砂糖や塩の中で細菌が増殖することができない理由とは?ナメクジに対する塩や砂糖の脱水作用と細菌に対する殺菌作用との関係

冷蔵保存や冷凍保存などを行わなくてもそのまま常温の状態で長期間保存しておくことがある程度可能な保存食品としては、一般的に、

漬物塩辛などといった塩蔵品、あるいは、蜂蜜ジャムといった高糖度でかつ水分量が少ない食品などが挙げられることになります。

そして、

そうした食塩砂糖などの塩分濃度糖分濃度が非常に高い食品の内部においては、細菌は増殖していくことができないばかりか、芽胞などの特殊な耐久性の高い構造体を形成することができない通常の細菌の場合は、生存することもできずにすぐに死滅していってしまうことになると考えられることになるのですが、

殺菌作用が強い成分として有名な食塩すなわち塩化ナトリウムの方はともかくとしても、ミュータンス菌などに代表されるような虫歯菌のえさとなることによって虫歯の原因ともなる砂糖などの糖類の中でも細菌が死滅してしまったり、増殖できなかったりするということには、具体的にどのような理由があると考えられることになるのでしょうか?

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半透膜としての細胞膜を介した生物の細胞の内外で生じる浸透圧の働き

そうすると、まず、

こうした食塩砂糖といった成分に細菌を死滅させてしまうような抗菌作用がある理由は、これらの物質が溶けている二つの溶液の間に成立することになる

浸透圧(しんとうあつ)と呼ばれる圧力の存在にその大本の原因が求められることになると考えられることになります。

そもそも、

人間を含む動物や植物、細菌などといったあらゆる生物の細胞体を保護している細胞膜は、半透膜(はんとうまく)と呼ばれる半透性の性質を持った膜構造によって構成されていて、

こうした半透膜としての性質を持つ細胞膜は、水などの溶媒は通すものの、水の中に溶け込んでいる塩分や糖分などの溶質は通さないといった選択的透過性を示すことによって、生物としての自らの内部環境を一定の状態に維持していると考えられることになります。

そして、

そうした生物の体を構成している細胞体が、高濃度の食塩高濃度の砂糖を含む溶液細胞膜を隔てて接している場合、

そうした半透膜としての細胞膜の性質によって、細胞の内外の溶液における溶質の濃度が均一になるように、低濃度である細胞の内側の領域から、高濃度である細胞の外側の領域へと水分が移動していこうとする浸透圧と呼ばれる圧力が働いていくことになり、

そうした半透膜としての細胞膜を介した浸透圧の働きによって、低濃度である細胞内から高濃度である細胞外へと水分が流出していくという脱水作用が引き起こされていくことになると考えられることになるのです。

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ナメクジに対する塩や砂糖の脱水作用と細菌に対する殺菌作用との関係

そして、

こうした半透膜としての細胞膜を介した浸透圧の働きによってもたらされることになる細胞の脱水現象は、細胞に接している食塩や砂糖の濃度が高ければ高いほどより強力な形で引き起こされていくことになり、

例えば、

体のほとんどが水分で構成されているナメクジなどの軟体動物の場合、体の表面に塩を振りかけていくと、体がどんどん縮んでいき最終的には死滅してしまうことになりますが、

そうしたナメクジの駆除に用いられるような塩の利用方法も、基本的には、そうした高濃度の食塩がもたらす浸透圧の働きに基づく脱水作用によってもたらされていると考えられることになります。

ちなみに、

こうした半透膜としての細胞膜を介した浸透圧の働きに基づく脱水作用は、塩分だけではなく糖分などの他の溶質の場合においても同様に働くため、

ナメクジに対して、塩ではなく砂糖を振りかけた場合でも、前述した塩の場合と同様に、浸透圧の差に基づく脱水作用が働くことによって、体がどんどん縮んでいって最終的には死滅していってしまうことになると考えられることになるのです。

そして、

こうした水溶液における塩分や糖分などの溶質の濃度の違いに基づく浸透圧の差によって引き起こされる脱水作用の働きは、ナメクジなどの動物の細胞だけではなく、細菌の細胞に対しても同様に働いていくことになるため、

塩辛漬物などの塩蔵品、あるいは、蜂蜜ジャムなどの高糖度でかつ水分量が少ない食品で満たされた容器の中に閉じ込められた細菌は、

そうした半透膜としての細胞膜を介した浸透圧の働きによってもたらされることになる細胞の脱水作用によって、細胞内の水分を急速に奪われていってしまうことになり、

ちょうど、塩や砂糖をかけられたナメクジのように、生命活動を維持することができずにすぐに死滅していってしまうことになると考えられることになるのです。

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次回記事:塩分を多く取ると喉が渇く具体的な仕組みとは?ミクロレベルとマクロレベルの二段階のレベルにおける脱水現象の進行

前回記事:蜂蜜を原因とするボツリヌス食中毒が乳幼児にだけ起こる具体的な理由とは?

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