イデアとは何か?①古代ギリシア語におけるイデアの語源とエイドーとイデインとエイドスの意味の違い

イデア(ideaとは、古代ギリシアの哲学者であるプラトンの思想において根幹をなす概念の一つであり、

それは、一言でいうと、すべての存在の根源にある真なる実在としての普遍的な観念のあり方を意味する言葉ということになります。

それでは、こうしたプラトンの哲学思想において根本概念となるイデアという言葉は、その古代ギリシア語の語源にまでさかのぼると、具体的にどうのようなことを意味する言葉であったと考えられるのでしょうか?

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古代ギリシア語におけるイデアの語源とイデインとエイドーの意味

イデアideaという言葉は、もともと、古代ギリシア語見る」や「知るといった意味を表す動詞eidoエイドーの変化形であるideinイデインから派生してできた名詞であり、

一言でいうと、「見られているもの」あるいは「見えているさま」としての姿や形のことを意味する言葉ということになります。

より正確に言うと、

イデア(idea)の直接的な語源となったidein(イデイン)という単語は、古代ギリシア語の動詞eido(エイドー)アオリストと呼ばれる形にあたるeidon(エイドン)が、さらに不定詞へと変化した形であるということになるのですが、

古代ギリシア語におけるアオリスト(aoristとは、過去の動作や出来事、あるいは、普遍的な格言や真理を表すときに用いられる文法的な相のことを意味する文法用語であり、

また、不定詞インフィニティブinfinitive)とは、人称や時制などの標識を持たない動詞の形態のことを示す文法用語であり、英語のto不定詞のように、主語や目的語になるといった名詞的機能を持つことができる文法形態ということになります。

したがって、

古代ギリシア語の動詞eido見る、知るアオリストであるeidonが、さらに不定詞へと変化した形であるideinイデインは、

言葉自体の本来の意味としては、見えているものあるいは知られていることといった意味を表すことになります。

そして、

そこから派生した名詞であるideaイデアも、目に見えている姿や形、あるいは、人間の認識の内にある観念や理念のことを意味する単語として用いられるようになっていったと考えられることになるのです。

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プラトンとアリストテレスにおけるイデアとエイドスの意味の違い

ちなみに、

こうした古代ギリシア語の動詞eido(エイドー)を大本の語源とする言葉としては、ideaイデアの他に、eidosエイドスという言葉も挙げられることになりますが、

プラトンの哲学においては、こうしたイデアエイドスと呼ばれる概念は、人間の認識の内にある普遍的な観念のことを意味する言葉として、両者ともほぼ同じ意味で使われていくことになります。

それに対して、

彼の弟子であるアリストテレスにおいては、イデアの方は、プラトンのイデア論におけるイデアの概念がそのまま踏襲されて行くのに対して、

エイドスの方は、日本語においても一般的には形相という専門的な訳語が用いられることが多いように、事物の素材となる質料ヒュレーに対して、そうした質料を限定して現実的なものたらしめている形式のことを意味する専門用語として用いられるようになっていきます。

このように、

古代ギリシア語における語源としては、両者ともeido(エイドー)という同じ言葉へとさかのぼることができる概念ではあるものの、

イデアエイドスと呼ばれる二つの概念の間には、一定の意味合いの違いがみられることになるのです。

・・・

以上のように、

プラトンの哲学思想において根幹を担う概念であるイデア(ideaという言葉は、その大本の語源にまでさかのぼっていくと、

古代ギリシア語「見る」や「知る」といった意味を表す動詞であるeido(エイドー)という言葉へと行き着くと考えられることになります。

そして、こうした古代ギリシア語の動詞eido(エイドー)が、

過去の出来事や普遍的な格言を表すときに用いられる文法形式であるアオリストの形にあたるeidon(エイドン)へと変化し、

それがさらに、名詞的機能を持つことができる文法形態である不定詞の形へと変化したidein(イデイン)という言葉が、

イデア(ideaという言葉の古代ギリシア語における直接的な語源であると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:イデアとは何か?②ピタゴラス学派とソクラテスにおけるイデアの定義

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