WHOが日本を含む4か国を新型コロナウイルスの感染拡大地域としたのは科学的に正しい見解と言えるのか?

202032に行われたWHO(世界保健機関)記者会見において、WHOのトップであるテドロス・アダノム事務局長は、

韓国イタリアイラン日本4か国を名指ししたうえで、これらの国々を現時点において新型コロナウイルスの流行が最も危惧される地域、つまり、事実上のホットスポットとして認定した。

しかし、こうした日本を含む4か国をひとくくりにして感染拡大地域に認定するというWHOの判断は、果たして本当に医学的・科学的な観点から見て合理的に説明することができる正しい判断であると言えるのだろうか?

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日本の新規感染者の増加数は世界8位であるにも関わらずなぜWHOは日本を世界4位の感染拡大地域として名指しするのか?

今回のWHOの公式記者会見の内容を詳しく分析していくと、彼らはまず、

過去24時間に生じた新規感染者数は、中国国内よりも中国以外の地域で9倍多く報告されているとしたうえで、韓国イタリアイラン日本での流行が現時点におけるWHOの最大の関心事であると述べている。

(出典:世界保健機関:WHO事務局長:スピーチ:詳細
https://www.who.int/dg/speeches/detail/who-director-general-s-opening-remarks-at-the-media-briefing-on-covid-19—2-march-2020

そして、さらにWHOの同じ会見後半の部分では、より詳しいデータとして、

中国以外で報告された8739件の症例のうち、81%は4か国からのものであると述べている。

確かに、32の時点での韓国・イタリア・イラン・日本における総感染者数はそれぞれ4335 2036 1501 274 となっているので、これらの4か国中国以外での総感染者数の大部分を占めているというのは間違いではない。

(ただしそうは言っても、感染者数が3桁を超えている上位3か国と比べて日本の274人というのはかなり少ない。もっともクルーズ船で発生した705人の症例を加えれば979人になるのでそういう意図があるかもしれないが)

しかし、

WHO自身がこの記者会見の冒頭部分でも述べているように、ある特定の国や地域において感染拡大が懸念されるかどうかを判断するための基準となる指標は、

それぞれの国や地域における総感染者ではなく過去24時間あるいは過去1週間といった直近の一定期間の間に生じた新規感染者に求められることになる。

32の時点での、それぞれの国における過去24時間に生じた新規感染者数増加数が多い順番に並べて書いていくと以下のようになっている。

韓国:599
イラン:523
イタリア:335
フランス:61人
スペイン:36人
ドイツ:35人
アメリカ:25人
日本:18
クウェート:10人
オランダ:8人

つまり、過去24時間に生じた新規感染者数というWHOも会見の冒頭において示している感染拡大の懸念の指標となる統計データに基づいた場合、

現時点における日本の新規感染者の増加数は、中国を除く世界全体において8の状態にとどまっていて、フランススペインドイツといったヨーロッパ諸国アメリカと比べてもその数は少ないということである。

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客観的な統計データに基づく科学的な観点からのWHOの見解への疑問

以上のように、

客観的な統計データの示す範囲内においては、現時点において、

日本国内の方がアメリカドイツフランスといったその他の世界の国々と比べて、感染拡大が大きく進展しているということを示す合理的な根拠はどこにもないと考えられる。

そして、そういった意味では、

こうしたWHOの公式見解において、

感染拡大の指標となる新規感染者数のデータを議論の途中でいつの間にか総感染者のデータとすり替えるような形で提示して見せたうえで、

韓国イランイタリアという著しく感染拡大が進展している上位3か国と、そうした3か国とは客観的状況がまったく異なっている日本を同列に扱い

あたかも日本国内においても、韓国やイランやイタリアと同等の大規模な感染拡大が進展しているように見せかけるというのは、

医学的・科学的な観点に基づく客観的な分析というよりは、何らかの特別な意図がある主観的で政治的な印象操作を疑われても仕方がないようにすら思えるのである。

・・・

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