生物の細胞の中に存在する三種類のRNAの役割とは?メッセンジャーRNAとトランスファーRNAとリボソームRNA、DNAとRNAの違いとは?③
前回書いたように、
DNA遺伝子とRNA遺伝子の違いと、両者の遺伝子としての性質の優劣については、
DNA遺伝子の方がRNA遺伝子よりも遺伝情報の安定性と保存性の高さに優れているのに対して、
RNA遺伝子の方は、構造が単純で遺伝情報の可変性が高く、新しい環境にいち早く適応しやすいという点において優れているということが挙げられることになります。
そして、一般的には、
動物や植物、細菌といった、複雑な構造を持ち、膨大な遺伝情報の正確な保持と伝達が求められる生物の細胞の遺伝子にはDNAが使われ、
そうした生物の免疫系をうまくかいくぐっていくために、いち早く自らの構造を変化させていくことが必要なウイルスの遺伝子にはRNAが使われるということになるのですが、
厳密に言うと、
生物の細胞の中にもRNAは存在し、その反対に、ウイルスの核の中にDNAが存在するというケースも実際には多く見られます。
細胞の中に存在する三種類のRNAの役割とは?
細胞を作る設計図には、動物や植物から細菌に至るまですべての生物において、二重らせん構造を持ったDNAが遺伝子として使われることになるのですが、
その一方で、RNAという物質構造自体が生物の体内にまったく存在しないわけではなく、
それは、DNAに記録された遺伝情報から実際にタンパク質を合成する際に、重要な役割を担う存在として機能することになります。
細胞の遺伝子であるDNAからのタンパク質の合成の具体的な手順としては、
まず、元となる設計図であるDNAから、特定のタンパク質の合成に必要な部分が呼び出され、
その部分の遺伝情報が、メッセンジャーRNA(伝令RNA、messenger RNA、略称:mRNA)と呼ばれるRNAに転写されることになります。
そして、
新たに合成されたメッセンジャーRNAによって、細胞中でタンパク質の合成を担う部位であるリボソーム(ribosome)にDNAの情報が伝えられ、
リボソームは、メッセンジャーRNAが伝達する遺伝情報をリボソームRNA (ribosomal RNAs、略称:rRNA)と呼ばれるRNAを使って読み取ることになります。
そして、さらにそこに、
今度はトランスファーRNA(transfer RNA※、略称:tRNA)と呼ばれるRNAによって、タンパク質の合成を行うために必要な材料となるアミノ酸がリボソームの内部へと運び込まれ、
以上のような手順を経ることによって、細胞内における実際のタンパク質の合成作業が滞りなく進行していくことになるのです。
※transfer とは英語で物の「移動や運搬」を意味する単語です。
つまり、
生物の細胞内においては、遺伝情報の保存と継承という遺伝子としての主要な役割は、DNAによって担われていると考えられるのですが、
DNAからリボソームへの遺伝情報の伝達と読み取り、そしてリボソームへのアミノ酸の運搬といった、DNAの遺伝情報に基づいてタンパク質を合成するための具体的な作業は、
メッセンジャーRNA(mRNA)、リボソームRNA (rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)という三種類のRNAの働きのサポートを受けることによって成り立っているということになるです。
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以上のように、
生物の細胞においては、DNAがその安定性の高い構造を利用して、遺伝情報の保存と継承という遺伝子としての主要な役割を担うのに対して、
RNAの方は、DNAに保存されている遺伝情報の伝達や運搬に協力するというサポート的な役割を担うことによって、遺伝子としての働きに寄与していると考えられることになります。
つまり、
DNAとRNAという互いに異なる構造を持った二種類の遺伝物質は、それぞれの構造の利点を生かしてい互いに協力し合うことによって、
生物における代謝と自己複製の機能を成り立たせるための重要な役割を担っていると考えられることになるのです。
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次回記事:天然痘ウイルスの撲滅にワクチン接種が有効であった理由とは?DNAウイルスとRNAウイルス①
前回記事:互いの鎖のバックアップデータを持つDNA遺伝子と突然変異による進化のテンポが速いRNA遺伝子、DNAとRNAの違いとは?②
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