相対性理論ではどのような原理によって物体の長さが縮むのか?①光速に近い速度で飛ぶ宇宙船内の二つのライトの点灯の観測

相対性理論において時間の遅れが生じる具体的な仕組みの記事で書いたように、アインシュタインの特殊相対性理論においては、相対的に静止状態にある慣性系から光速に近い等速運動の状態にある慣性系における光の進み方や物体の運動を観測した場合、

光速に近い等速運動の状態にある慣性系においては時間の進み方が遅れるという現象が生じることになります。

そして、相対性理論においては、上記のような時間の遅れと同様に、空間の収縮といった現象も生じることになり、

具体的には、光速に近い等速運動の状態にある慣性系においては物体の長さが縮むことになると考えられることになります。

そこで、こうした相対性理論ではどのような原理によって物体の長さが縮むことになるのか?という問いになるべく具体的な形で答えるために、

今回はまず、光速に近い速度で航行する宇宙船内における二つのライトの点灯の観測のされ方の違いを例に挙げることで、この問いに答えるための一つの鍵となる現象について迫ってみたいと思います。

スポンサーリンク

光速に近い速度で航行する宇宙船内における二つのライトの点灯の観測

静止状態にある宇宙船内における二つのランプの点灯の地球上における観測の順序

上図のようなガラス張りの宇宙船の船内において、宇宙船の先頭部分からと後尾部分からの距離がぴったり同じ長さとなるように宇宙船内の中央部分に光源を配置したうえで、

宇宙船の一番前の先頭部分と、一番後ろの後尾部分に上記の光源から発せられた光が到達すると発光する点灯ライトを配置するとします。

すると、これが地球上に置かれた静止状態にある宇宙船である場合、

当然のことながら、光源から発せられた光は宇宙船内の前方と後方の双方へと同じ距離ずつ進み続けていくことになり、

その結果、宇宙船内に配置された前方のライトと後方のライトはちょうど同時に点灯することになります。

つまり、静止状態にある宇宙船においては、

宇宙船内の観測においても、地球上からの観測においても同様に、中央部分の光源から発せられた光は宇宙船の前方と後方に同一時刻に到達すると考えられるということです。

光速に近い速度で航行する宇宙船内における二つのランプの点灯の地球上における観測の順序

それに対して、

宇宙船が静止状態ではなく、地球のすぐそばを光速に近い等速度運動の状態で航行している場合、こうした宇宙船内における前方と後方のライトの点灯のあり方は、

宇宙船内と地球上の双方においてだいぶ異なった形で観測されると考えられることになります。

まず、宇宙船内の観測においては、慣性の法則に基づいて、等速運動の状態にある宇宙船内においては、静止状態にある場合とまったく同じ形で観測が行われることになるので、

宇宙船内の観測においては、上述した静止状態にある宇宙船におけるライトの点灯の観測の場合と同様に、前方のライトと後方のライトは同時に点灯して観測されることになります。

一方、上記の光速に近い速度で地球のすぐそばを航行するガラス張りの宇宙船の船内を相対的に静止状態にある地球上から観測した場合、

上図で示したように、宇宙船の中央部分の光源から発せられた光は、光速度不変の原理に基づいて、宇宙船が静止状態にある場合と同様に、宇宙船内の前方と後方の双方へと同じ距離ずつ進み続けていくことになりますが、

このとき、

地球からの観測においては、光が宇宙船の前方と後方の双方へと移動している間にも、宇宙船の移動に合わせて前方と後方のライト自体も前方方向へと移動していくことになります。

そのため、

後方のライトについては、光が一定速度で近づいてくる分だけではなく、ライト自体が光源へと近づいていくことによって、宇宙船が静止状態にあるときよりもより早くライトの点灯が生じると考えられることになり、

それに対して、

前方のライトについては、ライト自体が光源から遠ざかっていくことによって、宇宙船が静止状態にあるときよりもより遅くライトの点灯が生じると考えられることになります。

つまり、

上図で示したように、光速に近い速度で航行する宇宙船の船内を静止状態にある地球上から観測した場合には、

宇宙船におけるライトの点灯は、宇宙船内から観測したときのように前方と後方のライトが同時に点灯するわけではなく

まず、前方のライトの方が先に点灯して、そのしばらく後になって後方のライトが点灯することになると考えられることになるのです。

スポンサーリンク

・・・

以上のように、

光速に近い速度で航行する宇宙船では、

宇宙船内の観測においては、ちょうど同一時刻に点灯していた前方と後方のライトが、

地球上からの観測においては、前方のライトの方が先に点灯して、後方のライトがそれに遅れて点灯するというように、

二つのライトの点灯という同一の現象に対して観測する慣性系の違いによって時間差が生じてしまうと考えられることになります。

そして、こうした現象は、二つの地点における同一時刻という概念が、静止状態にある地球上と、光速に近い速度で航行する宇宙船の船内においては、同様な形としては成立しないということを意味することになり、

このことからは、静止状態にある地球上と、光速に近い速度で航行する宇宙船の船内においては、同じ時間の進み方が共有されていないという事実が示唆されることから、

直接的には、以前に取り上げた相対性理論において生じる時間の遅れといった問題へとつながっていくことになると考えられることになります。

しかし、その一方で、詳しくは次回改めて考察を進めていくように、

今回取り上げた光速に近い速度で飛ぶ宇宙船内の二つのライトの点灯の観測において生じる時間差という現象を、

光が観測された時刻ではなく、前方と後方のライトが点灯するまでに光が進んだ距離の方を基準として考えると、

それは、相対性理論において生じる物体の長さの短縮という現象を解き明かす鍵となる現象として捉えることもできると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:光速に近い速度で飛ぶ宇宙船の長さが静止状態よりも縮んで観測される理由とは?相対性理論において物体の長さが縮む原理②

関連記事:相対性理論において時間の遅れが生じる具体的な仕組みとは?野球のボールと光の進み方の違い

前回記事:ローレンツ因子とは何か?ローレンツ因子γのピタゴラスの定理を用いた導出と宇宙船内で生じる時間の遅れの実際の計算

物理学のカテゴリーへ

スポンサーリンク
サブコンテンツ

このページの先頭へ