璧主義者と頑固で強情な性格
そして、その次に挙げられた肛門期的性格(anal stage personality)とは、
幼少期において獲得されるリビドーの発達段階のうちの二つ目の段階である肛門期におけるリビドーの性質が強く体現された性格類型となっていて、
肛門期におけるリビドーの中心である肛門や泌尿器における生理的な欲求のコントロールに対する執着が強いことから、そうした肛門期における排泄のコントロールに対する欲求が、現実における社会生活のなかでは、自分が保持しているお金や時間の管理に対する執着心へと向けられていくことによって、
良く言えば倹約家、悪く言えばケチな性格の持ち主となる傾向が強く現れていくことになると考えられることになります。
そして、
こうした肛門期における欲求の肯定的な側面が強く現れる場合には、規律や節制を重視することから、社会のルールに従順に従って規律正しく生きようとする几帳面な性格や完璧主義の持ち主となる傾向が見られることになるのですが、
それに対して、
こうした肛門期における欲求の否定的な側面が強く現れる場合には、両親の躾や教え、社会のルールなどに反してでも自分の意志やルールを突き通そうとうする頑固で強情な性格が形成されていくことになり、
そのような場合には、周囲の人々からは、むしろ、社会のルールをきちんと守ろうとしないルーズでだらしない人物として認識されることになる場合もあると考えられることになるのです。
エディプス期的性格とは何か?積極的なリーダーと自己顕示欲と虚栄心
そして、最後に挙げたエディプス期的性格(Oedipus stage personality)あるいは男根期的性格(phallic stage personality)と呼ばれる性格類型は、
幼少期において獲得されるリビドーの発達段階のうちの最後の段階にあたるエディプス期(男根期)におけるリビドーの性質が強く体現された性格類型となっていて、
エディプス期において現れることになる原初的な性愛感情をめぐる心理的な葛藤と抑圧の経験から、自分自身が持つ男性性や女性性といった性別的な特徴に強い執着やこだわりを持つ人格が形成されていくことになると考えられることになります。
そして、
こうしたエディプス期における原初的な性愛欲求がストレートに表面化することによってその肯定的な側面が強く現れる場合には、自分自身が持つ男らしさや女らしさといった性的な性質を強調して、より男性的・女性的な振る舞いを見せるようになるのに対して、
こうしたエディプス期における原初的な性愛欲求が強く抑圧されることによってその否定的な側面が強く現れる場合には、そうした自分自身が持つ性的な性質を否定してなるべく性的な要素の目立たない振る舞いを見せるか、あるいは、自らが有する本来の性別とは反対の性別の性質を強調するような振る舞いを見せるようになると考えられることになるのですが、
いずれの場合においても、こうしたエディプス期的性格においては、
自分自身が持つ性的な要素を強調あるいは否定することによって自らの心の内にある葛藤や弱さを否定しようとする傾向が強まっていくことによって、
積極的でリーダーシップを発揮する傾向などが強い一方で、自己顕示欲や虚栄心、他者に対する攻撃性や支配欲が強い人格が形成されていくことになると考えられることになるのです。
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以上のように、
フロイトの心理学においては、人間の性格分類のあり方は、幼少期におけるリビドーの三つの発達段階のあり方に対応していく形で、
口唇期的性格、肛門期的性格、エディプス期的性格と呼ばれる三つの性格類型へと区分されていくことになり、それぞれの性格類型における具体的な特徴について一言でまとめると、
口唇期的性格の特徴としては、おしゃべりや食いしん坊、甘いもの好き、愛煙家や酒飲みといった傾向が挙げられ、社交性が高く楽天的で依存心の強い性格となるか、その反対に、抑うつ的で猜疑心の強い性格となる傾向が見られるのに対して、
肛門期的性格の特徴としては、お金や時間に対する執着心が強く、倹約家やケチといった傾向が見られるほか、几帳面な性格や完璧主義、自分の意志を突き通そうとうする頑固で強情な性格といった点が挙げられ、
エディプス期的性格の特徴としては、男性性や女性性といった性別的な特徴に強い執着やこだわりを持ち、積極的でリーダーシップを発揮する傾向が強い一方で、自己顕示欲や虚栄心、他者に対する攻撃性や支配欲が強い傾向があるといった点を挙げることができると考えられることになるのです。
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次回記事:フロイトの弟子ライヒのリビドーの性的側面が強調された性格分類とは?衝動的性格・神経症的性格・性器期的性格の具体的特徴
前回記事:フロイトの心理学におけるリビドーの五つ発達段階とは?口唇期・肛門期・エディプス期・潜伏期・性器期の特徴のまとめ
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