ジャメブ(未視感)とは何か?フランス語における語源と日常表現としてのjamais vu

自分にとって未知の経験であるはずの認識を既知の認識であると感じてしまう現象のことを指してデジャブ(既視感)という言葉が用いられることがありますが、

それに対して、デジャブと反対に、自分にとって既知の認識であるはずの見慣れた事柄を初めて経験する未知の認識であるように感じてしまう現象のことを指す言葉としてジャメブ未視感という表現が用いられることがあります。

ジャメブという言葉は、その対義語であるデジャブと共に、もともとはフランス語に語源を持つ言葉であると考えられることになるのですが、

ジャメブ(未視感)とは、フランス語の原義においては、具体的にどのような意味をもった言葉であると考えられることになるのでしょうか?

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jamais vuという言葉のフランス語の語源と個々の単語の具体的な意味

ジャメブ未視感という言葉のもともとの語源は、フランス語jamais vuという表現に求められることになりますが、

フランス語でjamais (ジャメ)とは、「決して~ない」「一度も~ない」といった意味を表す副詞であり、英語でいうとnever(ネバー)にあたる単語ということになります。

それに対して、

jamais vuという表現の後半部分にあたるvu(ヴュ)の方は、フランス語で「見る」を意味する動詞であるvoir(ヴォワール)過去分詞形にあたる単語であり、

vu(ヴュ)という一語で「見られた」あるいは「見られたもの」を意味する単語ということになります。

したがって、

jamais vuジャメ・ヴュという表現全体としては、それは「一度も見られていないもの」「未だ見られていないもの」すなわち未視感のことを意味する表現として解釈することができると考えられることになるのです。

「ジャメヴュ」と「ジャメヴ」と「ジャメブ」のどれが一番正しい表記?

ちなみに、ここでは、フランス語jamais vuという表現に対応するカタカナ表記として、ジャメヴュという表記を用いましたが、

フランス語では、jamais vuという表現の最後の部分に位置する単母音のu発音記号のy(ュ)に近い音声として発音されることになるので、

この表現全体に対するカタカナ表記としては、「ジャメブ」と書くよりも、「ジャメヴュ」と書く方がよりフランス語における発音に即した表記であると考えられることになります。

ただし、

同じくフランス語を語源とする表現であり、既視感を意味するdéjà vuという言葉が、フランス式の「デジャヴュ」という表記ではなく、英語式の発音で「デジャブ」あるいは「デジャヴ」などと表記されることも多いように、

それと同様に、その対義語であるjamais vuという言葉についても、それを英語式の発音で「ジャメブ」あるいは「ジャメヴ」と表記することも間違った表記ではないと考えられることになります。

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フランス語の日常表現におけるjamais vuの意味

もう一つ、ちなみにですが、

ジャメブ(未視感)という概念の直接的な語源となったフランス語jamais vuという表現自体は、別に、「未視感」と呼ばれる特殊な認識のあり方のことを意味する時だけに限定して用いられる表現というわけではなく、

それは、否定詞ne(ヌ)と共に用いられる形で、「いままでに見たことがない」「まったく会ったことがない」といったことを意味する表現として一般的な日常会話においても用いられる表現ともなっています。

例えば、フランス語で、

Depuis, je ne l’ai jamais vu.(ドュピュイ・ジュ・ヌ・レ・ジャメ・ヴュ

と言えば、「それ以来、私は彼とはまったく会っていない」といった意味になりますし、

Je n’ai jamais vu ça.(ジュ・ネ・ジャメ・ヴュ・サ)n’否定詞neの省略形

と言えば、「こんなのは見たことがない」「これは素晴らしい」といったことを意味する慣用表現ということになります。

・・・

以上のように、

自分にとって既知の認識であるはずの見慣れた事柄を初めて経験する未知の認識であるように感じてしまう現象のことを意味するジャメブ(未視感)という概念は、

その語源であるフランス語の原義においては、「決して~ない」「一度も~ない」といった意味を表す副詞jamais (ジャメ)と、「見る」を意味する動詞voir(ヴォワール)過去分詞形vu(ヴュ)が結びついてできた言葉であり、

jamais vu(ジャメ・ヴュ)という表現全体としては、「一度も見られていないもの」「未だ見られていないもの」を意味することになります。

そして、こうしたフランス語におけるjamais vu(ジャメ・ヴュ)という表現自体は、「いままでに見たことがない」「まったく会ったことがない」といったことを意味するフランス語の日常表現としても用いられる言葉であると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:デジャブ(既視感)とジャメブ(未視感)の意味の違いと共通点、メタ感覚に生じる認知感覚の異常としての両者の概念

関連記事:デジャブとデジャヴュはどちらが正しい?英語とフランス語の発音の違いとフランス語の語源

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