肥満の犯人は炭酸飲料やジャンクにあらずって本当?①日本語版の検証
先日、Wall Street Journalの記事で「肥満の犯人、炭酸飲料やジャンクにあらず」という記事を目にしました。
記事の内容が意外と過激な主張だったので、元の英文記事、さらに記事の元になった科学論文にも目を通して、検証してみることにしました。
今回は、まず、日本語版の記事の内容をまとめたうえで、その内容を検証していきたいと思います。
痩せている人の方がチョコレートやスナック菓子を多く食べている?
まずは、この記事の日本語版が、どのような内容だったかということですが、
記事中の気になった主張の部分をそのまま引用すると、以下の通りです。
「米コーネル大学のフード・アンド・ブランド・ラボが公表したこのリポートは、『チョコレートバーとチーズバーガーをコーラと一緒に摂取するという食生活を栄養学的観点からは勧められないが、こうした食品が肥満の主因である公算は小さい』と指摘した。
実際、米国人では痩せている人のほうが平均的体重の人以上に炭酸飲料や甘いスナック菓子を食べていた。
また、太りすぎや肥満、過度の肥満、病的肥満の人々が摂取する炭酸飲料や甘いスナック菓子(Sweet snacks)、塩分の多いスナック(Salty snacks)の量は平均的体重の人よりもむしろ少なかった。」
つまり、この記事の主張をそのままストレートに受けとると、
痩せている人ほどお菓子を多く食べていて、太っている人ほどお菓子を食べる量が少ない
ということになります。
フライドポテトだけ仲間はずれ?
もう少し、この記事に書かれている調査の内容を詳しく見ていきましょう。
この調査では、間食(snack)で食べる食品の種類を、
●甘いお菓子(Sweet snacks、チョコレートやドーナツ、クッキーなど)
●スナック菓子(Salty snacks、ポップコーンやポテトチップスなど)
●デザート(Desserts、プリン、ケーキ、アイスクリームなど)
●フライドポテト(French fries)
の4つに分類しています。
そして、調査の結果としては、
①甘いお菓子とスナック菓子は痩せている人の方が太っている人よりも多く食べている。
②デザートは痩せている人も太っている人も同じくらい食べている。
③※フライドポテトだけは、太っている人の方が多く食べている。
という結果になっています。
※ちなみに、「フライドポテトは英語でなんていうの?ドイツ語やフランス語では?」で詳しく書きましたが、
フライドポテトという表現は和製英語なので基本的に英語圏では正しく伝わりません。
日本で言うフライドポテトやポテトフライのことは、一般的に、アメリカ英語ではフレンチフライズ(French fries)、イギリス英語では単にチップス(chips)と言います。
お菓子を多く食べるほどどんどん痩せていくってこと?
食品の分類で、「甘いお菓子」や「スナック菓子」といった他の3種類の分類は、おおざっぱな分類になっているのに、
なぜか、フライドポテトだけが単品で1つの食品の種類として扱われているのは、
フライドポテトだけに特別枠を割り当てることで、
集中してやり玉に挙げ、悪者扱いしようとしているような、
食品分類の恣意性を感じなくもないですが、
そうした食品分類の恣意性の問題はわきに置くとして、
この記事に書かれた調査内容の結果をそのままストレートに受け取ると、
フライドポテトは、多く食べると太ってしまうので、
肥満にならないためにはあまり食べない方がいいが、
それ以外の間食は、
甘いお菓子でも、スナック菓子でも多く食べても肥満には影響がないし、
むしろ、甘いお菓子やスナック菓子を多く食べている人の方が痩せている。
という結論になります。
それどころか、
この記事の表現がそっくりそのまま正しいのならば、
甘いお菓子やスナック菓子を多く食べている人の方が痩せているのだから、
チョコレートやクッキーをいっぱい食べれば食べるほど、どんどん痩せていく、
ということになってしまいかねません。
でも、そこまでくるとさすがに、直感的にも、どこか変、ですよね。
この記事に書かれている研究の調査結果は本当に正しいのでしょうか?
たとえ、その研究結果が正しいとしても、それに基づく記事の表現に問題はないのでしょうか?
やはり、元の英文記事や、
さらにその英文記事の元になった科学論文にまでさかのぼって、調べてみる必要がありそうです。
<出典>
The Wall Street Journal.の日本語版の記事:「肥満の犯人、炭酸飲料やジャンクにあらず」
次回は?
次回の「肥満の犯人は炭酸飲料やジャンクにあらずって本当?②英文記事の検証」は、日本語版の記事の元になった英文記事の内容について詳しく見ていきます。