大阪のライブハウスで新型コロナウイルスの集団感染が起きた理由:イベント会場でのビュッフェ形式などの飲食を禁止すべき
2020年3月10日、大阪府における新型コロナウイルスの新規感染者が18人となり、日本国内の都道府県単位での1日における新規感染者数の最高記録を更新した。
(それまでの最高記録は2月27日の北海道の15人であり、これで大阪府内での感染者数の総計は73人となった)
そして、この日新たに感染が判明した18人のうちの半数にあたる9人については、以前から感染が問題となっていった大阪府内のライブハウスを訪れていた人物かその濃厚接触者であることが分かっていて、
3月8日に同じく大阪府において感染が判明した14人の感染者についても、そのうちの10人がやはりライブハウス関連の感染者であることが判明している。
このように、大阪府内のライブハウスを中心として新型コロナウイルスの集団感染とも言える事態が起こってしまったことにはどのような理由があるのだろうか?
ライブハウスにおけるビュッフェ形式などの飲食の場が集団感染の原因となった可能性
(ドイツのブランチで出されたビュッフェ:出典:Wikimedia Commons:
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Brunch1.jpg Frühstücksbüffet beim Brunch: Zerealien, Joghurt, Obst. Eigenes Foto, gemeinfrei. Credit: The weaver at German Wikipedia, 2004)
新型コロナウイルスの集団感染が特に問題となっている大阪府内の二つのライブハウスのうち、ホームページなどで会場の構造や詳しいシステムを調べることができた一つのライブハウスは、
50~100人が来場することが可能な中規模のライブハウスとなっていて、天上も比較的高くてあまり狭苦しい雰囲気はなく、ステージの一段高いところにはグランドピアノが設置されていて非常に上品な雰囲気の会場となっている。
ただ一つ気になる点としては、
このライブハウスでは、音楽と一緒に料理とお酒を楽しむことができることもコンセプトの一つとなっていたようで、
実際、ホームページのなかでは、パーティープランにおける食事メニューの一例として、1人5000円程度の比較的豪華な料理が出るようなビュッフェ形式の食事の内容が紹介されている。
これまでの新型コロナウイルスの集団感染の事例においても、例えば、
中国の武漢における最初の爆発的な感染拡大の引き金となったのは万家宴(ばんかえん)と呼ばれる4万人以上もの人々が集うビュッフェ形式の大宴会の場であったと考えられていて、
その他にも、バイキング形式での食事が提供されていたクルーズ船での集団感染、さらには、日本国内における屋台船の宴会での集団感染といった事例なども挙げられるように、
新型コロナウイルスの集団感染は、やはり、ただ単に多くの人々が一つの空間に密集して騒いでいるというだけではなく、
そこに、ビュッフェ形式のような飲食の場が提供されることによって引き起こされる危険性が大幅に高くなると考えられるのではないだろうか?
新型コロナウイルスの集団感染の引き金となる四つの条件
3月9日に行われた日本政府の専門家会議においては、新型コロナウイルスの集団感染を引き起こす引き金となる条件として、
①密閉空間であり換気が悪い
②手の届く距離に多くの人がいる
③近距離での会話や発声がある
という三つの条件をあげていたが、
前述した武漢における万家宴や、クルーズ船でのバイキング、屋台船での宴会に、今回新たに判明したライブハウスでの飲食といった事例を合わせて考えていくと、
やはり、ここにもう一つ
④大人数での飲食の場の共有
という要件を加えて、
密閉空間・大人数の密集・会話や発声・飲食という四つの条件が重なるような状況が成立した時に、新型コロナウイルスの感染爆発の危険性が極めて高くなると考えることができるように思う。
例えば、
同じようにライブやコンサートといったイベントを開催する場合でも、会場内での飲食を禁止して、みんながマスク姿で声援を送って盛り上がっているような場合には感染のリスクをある程度下げることができると考えられる。
(もちろんその場合には、イベント会場の出入口にアルコール消毒薬などを常備して、会場から外に出る際には手指衛生を徹底するべきではあるが)
そして、それに対して、
立食パーティー形式や、会場内で食べ歩きができるようなイベントの開催はウイルスの感染爆発の絶好の機会を生み出す最悪の組み合わせとなるということである。
そして、そういった意味では、
世界中で新型コロナウイルスの感染拡大が深刻に危惧されている現在の状況において、やむを得ない理由でこの時期にイベントを開催しようとする主催者は、
せめて、来場者のマスクの着用、要所での手指衛生の徹底に加えて、会場内での飲食の禁止といった措置をとることによって、感染爆発の危険性を少しでも減らしていくことが、
日本人全員の命と、日本全体の社会活動の継続のために必要不可欠な措置となっていると考えられるのである。
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