蜂蜜を原因とするボツリヌス食中毒が乳幼児にだけ起こる具体的な理由とは?

1歳未満の乳幼児に対して食中毒を引き起こす危険性があるため食べさせてはいけない代表的な食品の種類としては、蜂蜜黒砂糖生魚貝類銀杏などといった様々な食品の種類が挙げられることになりますが、

このうち、乳幼児に対して蜂蜜を与えてはいけない理由としては、蜂蜜を原因とするボツリヌス食中毒が引きこされてしまう危険性があるという点が挙げられることになります。

しかし、そもそも、

蜂蜜と言えば、抗菌作用の強い食品の代表格としても挙げられているように、通常の場合、細菌などの病原体は蜂蜜の中では生存し続けることができずにすぐに死滅していってしまうことになるのですが、

そうした本来、抗菌性が高い食品であるはずの蜂蜜を原因として、しかも、大人ではなく乳幼児に限って細菌性の感染症の一種であるボツリヌス食中毒が引きこされてしまうということには、具体的などのような理由があると考えられることになるのでしょうか?

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ボツリヌス菌が蜂蜜の中でも滅菌されずに生き残り続ける仕組みとは?

まず、

こうしたボツリヌス食中毒の原因菌となるボツリヌス菌は、土壌中などにおいて広く生息するグラム陽性嫌気性桿菌に分類される常在菌の一種であり、

ミツバチが土壌に生えている植物から蜜を採集していく際に、そうした土壌に含まれるボツリヌス菌の一部が蜂蜜の中に混入してしまうケースがあると考えられることになります。

しかし、冒頭でも述べたように、

蜂蜜は、糖度が高くて水分量の少ない極めて抗菌性が高い食品であるため、通常の細菌の場合は、蜂蜜の中では生存し続けることができずにすぐに死滅していってしまうことになるのですが、

その一方で、そもそも、

ボツリヌス菌が分類されているグラム陽性菌と呼ばれる細菌のグループは、細菌の細胞全体が頑丈で分厚い細胞壁によって保護された外殻構造をしていて、

しかも、そのなかでも、ボツリヌス菌が分類されることになるクロストリジウム属と呼ばれる細菌の種族は、そうした強固な細胞壁の層をさらに発達させていくことによって、

高温低温乾燥高濃度の塩分、さらには、強酸性の薬剤高線量の放射線などといった過酷な環境下においても生存し続けることができる芽胞(がほう)と呼ばれる耐久性の高い構造体を形成することができる細菌の種族として位置づけられることになります。

したがって、

こうした頑丈で分厚い細胞壁を持つグラム陽性菌のなかでも、芽胞を形成する細菌の種族であるクロストリジウム属に分類されることになるボツリヌス菌は、抗菌作用の強い食品である蜂蜜の中でも芽胞を形成した冬眠状態のまま生き残り続けることができると考えられ、

さらに、

そうした蜂蜜の中に含まれているボツリヌス菌に対して改めて殺菌処理を行おうとしても、

ボツリヌス菌の芽胞は、100度以上の高温の状況下においても生存し続けることができると考えられるため、煮沸などの一般的な加熱処理によっては滅菌することは不可能であると考えられることになるのです。

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人間の体内の腸内細菌叢とボツリヌス菌の増殖能力とのバランス関係

そして、

こうした芽胞と呼ばれる耐久性の高い構造体の形で冬眠状態にあるボツリヌス菌は、糖度が高い蜂蜜の中では、滅菌されてしまうことがない代わりに、増殖することもできないままの状態で生存し続けていくことになり、

このような形で蜂蜜の中に微量に含まれている可能性のあるボツリヌス菌の芽胞は、蜂蜜を食べた人間の腸内において、芽胞と呼ばれる冬眠状態から目覚めて増殖を開始していこうとすることになるのですが、

一般的な大人1歳以上の子供の場合には、そうした蜂蜜の中に含まれている微量のボツリヌス菌の芽胞だけでは、体内において増殖していくことができるだけの細菌量が圧倒的に不足していて、

体内へと侵入したボツリヌス菌が増殖を繰り返していくなかで、ボツリヌス毒素と呼ばれる毒素を生産して人体に対して中毒症状を引き起こしていくことになる前に、

人間の腸内に存在しているラクトバチルスエンテロコッカスバクテロイデス大腸菌といった、言わば、腸内の先住民にあたるような腸内細菌たちによってすぐに駆逐されていってしまうことになると考えられることになるのです。

しかし、その一方で、

まだ1歳未満の乳幼児の場合には、そうした腸内における常在菌としての腸内細菌がいまだ十分に増殖しておらず、腸内において定着しきっていないため、

そうした未開拓の腸内へと潜り込んでしまった微量のボツリヌス菌の芽胞がそこで増殖をはじめていってしまうケースがあり、

そのようなケースでは、

そうした蜂蜜の中に含まれていた微量のボツリヌス菌の芽胞によって、吐き気嘔吐便秘、さらには、嚥下障害視力障害などの神経症状呼吸麻痺といった中毒症状を引き起こしてしまう危険性のある

蜂蜜を原因とするボツリヌス菌による食中毒が引きこされてしまう可能性があると考えられることになるのです。

ちなみに、

まだ離乳食への移行が完了していない乳幼児の段階においても、1歳以上の時期になると、

母乳などに多く含まれている乳糖オリゴ糖といった糖類などを栄養源としてビフィズス菌を中心とする腸内細菌が次第に増殖していき、腸内細菌叢における勢力を十分に拡大していくことになるため、

そうした母乳やミルク以外の食品をあまり口にしていない乳幼児の場合でも、一般的に、1歳以上の時期になれば、蜂蜜を原因とするボツリヌス菌による食中毒が引きこされてしまう危険性はほとんどなくなっていくことになると考えられることになります。

・・・

つまり、一言でまとめると、

蜂蜜を原因とするボツリヌス食中毒1歳未満の乳幼児にだけ起こる具体的な理由としては、

ボツリヌス菌は、芽胞と呼ばれる耐久性の高い構造体を形成することによって、抗菌性が高い食品である蜂蜜の中でも芽胞を形成した冬眠状態のまま生き残り続けることができると考えられるものの、そうした糖度が高く水分量が少ない蜂蜜の中では増殖していくこと自体はできないため、

一般的な大人1歳以上の子供の場合には、そうした微量のボツリヌス菌の芽胞を含む蜂蜜を食べても、腸内に先住する常在菌としての腸内細菌の働きによってすぐに駆逐されていってしまうことによって、食中毒の症状が引き起こされることはないと考えられることになる一方で、

ビフィズス菌を中心とする腸内細菌叢がいまだ未発達1歳未満の乳幼児に対しては、そうした未開拓の腸内へと潜り込んでしまった微量のボツリヌス菌が芽胞の状態から目覚めて増殖をはじめていき、

嘔吐や便秘といった消化器系の症状や、呼吸麻痺などの重篤な症状を含む神経症状などを引き起こすボツリヌス毒素を生産していってしまうことによって食中毒が引き起こされてしまう危険性がある

といった点が挙げられることになると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:砂糖や塩の中で細菌が増殖することができない理由とは?ナメクジに対する塩や砂糖の脱水作用と細菌に対する殺菌作用との関係

前回記事:グラム陽性菌とグラム陰性菌に分類される代表的な60種類の細菌のまとめ、一番多くの細菌が分類される細菌のグループとは?

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