王蟲の血が青い本当の理由とは?旧世界の軛から王蟲を解放し、青き清浄の世界を蟲たちへと明け渡す解放者としてナウシカの姿

前回書いたように、映画版の『風の谷のナウシカ』や、その原作にあたる漫画版の『風の谷のナウシカ』前半部分までの物語の中では、

王蟲は、腐海の森の番人であると同時に、人々を青き清浄の地へと導く浄化と平和の使者のような存在としてが位置づけられて、

王蟲の眼と血の青い色も、そうした平和と神聖さを象徴する色として捉えられていると考えられることになります。

しかし、その一方で、

漫画版の『風の谷のナウシカ』の後半部分の物語の中では、

そうした前回取り上げたようなものとは全く異なる別の観点から、王蟲の血が青い色をしているということについてのさらに深い本当の理由が解き明かされていくことになるのです。

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新世界の人類たちの卵が流す「墓所」の血と同じ色をした王蟲の青い血

漫画版の『風の谷のナウシカ』最終章において、ナウシカは、

彼女に付き従う世界の裁定者である巨神兵と共に、土鬼(ドルク)帝国聖都シュワの内奥部に存在する旧世界の人類が残した高度な文明の技術が封印されている場所である「墓所」と呼ばれる黒い巨大な箱型の施設の内部へと入っていき、

そこで、腐海の森王蟲、そして、汚染された世界に適応したナウシカも含む現在の人類すべてを造り上げた存在である旧世界の賢者たちの影たちと対峙していくことになります。

そして、その場面では、

確かに、王蟲が番人となって守っている腐海の森の働きによって汚染された世界の浄化は数千年の時をかけて徐々に進んで行くことになり、その先には、青き清浄の地が広がる新世界が到来することになるのですが、

そうした清浄な新世界において世界を統べるように定められているのは、汚れた世界に生きている現在の人類ではなく

清浄な世界にあわせる形で、怒りや争いを好む心が消し去られ、穏やかで賢い精神だけが残されるように心までもが人為的に造り変えられた新人類たちであって、

汚染された世界に適応してしまった現在の人類たちは、そうした清浄な新世界の到来と同時に、もはや腐海の森と同じく用済みとなり、滅び去っていくことになる無意味な存在であるという、この物語における最大の秘密が解き明かされていくことになります。

そして、最終的に、ナウシカは、

現在の汚染された世界の内で、必死に生きている現在の人間たちを、そうした清浄な新世界を造り上げるための踏み台となる道具としてしか見ていない旧世界の賢者たちの計画を、生命自体を愚弄する醜い行いであるとして真っ向から否定したうえで、

ナウシカは、現在の世界の創造主であるともいえる「墓所」に対して抗い

そうした旧世界の賢者たちの「墓所」を、来たるべき新世界のために準備されていた新しい人造人間たちの卵もろとも、巨神兵が放つ裁きの炎によって焼き払い、そのすべてを破壊し尽くしてしまうことになるのです。

そして、その後、

この物語のエピローグの場面においては、ナウシカと、物語の終盤から彼女と共に精神の旅を続けていたセルムという名の森の人との間に交わされた以下のような意味深な言葉を残して、物語は終幕を迎えることになります。

・・・

ナウシカ「王蟲の体液と墓のそれとが同じだった。

セルム「ナウシカ。それは私とあなただけの秘密です。生きましょう。すべてをこの星に託して。共に。」

ナウシカ「はい。」

ナウシカ「さあ、みんな。出発しましょうどんなに苦しくとも。」「生きねば。」

(『風の谷のナウシカ』第七巻、222~223ページ。)

・・・

つまり、

ナウシカが、この物語の最後に残したこうした言葉においては、

ナウシカが旧世界の賢者たちの計画を巨神兵の炎によって打ち砕いた、その時に流された「墓所」の血、すなわち、青き清浄の地に生み落とされるはずであった新世界の人類たちの卵が壊されたときに流れ出た血の色が、

腐海の森の番人である王蟲の血の色とまったく同じ青い色をしていたということが語られていると考えられることになるのです。

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旧世界の軛から王蟲を解放し、青き清浄の世界をその造り手である蟲たち自身の手へと明け渡す解放者としてナウシカの姿

以上のように、

王蟲の青い血の色は、新世界を統べるべき存在として心まで造り変えられていた新人類たちに流れる血の色とまったく同じ青い色をしていたと考えられることになるのですが、

そういう意味では、

こうした王蟲と呼ばれる存在は、旧世界の賢者たちのもともとの計画においては、腐海の森に生きる他の蟲たちと同様に、これまでの生態系の内にある通常の生物たちとは異なる異形の姿をした生物でありながら、

数千年の浄化の時を経たのちに到来することになる新世界である青き清浄の地においても適応して生きていくことができ

そうした新世界において、心までもが人為的に造り変えられた新たな青い血をした人類たちに、下僕のような形で仕える番人としての役割を与えられた存在であったとも捉えることができると考えられることになります。

そして、

自分たちの目的に合わせて、人間の体だけではなく、その心自体も自由に造り変えてしまおうとしていた旧世界の傲慢な創造主たちに対して抗い、その計画を打ち砕いたナウシカは、

そうすることによって、清浄ではあるが醜い心を持った旧世界の賢者たちの計画によって定められた旧世界の軛(くびき)から王蟲を解放し、

王蟲をただの森の番人ではなく、やがて来たるべき青き清浄の地を統べることになる森の王という真に神聖なる存在へと高めていくことによって、

数千年ののちに創り上げられることになる腐海の森とそこに生きる蟲たちが創り上げる青き清浄の世界を、

そうした新しい世界の造り手である蟲たち自身の手へと明け渡した解放者であったとも解釈することができると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:『風の谷のナウシカ』と「虫愛ずる姫君」の共通点とは?①漫画版のあとがきにおけるナウシカと虫愛ずる姫君の関係性の記述

前回記事:なぜ王蟲の眼と血は青い色をしているのか?人々を青き清浄の地へと導く浄化と平和の使者としての王蟲の存在

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