オーバーシュートとアウトブレイクの違いとは?英語の語源と感染症医療の疫学用語としての二つの言葉の具体的な意味の違い
医学や感染症医療の分野において、突発的に感染者数が増加していく現象のことを意味する疫学用語としてはアウトブレイクという言葉が用いられることが多いと考えられますが、
その一方で、予測の範囲を超えた突発的な感染者数の急上昇のことを意味する言葉としては、その他にも、オーバーシュートという言葉が用いられるケースもあります。
それでは、こうしたオーバーシュートとアウトブレイクという二つの言葉には、より具体的にはどのような意味の違いがあると考えられることになるのでしょうか?
オーバーシュートとアウトブレイクの英語の語源に基づく具体的な意味
そうすると、まず、
オーバーシュート(overshoot)という言葉は、
英語において「~を超えて」といった意味を表す副詞であるover(オーバー)と、「射撃する」といった意味を表す動詞であるshoot(シュート)が結びついてできた言葉であり、
一般的な意味としては、射撃などにおいて目標を飛び越して弾が飛び過ぎてしまい、標的を仕留め損ねてしまうことや、
為替相場や株式市場における株価や為替レートの変動において通常の予測よりも大幅に行き過ぎた値が一時的に記録されてしまう状況などのことを意味する言葉としても用いられることになります。
そして、それに対して、
アウトブレイク(outbreak)という言葉は、
英語において「~外へ」といった意味を表す副詞であるout(アウト)と、「壊す」「打ち破る」といった意味を表す動詞であるbreak(ブレイク)が結びついてできた言葉であり、
一般的な意味としては、突然の天候の変化や害虫などの自然発生、戦争や暴動などの勃発や、怒りなどの感情の爆発のことを意味することになるほか、
疫学用語としては、特定の地域や集団において感染症の突発的な発生や増加が進展していく集団感染や感染爆発と呼ばれるような状況のことを意味する言葉としても用いられることになるのです。
感染症医療の分野における疫学用語としてのオーバーシュートとアウトブレイクの具体的な意味の違い
そして、
こうしたオーバーシュートとアウトブレイクという二つの言葉は、医学や感染症医療の分野における疫学用語として用いられる場合には、
どちらも、基本的には、
感染者数が短期間のうちに急激に増加してしまうといった状況のことを意味することになるというように、互いに似通った意味を持った概念として捉えることができると考えられることになります。
しかし、その一方で、
両者の概念の間には若干のニュアンスの違いもあると考えられ、
アウトブレイクの場合には、感染者数の急激な増加が生じる以前には、感染者がまったく発生していないケースもあれば、すでに小規模な感染が散発的に発生しているケースもあるなど、
そうした感染者数の増加が発生する以前の状況とはあまり関係なく、単一の事態としての感染者数の突発的な増加に焦点があてられた表現となっていると考えられることになります。
そして、それに対して、
オーバーシュートの場合には、そうした感染者数の急激な増加が生じる以前の時点において、すでに一定の目標や予測値となるような感染者数の増加のラインやグラフのようなものが予め想定されていて、
そうした前もって予測されていた増加率を大きく超えるような規模での感染者数の爆発的な急増が発生してしまう状況などを念頭に置いて用いられることが多い表現であるといった点に、
こうした疫学用語としてのオーバーシュートとアウトブレイクという二つの言葉の具体的な意味の違いがあると考えられることになるのです。
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