条虫による寄生虫感染症の原因となる代表的な12の条虫の種類とは?④瓜実条虫、芽殖孤虫といったその他の条虫の種族
このシリーズの初回から前回までの一連の記事では、有鉤条虫、無鉤条虫、広節裂頭条虫、マンソン裂頭条虫、日本海裂頭条虫、
そして、小型の条虫の種族であるエキノコックス属に分類される単包条虫と多包条虫といった代表的な条虫の種類について順番に取り上げてきましたが、
そうした人間に対する寄生虫感染症の原因となる代表的な寄生虫の種類としては、
そのほかにも、
瓜実条虫、小型条虫(ナナ条虫)、縮小条虫、有線条虫、芽殖孤虫といった条虫の種類の呼び名が挙げられることになると考えられることになります。
瓜実条虫
まず、はじめに挙げた瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)とは、成虫が体長15~80センチメートルほどの大きさに成長する鎖状の形状をした条虫の種族であり、
一つ一つの体節の形状が瓜の実の形に似ているため、こうした瓜実条虫という名で呼ばれることになったと考えられることになります。
そして、
こうした瓜実条虫と呼ばれる条虫の種族は、犬や猫などにつくノミやシラミなどを介して感染を広げていくことになるほか、
比較的まれなケースではあるものの、そうしたノミやシラミなどの害虫が誤って口の中に入ってしまうことによって、人間に対して感染してしまうケースもあると考えられ、
体内へと侵入した瓜実条虫は、多くの場合は無症状のまま成長していくケースが多いものの、下痢や腹痛といった比較的軽症の消化器系の症状を引き起こすケースもあると考えられることになります。
小型条虫(ナナ条虫)
そして、その次に挙げた小型条虫(ナナ条虫)とは、成虫でも体長1.5~4センチメートルほどの大きさまでにしか成長しない人間やネズミの小腸に寄生する小型の条虫の種族であり、
宿主の腸内で孵化した虫卵が、排泄物などを介して、他の人動物に経口摂取されることによって、人間の場合には、特に、子供を中心に感染を広げていくことになると考えられることになります。
そして、
そうした宿主となる人間の体内に大量の小型条虫が寄生している場合などには、下痢や腹痛といった消化器系の症状が引き起こされることになるほか、
こうした小型条虫の頭節についている小さな鉤状の構造によって腸管粘膜が傷つけられてしまうことによって、貧血などの症状が現れるケースもあると考えられることになるのです。
縮小条虫
また、その次に挙げた縮小条虫(しゅくしょうじょうちゅう)とは、成虫が体長2~6センチメートルまでにしか成長しない前述した小型条虫と同様に小型の条虫の一種として分類される寄生虫の種族であり、
こうした縮小条虫と呼ばれる条虫の種族は、米や麦といった穀物につくコクガやメイガやノミを中間宿主としていて、これらの害虫を誤食してしまった際などに人間に対して感染してしまうケースがあると考えられることになります。
そして、
体内へと侵入した縮小条虫は、小腸に寄生することによって、軽度の下痢といった消化器系の症状を引き起こすケースがあると考えられることになります。
有線条虫
また、その次に挙げた有線条虫(ゆうせんじょうちゅう)とは、成虫が体長20~50センチメートルほどの大きさに成長する針金のような形状をした条虫の種族であり、
こうした有線条虫と呼ばれる条虫の種族は、主に、イヌやネコやイタチといった肉食動物に寄生する場合が多いものの、
中間宿主にあたるネズミなどの小型の哺乳類や、カエルやヘビといった両生類や爬虫類などの肉を加熱が不十分な状態で食べた場合になどに人間に対して感染するケースもあると考えられることになります。
そして、
体内へと侵入した有線条虫は、小腸に寄生することによって、下痢やおう吐、腹部の不快感といった消化器系の症状を引き起こすケースがあると考えられることになるのです。
芽殖孤虫
そして、最後に挙げた芽殖孤虫(がしょくこちゅう)と呼ばれる寄生虫は、人間の体内に寄生した幼虫が分裂を繰り返していくことによって寄生虫感染症を引き起こすことが分かってはいるものの、
感染例が非常に少ないため、成虫の正確な姿すらいまだ特定されていない詳細不明な条虫の種族として位置づけられることになります。
そして、
そうした成虫の姿なども含めた寄生虫自体の生活環の全容が不明であるため、感染ルートについてもはっきりとは解明されていないと考えられることになるのですが、
現在までの知見においては、前述した有線条虫などの条虫の種族の場合と同様に、カエルやヘビといった両生類や爬虫類などの肉を加熱が不十分な状態で食べた場合になどに感染するリスクがあるといった推定がなされていると考えられることになります。
そして、
こうした芽殖孤虫と呼ばれる寄生虫は、人間の体内では成虫へと生育していくことができないため、幼虫のままの状態で、全身の皮下や筋肉といった組織、さらには、内臓や脳といった重要な器官の内部においても際限なく分裂を繰り返していくことによって、
腹痛や胸痛、血痰や喀血、さらには、けいれん発作や意識障害といった多様な症状を引き起こしていくことになり、
最終的には、感染者をほぼ確実に死へと至らしめてしまうことになる非常に危険な条虫の種族として位置づけられることになると考えられることになるのです。
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