フランケンシュタインの原型となるギリシア神話の二つの物語とは?②ペロプスの復活におけるバラバラの死体からの生命の再生
前回書いたように、つぎはぎの死体から造り出された醜悪な姿をした人造人間の怪物として有名なフランケンシュタインの怪物の話の大本の原型となったと考えられる古代の神話や物語としては、
まずは、ギリシア神話のなかに登場する英雄神の一人であるプロメテウスによる水と土からの人間の創造の物語が挙げられることになると考えられることになるのですが、
こうしたフランケンシュタインの怪物の話と非常によく似た特徴を持つ物語としては、さらにもう一つ、ギリシア神話におけるペロプスの復活の物語が挙げられることになると考えられることになります。
ペロプスの復活の物語におけるバラバラの死体からの生命の再生
ペロプスは、現在のトルコに位置するリュディア地方の古代都市にあたるシピュロスの王であったタンタロスの息子として生まれることになるのですが、
人間の身でありながら、ギリシア神話の主神にあたるゼウスの親しい友として神々との交流を深めていたタンタロスは、
ある時、神々の宴のために最高の貢ぎ物を捧げようとして、
自分の息子であったペロプスを殺したのち、バラバラに切り刻んだ死体を大鍋に投げ入れて、神々の饗宴の糧として捧げるというおぞましい行為へと手を染めてしまうことになります。
そして、
こうしたタンタロスのおよそ人の子の親とは思えぬ残酷な所業に激怒したゼウスは、彼のことを地獄の奈落の底にあたるタルタロスへと投げ込んでしまうことになるのですが、
その一方で、こうした自分の父親であるタンタロスによる残酷な仕打ちによって命を奪われてしまうことになったペロプスのことを不憫に思ったオリュンポスの神々は、
何とかして彼のことを生き返らせてあげることができないかと考えをめぐらせていくことになります。
そして、その後、
ペロプスのバラバラになった体は、運命の女神であるクロートーが紡ぐ運命の糸によって再びつなぎ合わされたうえで、
そうしてできた神々によって造られた新たな体に、生命と大地の女神であるレアが命の息吹を吹き込むことによって、ペロプスの復活が成し遂げられることになるのです。
フランケンシュタインの怪物とギリシア神話におけるペロプスの復活の物語との共通点と相違点
そして、このように、
ギリシア神話におけるペロプスの復活の物語においては、ペロプスを復活させることになったオリュンポスの神々は、タンタロスによってバラバラに切り刻まれてしまった死体をつなぎ合わせていくことによってペロプスの新しい肉体を造り上げていくことになるのですが、
それと同様に、
フランケンシュタインの怪物の物語においては、この醜い姿をした人造人間の怪物の創造主となったヴィクター・フランケンシュタインは、墓の中から掘り出した死体をつなぎ合わせることによって新たな人造人間の肉体を造り上げていくことになります。
つまり、そういった意味では、
こうしたフランケンシュタインの怪物における人造人間の創造の物語と、ギリシア神話におけるペロプスの復活の物語という二つの物語は、
どちらの物語においても、バラバラの死体をつなぎ合わせていくことによってできた新たな肉体に命が吹き込まれることによって新たな生命が生まれていくことになるという点に大きな共通点を見いだしていくことができると考えられることになるのです。
ただし、その一方で、
こうしたフランケンシュタインの怪物とペロプスの復活という二つの物語の間には、その後の物語の展開のあり方に大きな違いがあるとも考えられ、
フランケンシュタインの怪物の物語のなかでは、ヴィクター・フランケンシュタインの手によって生み出されたこの人造人間の怪物は、自分自身の醜い姿と呪われた運命に絶望して、自らの手で死を選ぶことになるのですが、
それに対して、
オリュンポスの神々の手によって復活が成し遂げられることになったペロプスは、そうした神々の手によって造られた完璧な美を備えることによって、かつて人の子として生まれた時よりもはるかに美しい輝くばかりの美少年として生まれ変わることになり、
その後、地上の世界へと戻ったペロプスは、エリスの地を治めるピーサの王女であったヒッポダメイアと結婚して、彼女の父であったオイノマオスの王の座を継ぐことによって、
エリスの地を含むペロポネソス半島全土を支配する偉大なる王として君臨していくと同時に、古代ギリシアの人々からエリスの英雄としても崇められていくことになるのです。
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次回記事:バウムクーヘンとバームクーヘンはどちらが正しい発音なのか?ドイツ語の正式な発音におけるauという二重母音の発音規則
前回記事:フランケンシュタインの原型となるギリシア神話の二つの物語とは?①プロメテウスによる人類の創造と人造人間の怪物との関係
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