アシモフの「銀河帝国興亡史」とカードの『エンダーのゲーム』における宇宙観の違いとは?人類以外の知的生命体の存在の可否

前回の記事で書いたように、

アイザック・アシモフ「銀河帝国興亡史」シリーズの集大成として位置づけられる作品である『ファウンデーションの彼方へ』Foundation’s Edgeにおいて登場するガイア(Gaiaと、

オースン・スコット・カード『エンダーのゲーム』Ender’s Gameにおいて登場するハイブマインド(Hive Mindという二つのSF小説のなかに登場するある種の集団意識のあり方においては、

そうしたそれぞれの小説における種族全体や一つの惑星の生態系全体へと広がる集合的な意識の捉え方に、微妙な違いが見られると考えられることになります。

そして、

こうした両者のSF小説の間には、こうしたガイアハイブマインドと呼ばれる集合的な意識についての個別の概念における性質の違いだけではなく、

そもそも、それぞれの作品の根底にある全体的な宇宙観においても大きな違いを見いだすことができると考えられることになります。

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「銀河帝国興亡史」と『エンダーのゲーム』における宇宙観の違い

まず、

アシモフの「銀河帝国興亡史」においては、銀河系の内に存在するとされる生命が生存可能な数多の惑星のうちに存在する数多くの生物たちのなかで、

知的生命体とみなせる生物は人類だけであるとされる設定となっていて、

あくまで、そうした人類同士の抗争という枠組みの内部でおいてのみ、広大な銀河系における帝国と諸国家

そして、第一ファウンデーション第二ファウンデーションガイアといった諸勢力の間での興亡が繰り広げられていくことになります。

それに対して、

カードの『エンダーのゲーム』における銀河系の内部には、人類と自らの種族の生存をかけて争うことになる人類以外の知的生命体として、

バガー(bugger)と呼ばれる種族全体を統括するハイブマインド(集団知性)を持った知的生命体の種族が登場するほか、

こうした『エンダーのゲーム』の続編にあたる作品である『死者の代弁者』Speaker for the Deadにおいては、さらに、

ピギー(piggy)と呼ばれる動物の生と植物の生が一体となり、名誉ある殺害によって動物としての生命の死を迎えることが植物としての新たな段階における生へと直結するという形で両者の生命の間を流転していく地球外知的生命体が登場することになります。

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広大な銀河系の内に知的生命体は人類しか存在しないとされるアシモフの「銀河帝国興亡史」における特殊な宇宙観のあり方

以上のように、

アイザック・アシモフ「銀河帝国興亡史」と、オースン・スコット・カード『エンダーのゲーム』における宇宙観の違いとしては、

アシモフの「銀河帝国興亡史」における『ファウンデーションの彼方へ』までの宇宙観においては、

広大な銀河系の内に存在する知的生命体は人類だけであるとされていて、宇宙の内に存在するそのほかの地球外知的生命体の存在自体が基本的には否定されているのに対して、

カードの『エンダーのゲーム』とその続編にあたる『死者の代弁者』における宇宙観においては、

広大な銀河系の内部には、人類だけではなく、人間とは異なる様々な性質と特徴を持った地球外知的生命体の種族が複数登場するといった点において、

両者のSF作品における宇宙観の大きな違いを見いだすことができると考えられることになります。

・・・

そして、

『スター・ウォーズ』「エイリアン」シリーズ、E.T.といった、より著名なSF作品などにおける宇宙観を例として挙げてみてもわかる通り、

近現代のSF作品における宇宙観としては、一般的には、広大な宇宙や銀河系の内部における地球外知的生命体の存在を暗黙の前提としたうえで、

そうした人類と地球外知的生命体との間の交流や抗争を通じて物語が展開していくことなるのが一般的な話の流れであると考えらられることになりますが、

そういう意味では、

こうしたアシモフの「銀河帝国興亡史」シリーズの『ファウンデーションの彼方へ』までの作品において示されている

広大な銀河系の内に、知的生命体は人類しか存在しないとされたうえで、そうした人類同士の諸勢力の抗争においてのみ、広大な宇宙の領域の内部での銀河帝国と辺境諸国の興亡が繰り広げられていくことになるという宇宙観の方が、

現代においては、かなり特殊な宇宙観をしているとも考えられることになるのです。

・・・

次回記事:アシモフの銀河帝国興亡史において人類しか知的生命体が登場しない理由とは?①「人類の宇宙」として宇宙観

前回記事:「銀河帝国興亡史」のガイアと『エンダーのゲーム』のハイブマインドの違いとは?両者の概念の間に存在する共通点と相違点

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