ユーノーが6月を司る女神となった理由とは?古代ローマ暦における男女の愛の過程を象徴する神々の配置と五つの惑星との関係
前回の記事で書いたように、英語で6月を意味するJune(ジューン)という単語は、古代ローマにおいて6月を司る女神として位置づけられていたローマ神話に登場するJuno(ユーノー)という女神の名に由来する言葉であり、
こうしたユーノーと呼ばれる女神は、ローマ神話において主神ユピテルの妻にあたる最高位の女神にして結婚と出産を司る女神としても位置づけられていると考えられることになるのですが、
今回の記事では、
それでは、いったいなぜ、こうしたユーノーと呼ばれる女神が古代ローマの暦において6月を司る神として位置づけられるようになっていったのか?ということについて詳しく考えていきたいと思います。
古代ローマの暦における男女の愛の過程を象徴する神々の配置
ローマ神話において結婚と出産を司る女神とされているユーノーが、6月を司る女神として位置づけられている具体的な理由としては、
こうしたユーノーと呼ばれる女神の存在と6月という季節自体との直接的な関連性を見いだしていくことは難しいと考えられるものの、それについては、
古代ローマの暦における3から6月までのそれぞれの月を司る神々の配置との関係性といった観点からその理由をある程度推し量っていくことは可能となると考えられることになります。
そうすると、
古代ローマの暦においては、ユーノーが司る月である6月の前には、大地の実りを司る豊穣の女神マイアが司る5月と、
ギリシア神話における愛の女神アフロディテとも同一視されていて金星と女性を象徴する女神にもあたるウェヌス(ヴィーナス)が司る4月、
そして、軍事と農耕を司る神にして火星と男性を象徴する神にもあたるマルスが司る3月が位置することになります。
つまり、
こうした古代ローマの暦においては、3月から6月にかけて、それぞれの月を司る神々は、
男性を象徴する軍神マルスと、女性を象徴する美の女神ウェヌス、そして、大地の実りと植物の成長を象徴する豊穣の女神マイアと、結婚と出産を司る最高位の女神ユーノーという順番で移り変わっていくことになると考えられることになるのですが、
そういった意味では、
こうした古代ローマの暦における3月から6月までのそれぞれの月を司る神々の配置は、
軍事と農耕を司る神であるマルスが象徴する兵士や農民として国家のために働く男性たちが、愛と美を司る女神であるウェヌスが象徴する女性たちへと出会い、
二人の間で愛が芽生えることになった恋人たちは豊穣の女神マイアの加護のもとで共に成長していった末に、
ローマ神話における最高位の女神であるユーノーの祝福を受けることによって結婚や出産といった形での愛の結実へと至っていくことになるという
男女の間における愛の過程を象徴するような神々の配置となっているとも捉えることができると考えられることになるのです。
水星と金星と火星と木星と土星という五つの惑星を象徴する四柱の神々
また、
こうした古代ローマの暦における3月から6月までのそれぞれの月を司る神々の配置からは、さらに、太陽系をめぐる水星と金星と火星と木星と土星といった
天王星と海王星と地球をのぞく主要な五つの惑星との関係性を見いだしていくこともできると考えられることになります。
前述したように、
3月を司る神にあたるマルス(Mars)と、4月を司る女神にあたるウェヌス(ヴィーナス、Venus)は、それぞれ、火星と金星を象徴する神々としても位置づけられることになるのですが、
それに対して、
5月を司る女神にあたるマイアは、ギリシア神話における同名の女神との関係から、ギリシア神話におけるヘルメス、および、ローマ神話におけるメルクリウスの母としても位置づけられていて、
こうしたマイアの息子としても位置づけられている神にあたるメルクリウスは、英語ではマーキュリー(Mercury)すなわち水星のことを意味する神としても位置づけられることになります。
そして、さらに、
6月を司る女神にあたるユーノーは、ローマ神話の主神にあたるユピテル(Jupiter)の妻であり、ユピテルは英語読みではジュピター(Jupiter)すなわち木星のことを意味する神としても位置づけられている一方で、
ユーノーはギリシア神話におけるクロノスとも同一視されているサトゥルヌス(Saturnus)という名の古代の農耕神を父とする女神としても位置づけられていて、サトゥルヌスは英語ではサターン(Saturn)すなわち土星のことを意味する神としても位置づけられることになります。
つまり、
古代ローマの暦において3月から6月までのそれぞれの月を司るマルスとウェヌスとマイアとユーノーと呼ばれる四柱の神々は、
それぞれ、マルスは火星を象徴する神、ウェヌスは金星を象徴する神であるのに対して、マイアは水星を象徴する神の母、ユーノーは木星を象徴する神の妻にして土星を象徴する神の娘でもあるというように、
こうした古代ローマの暦における3月から6月までのそれぞれの月を司る神々は、それぞれ、火星と金星と水星、そして、木星と土星という太陽系をめぐる主要な五つの惑星のそれぞれを象徴する神々としても捉えていくことができると考えられることになるのです。
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次回記事:サタン(悪魔)とは何か?①ヘブライ語におけるサタンの意味とエデンの園でイヴを誘惑した蛇との関係
前回記事:英語で6月を意味するJuneの由来とは?最高位の女神にして嫉妬深い女神でもあるユーノーとヘラの位置づけ
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