古代中国の五帝と古代ローマの五賢帝の共通点とは?血統に基づく皇位継承の正統性と能力主義の両立

五帝とは何か?の記事で書いたように、古代中国においては、古代世界を統治していたとされる伝説的な帝王として、一般的に、

 黄帝顓頊帝嚳という五帝と呼ばれる帝王たちの名が挙げられることになりますが、

それに対して、

西洋世界においても、こうした古代世界に存在した五人の優れた帝王という同じような構図を見いだすことができると考えられ、

西洋においては、古代ローマ帝国の最盛期を築いた五人の優れた皇帝として、一般的に、

ヌルワトラヤヌスハドリアヌスアントニヌス・ピウスマルクス・アウレリウス・アントニヌスという五賢帝と呼ばれる皇帝たちの名が挙げられることになります。

それでは、

こうした古代中国における五帝と、古代ローマ帝国における五賢帝の間には、互いにどのような相違点と共通点を見いだすことができると考えられることになるのでしょうか?

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五帝と五賢帝に共通する因習的な世襲制によらない皇位継承のあり方

 古代中国における五帝と、古代ローマ帝国における五賢帝との間には、

前者が古代中国における神話と伝承の中に登場する伝説的な帝王のことを指す言葉であり、そうした帝王の現実の歴史における実在性自体が不確かなところがあるのに対して、

後者は、古代ローマ時代の歴史書などの様々な文献資料において明確な形でその存在が記録されている現実において実在した歴史上の皇帝たちのことを指す言葉であるといった点に大きな相違点があると考えられることになります。

その一方で、こうした両者の間には、少し興味深い共通点も見いだすことができると考えられ、

五帝の場合においても、五賢帝の場合においても、皇位継承の進められ方が、通常の帝国や王国の場合のように、国王である親からその実の子へと直接的な親子関係にある直系の血族へと世襲されていくわけではなく、

先代にあたる帝王が、そうした世襲的な要素や自分との血縁の近さを第一条件とせずに、後継者となり得る人物たちの能力や資質を見定めたうえで、最も適していると判断した人物を次世代の皇帝として指名するという形で皇位の継承が進められているといった点が、両者の間の共通点として挙げられることになると考えられることになります。

血統に基づく帝位の継承の正統性と能力主義の両立

もっとも、

古代ローマ帝国の五賢帝の場合には、直接的な親子関係にある自分の子供に皇位の継承がなされていないとはいっても、

先代の帝王とは縁もゆかりもない人物が、ただ自らの能力によってのみ引き上げられて時代の帝王へと指名されていったというわけではなく、

自分より以前の皇帝の遠縁にあたる人物や、親戚筋などにあたる有力で有能な人物者たちの中から、特に優秀な人物を自らの養子とすることによって、帝位の継承が進められていったと考えられることになります。

そして、

こうした構図は、古代中国の五帝の場合にも、同様に見いだすことができると考えられ、

五帝の場合にも、初代皇帝である黄帝と、次の皇帝である顓頊(せんぎょく)との間には直接的な親子関係は存在しないとされているものの、顓頊は黄帝のにあたる人物であるともされていて、

さらに、

その次の皇帝である帝嚳(ていこく)についても、先代の顓頊との間に親子関係はないものの、一代さかのぼる黄帝の曾孫(ひまご)にあたる人物であるとされることによって、帝位の継承関係が血統の面においても正当性されていくことになると考えられることになります。

つまり、

こうした五賢帝五帝の間に共通する皇位継承のあり方においては、後継者となる人物が、直系の血族であることを第一条件とせずに、資質や能力に基づいて選抜されることによって、因習的な世襲制度がある程度打破されていくと同時に、

血統に基づく帝位の継承の正当性もある程度保持されていく形で、帝位の継承が進められていったと捉えることができると考えられることになるのです。

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以上のように、

古代中国における五帝と、古代ローマ帝国における五賢帝の両者は、

五帝が古代中国における神話と伝承の中に登場する伝説的な帝王という現実の歴史における実在性自体が不確かな存在であるのに対して、

五賢帝は、古代ローマ時代の様々な文献資料において明確な記述のある現実において実際に存在した歴史上の皇帝であるという点に、大きな違いがあると考えられることになります。

しかし、その一方で、

五帝と五賢帝の間には、どちらの場合にも、五人の帝王の間の先代から次の代への皇位継承のあり方は、直接的な親子関係を第一条件とする因習的な世襲制度ではなく、

先代や初代皇帝の血をひく親戚や遠縁の者までも含めた数多くの後継者となり得る人物たちの能力や資質を慎重に見定めていったうえで、最も適した人物を次世代の皇帝として選出するという能力主義的な形での皇位継承が進められていったという共通点なども見いだすことができると考えられることになります。

つまり、

こうした五帝と五賢帝が治めていたとされる古代世界における理想的な統治体制のあり方においては、古代中国古代ローマ帝国といった世の東西を問わずに、

血統における皇位継承の正統性と、資質や能力による選抜という二つの要素がバランスよく満たされていく形で、帝位の継承が進められていくことになったと考えられることになるのです。

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次回記事:

このシリーズの前回記事:三皇と五帝の違いとは?神々の治世から人間の帝王の治世への古代中国の神話と伝承の世界における時代の変遷のあり方

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